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集結

「リック!?」

 マディソン商店にリックをつれて戻ってくると、開店準備のために店のシャッターを開けようとしたカムカが驚きの声を上げて俺たちを迎えた。


「カムカさん。ごめん。店を閉めて」俺はカムカに言った。「急いで話をしたい。スージーも呼んでくれませんか。」

「何があった?」

「マッゾと黒ずくめの集団に襲われました。」

「襲撃!? よく帰ってこれたな。」

「リックとガスが助けに入ってくれて。」

「いや、ほとんどケーゴくん一人でなんとかしちゃって。私たちは乗っかっただけだよ。」リックが謙遜しながら頭をかいた。「恥ずかしながら、ギリギリまで様子を見てたんだけど、出番がなくなるところだった。」

「リック。お前、向こう側の人間になったんだとばかり思ってたぞ。」

「村長とガスが囚われてしまったものですから、ずっと奴らの味方になったフリをしていたんです。」

「ともかく、俺、完全に狙われてます。ここも危ないかも。」俺はカムカに事情を説明する。「すぐにリコとガスか村長を連れてやってきます。」

「村長? 村長も無事なのか?」

「はい。すぐに来ます。」

 リコにはガスと一緒にヤミンと村長を回収に行ってもらっている。

 村長は今朝リックが監禁場所から助け出し、もう一人いるという仲間に預けているらしい。

「みんなが集まったら至急今後の方針について話し合いましょう。」


 リコとガスはすぐにヤミンと村長を連れて戻ってきた。


 なんか、もう一人見たこと内やせっぽちな男がいる。

 彼がリックの言っていた仲間なのだろう。


「村長、お久しぶりです。」俺は村長に挨拶する。

 記憶にある村長よりげっそり痩せている。

「助かった。礼を言う」村長は気まずそうに俺に礼を言った。

「お前、村を追い出したケーゴに助けられたんだぞ。他になんか言うことがあんだろうが。」スージーが村長に詰め寄った。

「・・・村を追い出したりして、すまなかった。私には人を見る目がなかった。」村長は素直に頭を下げた。

「ふん、どうやら洗脳はされてないみたいだね。とりあえず中で話そう。」

 そう言ってスージーは村長たちを店の中に招き入れた。


 マディソン商店の応接間に集まった俺たちは思い思いの場所に寄りかかったり腰掛けたりして情報の共有を始めた。

「えーと、状況を確認する前にちょっといいですか? その方は?」俺はリコたちが連れてきたイマイチ特徴のない優男のことを尋ねた。

「彼は味方だ。ずっと私のことを手助けしてくれていた。ガスや村長が逃げ出せたのも彼の手引があったおかげだ。」リックが答えた。

「よろしくお願いいたします。」男は頭を下げた。「わたくしは・・・


「ちょっと待って!」男の自己紹介を遮ってヤミンが立ち上がった。

 ヤミンは口の前に人差し指を立ててみんなを黙らせると耳を澄ました。

「店の前に誰か集まってる! しかも大勢!」ヤミンが声を上げた。

 みんなが色めき立つ。

 

「裏口から逃げる準備を。リックとガスはみんなの護衛をお願いします。俺とリコで店の前を確認。ヤミンは裏口の方の様子を探って。」

 俺が指示を飛ばした直後、店の戸口から声が響いてきた。


「お〜い、ケーゴ、居るか?」


 あれ?

 この声?


