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コルドーバ探索の終わり

「怪我をしたものはフレイアとマーガレットに治療をしてもらえ! エリーが騎士たちに命令を飛ばしている。「息のある奴は縛り上げろ!」

 あちらこちらで戦闘不能になった敵が騎士たちによって簀巻きにされている。


 騎士団には死者は出なかった。もちろんリコもヤミンも無事だ。

 ただ、騎士団からは数人の重傷者が出た。【回復】を使える騎士から手当を受けているが、完治には時間かかる娘も出てきてしまった。

 一度戻って治療をしないとダメかもしれない。

 他にもダメージを食らって動けない騎士たちのことをみんなで【回復】している。

 

「ケーゴ! 鞭使えるようになったんだね!」

「良かった!治ったんだ!」

 リコとヤミンが俺に駆け寄ってきた。


 二人ともめっちゃ嬉しそうに笑ってる。

 そんなに心配かけてたのか・・・。


「治った?」

 部下たちに指示を下し終えたエリーも寄ってきた。リコとヤミンの異様な喜びように首を傾げる。

 リコが俺のイップスについてエリーに説明する。

「そうだったのか・・・。それで、試合の時、攻撃をしてこなかったのか。」

 しなかったわけじゃないんですけどね。どうでもいいけど。

「ケーゴは自らがそんな悩みを抱えていたというのにずっと私たちの面倒を見てくれていたというのか。」

 完全に忘れてましたけどね。

「本当に、すまない。ありがとう・・・。」

 エリーが声をつまらせて頭を下げた。


「またも貴様が邪魔をするのか。またまたまたまたっ!!」


 俺たちの会話を邪魔をするように大声が飛んできた。

 発生源は例の司祭だ。

 エリーに捕まって完全に無力化された司祭はグルグル巻で転がされたままで喚き散らしている。

 

「貴様らはみな消されるのだ! 消えるのだ! 大使徒に仇なすものはみな死ぬ!死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬのだぁ!」


「こいつは何者なのだ? 知り合いのようだが。」エリーが眉を潜めながら騒いでいる司祭を見下ろした。

「最後にあった時はラミトス神の司祭だったんですけどねえ。」俺は答える。

「ラミトス神? ラミトスなどが神などであるものか。神など!神など居るものか! 我々の真の主は他にいて我々を常に見ているのだ。」司祭が口を挟んでくる。「われわれは人間のものだ! われわれは人間によって生かされているのだ! 人間のために生きているのだ!」

 民主主義かな?

「今はラミトスの司祭ではないようだな。」エリーは言った。

「そうみたいだね。」

「最近、王都で問題になっている新興宗教というやつだろうか。」

「宗教などと一緒にするな! われわれは世界の変革者。世界を正しきすがたに作り変えるため集いた。われわれの本来あるべき姿は人間への恭順だ。神が何だというのだ。そんなモノまがい物だ。われわれの使命は神のためにはない。人間のために生きること。人間のために死ぬこと、それがわれわれの使命なのだ。お前たちはこの世界の真実を知らない。終わりに向かうこの世界の定めを知らない。その本来の使命を全うすることなく勝手に生き世界を滅びへと導くのだ。ならば貴様らなど死していたほうがまだ世界のためなのだ。我々の塵のような存在にどれほどの意味などない。人間のために死ぬことこそ本当のわれわれのあり方。その喜びをしらない貴様らは存在ごと蝋燭の火のように吹き消され、消えゆくのだ。我々の真の神は・・・・

「猿轡を噛ませておけ!」エリーが近くにいたステルシアに命じた。


 長々とわけの分からんことをようしゃべる。

 なんか、以前出会った時よりもいっそう狂信的になってる気がする。


「私はこいつを尋問するのは嫌だぞ。その、なんだ、めんどくさい。」エリーが率直な意見を述べた。

「俺もきちんとまとまってから内容を聞きたいかなぁ。」

「一度、王都へ帰ったほうがいいんじゃない?」辺りで縛られている捕虜たちを見ながらリコが提案した。

 レベリングの調子もいいのでもうちょっと居たいいところだけど、ここらで一旦引いといたほうが無難かもしれない。

「みんなもかなり強くなったし、早いけど切り上げて戻ったほうがいいと思う。エリー、どうかな。」

「しかたない。残念だがそうしたほうがいいだろう。」

 エリーはそう言いながら、悲しそうに俺を見つめた。

 名残を惜しむエリーの気持ちが伝わってくる。


 気持ちはよく分かる。

 順調にレベルアップしてるところだもんな。


「怪我の重い騎士たちも心配だし、こいつらも尋問してもらわなくてはならぬ。王城に戻ったほうが良かろう。」

「大使徒ってのが何なのか気になるしね。」と、ヤミン。

「帰り合図の狼煙を炊こうか?」リコが尋ねてきた。


 リコの言う狼煙というのは魔法で動くビーコンのことだ。

 ビーコンを作動させると、王城に直接連絡が行く。

 すると、ピーちゃんが飛んでくる手はずになっている。


「お願い。」

「分かった。」

 リコはビーコンを使いにテントの方へと戻って行った。


「何があった?」

 リコが戻ってくるより先にピーちゃんが風を切り裂いて飛んできて、俺の肩の上で渋い声を響かせた。


「ピーさん、速くないっすか?」

「連絡が予定より早かったゆえ、急ぎ飛んできた。」

「あざす。」

「ピッ!」


 俺たちが現状を説明するとピーちゃんは「2日後には迎えの船をよこす」と言って、リコが戻ってくる前にさっそうと飛び去って行った。


 こうして予定よりすこし早いが王都への帰還が決まった。


 まあ、みんな何だかんだで冒険者で言えば20〜25レベルくらいの強さにはなってるはずだ。

 最初に考えていた以上の成果だし、文句は言われんだろう。


 そういえば、船が来るまでの間にちょっくら探索して魔石窟を見つけておかんといかんのか。

 でないとルスリーに怒られてしまう。俺だけ。

 今の二特なら、魔石窟を探し出すだけなら簡単だ。

 ちゃっちゃと見つけて王都に帰るとしよう。


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