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宣戦布告

 リコとの再開は俺の励みにもなった。


 俄然やる気が出てきた。

 早く強くなってリコに追いつくぞー!


 さっそく仕事サボってスライム叩きしたいところだが、スージーにバレてしまったのでカムカが時間空けてくれても勤務時間中は店から出れなくなってしまっている。

 夜はモンスターに襲われる可能性もあるので、あんま行きたくない。

 必然仕事を早く終わらせて明るいうちにやるか、仕事前の朝活でやるかしかない。


 今んとこ【回避】7、【命中】7。

 もう少しで目標なのだが、レベルが上がってきたせいか、スライムばっか叩いているせいか、最近伸び悩んでいる感じだ。

 未だ俺に【命中】と【回避】以外の戦闘スキルは無い。

 殺傷能力皆無。

 闘技会が終わったら少しダメージ関連も上げないと冒険者として生きていけん。


 今日は客入りが多かったのでスライム叩きには行かず、大人しく店の裏庭で素振り。

 色々とタオルの振り方を変えながら、どの振り方が【命中】が上がりやすいかを【ゼロコンマ】で確認する。

 素振りも【ゼロコンマ】でスキルの上がり方を見ながらやり方を精査することで、効率が上げられることが最近分かって来た。

 コンマ8桁が俺の師匠みたいなもんだな。

 アルファンでは武器の振り方なんて変えれなかったからなあ。


「おい、役立たず!」


 と、裏庭の柵の向こうから声がかけられた。

 マッゾとマッコだった。


「昨日は恥をかかせやがって。」


 リコとの件かな?

 アレ、俺、悪くないだろうに。


「クソ役に立たねえくせに外面ばっかデカい顔してんじゃねえよ!」

 相変わらず、悪口しか言って来ない。

「なんでそんなに俺に絡むんだよ。」

「ああっ!? いつもいつもてめえばっかりリコとうまくやりやがって。」


 俺が上手くやってるんじゃなくて、君が嫌われとんじゃない?

 さすがに言わんけど。


「ちょっと店で働けるようになってきたからって調子にのるなよ? なんのスキルも無い奴がちょっと役にたったからって、普通以下なのは変わんねえんだよ。それをスージーもカムカもお前を持ち上げやがって・・・。」


 うーん。

 何一つ合ってないので何一つ刺さらん。


 かと言って、腹が立たんわけじゃないし、めんどくさいし、ウザい。

 なにより、話しかけられてるせいか素振りの効率が落ちとる。


「話す相手が居ないからって、俺に絡むのやめてくれない?」


 そう言ってっからふと思う。

 リコがこいつら邪険にしてた理由がちょっと分かった気がする。


「ああっ!? 別にてめえと話たくなんかねえんだよ!」

「じゃあ、話しかけてくるなよ。そんなんだからリコに邪険にされるんだよ。」

「おい! ケーゴごときが調子に乗るな。こっちに出てこい! 弱いくせに偉そうな口を叩くとどうなるか思い知らせてやる。」

「やだよ。」


 思い知らせてやるって宣言してる奴の所に出て行くもんかい。

 んな訳で提案してみる。


「そうだ、どうしても俺と戦いたいってんなら、祭りの闘技会でなら相手してやってもいいぜ。」


「ああっ!? なんだと!!」

 恫喝のように大声を上げたマッゾだったが、ふと、冷静になると、わざとらしくニヤニヤと笑い出した。

「分かったぞ! 神託の時からなんかスキルでも取りやがったな? それで自信がついちゃったんだ。ぷぷ!」マッゾがわざとらしく吹き出す。

「そうだよ?」

「そうでちゅか、初めてのスキル良かったでちゅねー。」

「ありがとう。」

 なんか、受け答えがリコのごとき塩対応になってきた。

「・・・お前さ、神託から半年もたってないのに一つくらいスキルを取れたからって強くなったとでも思ってんの? お前以外はみんなスキルなんていっぱい持ってるんだぜ。なに勘違いしてんだよ。うぜぇんだけど。」

「そう思うんだったら、闘技会で俺に挑戦してみたら?」

「クソ役立たずが舐めた事抜かすな! 今すぐ出てきやがれ、ここで相手してやる!」マッゾが再び吠えた。


 ガン無視して、素振りにはげむ。


「おい! 聞いてんのか。」

「なんか公の場所じゃ相手にできないような理由でもあんの? もしかして、正々堂々と俺と勝負するの怖い?」

 そう言って、挑発するようにマッゾに冷たい視線を向けると、再びガン無視して素振りを始める。

「ふざけやがって!! いいぜ、分かった! お前がどれだけ使えない人間で、俺との差がどのくらいあるのか思い知らせてやる! 人前で徹底的にだ。去年のお前のぼろ負けなんて全然良かったと思えるくらいにやるからなっ!」

「そうしてくれ。」

「おう、そうしてやる! 一度口に出したからには絶対だからな。二度とリコに顔を合わせられないようにしてやる。」

 なんでそこでリコが出てくるんだ?

「相変わらずの勘違い君が、イキったことを後悔するのが楽しみだなぁ!」


 よし、話はついた。

 レベル上げ! レベル上げ!


 マッゾはその後も、無視を決め込んでいる俺を散々罵ってから、マディソン商店の裏庭の柵を何度も蹴り飛ばしてようやく帰っていった。


 闘技会になんか余計なイベントが増えてしまった。

 でも、村人ごときにゃ負けんよ。

 



 それから、一ヶ月。

 俺は【ゼロコンマ】でレベルアップの度合いを確認しながら、効率よく【回避】と【命中】のレベル上げを続けた。

 リックにもマッゾにも負けるわけにはいかない。自然と訓練にも気合が入る。


 マッゾがこちらに何かを仕掛けてくることはなかった。俺に闘技会で負けるなんて露ほども思っていないのだろう。

 その代わり、俺がスキルを一個取っただけで調子に乗っているって噂が流れてる。

 そして、それを大正義マッゾ様が闘技会で徹底的に懲らしめるんだとさ。

 また、この間の神託の時みたいに、みんなを集めて俺を笑い者にするつもりなんだろう。



 そして、時は経つ。

 祭りの日がやって来た。



 今日の闘技会で、これからの俺の生き方のすべてが決まる。

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