「ヴェルアルドだ! カリストレムのみんなが来てくれた!」ヤミンが嬉しそうに叫んで飛び上がった。


 俺たちは急いで戸口に行って店のシャッターを開ける。


「よお、久しぶり。朝早くに悪いな。」


 扉の向こうにはヴェリアルドが立っていた。

 ヴェリアルドだけじゃない。

 彼の後ろにはガラの悪いカリストレムの冒険者達が何人も控えている。


「何だってんだ。こんな急に呼び出しやがって。金さえ積めば何でもするってわけじゃないんだぞ。」ヴェリアルドの隣にいた筋骨隆々の魔術師カシムが例によって悪態をつく。でも来てくれるいい人。

「カシムン! 待ってたよ!」

 ヤミンが嬉しそうにカシムに飛びついた。


 二人の後ろには30人くらいの冒険者たちが控えていて、全員見知った顔だ。

 カリストレムで一緒にレベル上げを指導した連中だ。


「師匠、あれから俺たちかなり強くなりましたよ!」一人が自信満々に言ってきた。

「ふっふっふ。俺も相当強くなったよ。」俺も負けずに威張り返す。俺のこの数ヶ月の成長に敵うものなんてそういるまい。

「風のうわさで聞いたぜ? レイドボスを一人で二体も倒したり、王都最強の冒険者をやっつけて大都市の英雄になってるらしいじゃないか。」ヴェリアルドが言った。

「さ、さすがに、そこまでは・・・。」

 こっちが自慢する前にそれよりハードル上げるのやめて欲しい。

「まあ、さすがにそんな気はしてたが、それでもそんな噂が立つくらいには活躍したんだろ? あっという間に追い抜かれちまったな。」

「でも、ヴェリアルドさんも今はカリストレムの一番強い冒険者でしょ。」ヤミンがヴェリアルドを持ち上げる。

「まあ、上の奴らがみんな王都に行っちまったってのもあるけどな。」


「ケーゴ、誰だコイツラは。」

 遅れてやってきたスージーとカムカが店の前に出てきた。

「カリストレムでお世話になった仲間です。味方が欲しかったのでギルドに依頼して来てもらいました。てか、スージーはカリストレムで見たことある人も居るでしょ。」

 王都に行く俺たちを見送りに来た時にヴェリアルドとカシムには会っているはずだ。

「そういや、見覚えがあるような。」

「大勢でいきなり押しかけてきてしまってすまない。」ヴェリアルドはスージーに頭を下げた。「本当はこっそり来ようと思ったんだが、俺が入ってくるところを見られちまって。いっそ全員で来ちまった。申し訳ないが村の連中にはバレバレだ。」

「いえ、どのみち俺が目をつけられちゃったみたいなんで今更です。」

「それに、もっと派手に来ちゃった人が居るみたいだし・・・。」ヤミンが呆れたように村の入り口の方向を眺めた。

「え?」

 ヤミンが何を言っているのか分からなかったが、その答えは音となって耳に届いた。


 ゴゴゴゴゴゴゴ


「何の音だ?」

 ヴェリアルドたちも気がついたらしく音の方を警戒する。

「最強の援軍。」ヤミンが答えた。

 ぶっちゃけ、まじ助かる。


 ランブルスタを轟音を響かせて突っ切ってきた二騎は、つむじ風と共に俺たちの目の前で止まった。

 猛スピードのあまりすぐに止まることのできながった巨大な馬たちは4本の足でドリフトするかのようにランブルスタを抜ける街道に8本の深い轍を刻んだ。

 普通、轍ってタイヤでできるもんなんだけどなぁ。

 店の前の道に溝ができてしまった。後で埋めないと。


「カルトス、ありがとうなの。」

 ルナが騎馬から華麗な身のこなしで馬から舞い降りた。


「ルナルナ! 来てくれたんだ。」ヤミンがルナに駆け寄って嬉しそうに抱きついた。

「来てくれてホント助かるよ。」

 いや、マジで。


 そして、もう一騎。

 バルトスに乗っていたのはエリーだ。

 エリーも素早い動きで馬から降りると、そのまま近くの草むらに駆け込んでもどし始めた。

「エリーさん、大丈夫?」リコが心配そうにエリーに近寄っていって背中をさすった。

「馬なら、馬なら酔ったりしないのだ・・・。」

 専門家的にこいつらもう馬じゃないのな。

「ぶるるる!」バルトスが不服そうに唸った。


「ななな、なんだ!? この人達は?」いきなりの化け物馬の登場に混乱している冒険者を代表してヴェリアルドが俺に訊ねる。

「王国第二特殊騎士隊の隊長と副隊長。」

「騎士隊の隊長だって!?」

 冒険者達がうろたえながら何故か整列し始めた。

「すげーなお前。そのうち王様とも知り合いになっちまうんじゃないか。」スージーがキラキラした目で俺を見つめる。

 すでに王女と知り合いだってのは絶対に言わないどこ。

「ぜひ、この辺りに来た際の魔石の調達はマディソン商店へ! A級魔石の取り扱いをこの辺りで行ってるのはうちだけでございますんで!」スージーが揉み手をしながら営業スマイルで二人にヘコヘコしだした。

「みんな、大丈夫だったの?」ルナが俺たちを見て心配そうに尋ねた。

「ああ。いまんとこは。」

「ルナルナは体は大丈夫なの?」ヤミンが訊ねる。

「うん! ばっちし。」

「ルナもエリーもいいところに来てくれた。二人が来てくれてとても心強い。この村が『黒い羊』っていう宗教団体に占領されてるみたいなんだ。」

「カリストレムからの通報で聞いた。情報をくれたのはお前たちなのだろう?」一通り吐いて青い顔のエリーが戻ってきた。

「それなら話が早い。この村を解放したいんで手伝って欲しい。それに黒い羊の本拠地もこのあたりにあるみたいなんだ。できれば、そちらも壊滅させたい。」

「村の状況はわからないけど、黒羊の本拠地の場所ならピーちゃんが見つけてあるの。」


 おっと、欲しかった情報が!


「おお! さすがピーさん。」

「ピッ!」気づけばルナの肩に停まっていたピーちゃんが誇らしげに鳴いた。

「後は洗脳の解き方か・・・。」ヤミンが呟いた。

「王都でも調べている最中なの。」

「コルドーバで襲ってきた連中をつかっていろいろ試しているが、洗脳を解く方法が見つかっていない。今の所、被害者は相手の怒りや嫉みといった負の感情を増幅されていて正常な判断をできなくされているらしいということくらいしか分かっていない。」エリーがルナの言葉を補足する。

「そうか・・・。」


 まあ、いきなり全情報が集まったりはしないか。


「もしかしたら、洗脳や催眠というよりは変化に近い効果なのではないか?。」横で聞いていたカシムが割って入ってきた。

「つまり、魔法で状態異常になってるんじゃなくて、人間として変えられちゃったってこと?」ヤミンが尋ねる。

「ああ、だから、戻らない。」

「村のみんなはもとに戻せないかもしれないってことか?」村長が不安そうに言った。

「ありえない話ではないな。」エリーが可能性を考えながら呟いた。

「おい、待て。あたしはもとに戻ったぞ?」と、スージー。

「そ、そう言えば。」

「って、ことは洗脳さえ解けれえばみんなは元に戻るってことだな。」ヴェリアルドがいい情報を得たとばかりに明るい声を出した。


「あの〜すみません。みなさん・・・。」


 俺たちの背後から遠慮がちな声がした。

 振り返るとそこにはリックの連れてきた男が申し訳無さそうにこちらを見ていた。


「その・・・わたくし洗脳用の魔術具について情報を持っているのですが。」


 まじで?

 あんた何者!?


「助かるの!」ルナが嬉しそうに声を上げた。

「ケーゴ、彼は何者だ? カリストレムの冒険者でも村のものでもないようだが。」エリーが男の服装を観察しながら俺に尋ねてきた。

「実は俺たちもさっき初めて会ったばかりで誰か知らないんです。」


「あ、すみません。自己紹介もまだでして。」

 男は申し訳無さそうに俺たちに頭を何度も下げると自己紹介をした。


「わたくし、この辺りで商人をしております、ミュールと申します。」


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