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エリー覚醒

 上陸して12日がたった。

 エルマルシェが折れてくれたので、ようやく本格的なレベリングが始められる。

 エルマルシェはそれなりに強いので彼女自身が俺たちの代わりに他の団員のパワーレベリングをできるのだ。


 エルマルシェが噛み合い始めてレベル上げはより順調に進み始めた。


「ブレスが来る! ガードたちはアタッカーをガードしろ!」

「「「はいっ!」」」

 エルマルシェの掛け声にみんなが呼応する。


 ヘルドラゴンフライのブレスをエルマルシェを含めたガード役が防御する。

 ヘルドラゴンフライはトンボと言う名前からは全く想像できないモンスターだ。

 ざっくり言うと、蛇に何枚もの透明な羽が生えているフォルムで全長10メートル以上ある。

 尻尾が尖っていてそれで攻撃してくる。毒がありそうだけど毒はない。

 推奨レベル35の割と強いモンスターだ。


「エリー様! ブラッドステインスパイダーが木の上に逃げそうです。」


 ヘルドラゴンフライとの戦闘の裏側ではリコとヤミンと選抜された5人の騎士たちがブラッドステインスパイダーと交戦している。

 ヘルドラゴンフライは騎士たちにとっては固くてHPも高い。のんびり交戦してる間に後から急襲されたのだ。

 こちらは25レベルのモンスターだ。

 リコとヤミンにサポートには入ってもらっているが、指示はエルマルシェに出してもらっている。


「サポートと遠距離部隊が足止めを。ヤミンとサリアがアタック。ダメージが入れば相手は降りてくる。降りてこなかったら警戒だけして深追いするな。」

「おう!」「はい!」

 ヤミンとサリアが返事を返す。


 エルマルシェが中心になってから騎士団がより強くなった気がする。

 エルマルシェは全員の性格を理解しているし、二特のみんなもエルマルシェに信頼を寄せているので作戦遂行がものすごく潤滑に回るのだ。

 俺が個別にみんなに作戦を説明して理解してもらうよりもずっと速いし安定だったりする。


「スイッチ!」

 エルマルシェの声に合わせてガードとアタッカーが再び前後交代する。


 ここらへんの動きは美しいとさえ言える。

 冒険者じゃ無理だな。

 そういう練習してないとこうも綺麗に入れ替わりなんてできない。


 ちなみに俺はうっかり混ざって攻撃すると倒しちゃうので、いざという時のために外野で観戦している。

 みんなが危ない時に緊急登板するつもりで待機しているんだけど、ここ2日ほど戦う機会がない。

 このあたりから苦労するかなと思っていたが、なんの不安要素も見えない。エルマルシェさまさまだ。

 明日からは完全にエルマルシェにまかせてしまっても良いかな?


 あの後、エルマルシェのスキルシートを見ながらいろいろと話しあった結果、エルマルシェに実際に一番必要なのはスキルについての理解だと分かった。


 彼女は俺との戦いで、【閃・両門咲き】を乱発していたが、【回避】が得意な俺に【閃・両門咲き】は実は相性がよくない。

 【回避】に有効な【牙突・三段突き】を持っているにも関わらず、スキルとして上位だからという理由で【閃・両門咲き】を使っていたらしい。

 スキル上げ自体は効率的でも、実戦でスキルを使うことがなかったせいでそのあたりがよく解っていないのだ。

 それこそ、彼女は街の衛士たちが知っているようなことすら知らなかった。


 そこで、彼女がやみくもに素振りをしていた時間を座学に当てさせて、彼女にさまざまなスキルについての知識を叩き込んだ。


 【剣】スキルが戦いのどういうことに影響するか、【命中】の重要性、防御の型としての【回避】型、【防御】型、【受け】型の特性、戦い方によって推奨されるスキルの種類なんかを詰め込むように説明した。

 あと、俺には各人の才能が見えることも伝えて、二特のみんなの特性も憶えてもらった。


 スキルについて学んでもらうことがエルマルシェにやってもらいたい2つのことの内のひとつだ。

 ・・・ってわけじゃない。

 これはあくまで前段。


 エルマルシェにやってもらいたいことのひとつは、みんなのレベル上げのサポートだ。


「今だ! ヘルドラゴンフライに隙ができるぞ! ガードが叩け! 攻撃系のスキルを上げるチャンスだ!」

 エルマルシェが吠える。

「「「おおっ!」」」

 みんなが女子とは思えない掛け声を上げて、高度を下げてきたヘルドラゴンフライをタコ殴りにする。


「下がれ! 3,2,1」

 エルマルシェのカウントに合わせて騎士たちがバックステップで敵と距離を取る。


 その直後、ヘルドラゴンフライの尖った尻尾が周りの敵を薙ぎ払おうとするかのように円形の軌跡を描く。

 だが、そこに騎士たちはいない。


 強敵との実戦のほうがスキルレベルは上がり易い。

 エルマルシェが各隊員をうまく回してくれば、強い敵に挑むことができるのだ。


 さらに彼女にサポートを任せた理由がもうひとつある。


「そこ! 剣の振り方にも注意しろ! 薙ぎと突きの選択くらいは意識しろ!」

「はいっ!」


 訓練では一つ一つの素振りのしかたによってもレベルの上がり方が全然違う。

 俺は【ゼロコンマ】でレベルの上がり方を見て正しい訓練のしかたを把握することができるので、みんなより効率よく訓練をすることができるし、実戦をこなすこともできる。


 エルマルシェはそれを他人に対してできるのだ。


 エルマルシェはずっと二特でみんなを教えてきたこともあってか教えるのがうまい。

 いわゆる【教官・剣】のスキルが10レベルと高いのだ。

 カサンの【剣】だけが上がりまくってたのは彼女がエルマルシェの教えを忠実に守ったからだ。

 つまり、彼女は剣に関連したスキルの優秀な訓練士でもあるのだ。


 そんな彼女が現地で訓練をしながら実戦をこなしているので、みんなのレベリングが捗ってしょうがない。


 そして、エルマルシェにやってほしいもう一つのこと。


「【シャープネス】!」

 エルマルシェの剣が光り輝いた。

 

「エリー様! 今です!」

 ケイティが叫ぶ。

「【カウンター】! 【スナイプ】!」


 エルマルシェがヘルドラゴンフライにとどめの一撃を繰り出した。

 エルマルシェの会心の攻撃を食らったヘルドラゴンフライは甲高い叫び声を上げながら地面に落ちた。

 数時間続いた長い戦いはようやく幕を下ろした。


 これが、エルマルシェにやってもらいたいことの2つ目。


 強い敵と戦えばレベルが上がりやすいわけだから、魔法の力を使おうが、マジックアイテムを使おうが、ルナみたく【コスプレ】を使おうが、できるかぎり強い相手と戦うことが好ましい。

 だから、持てる全ての力を使って、自分が相手できる最強の相手に対して戦いを挑むのが最も効率が良い。


 そして、エルマルシェの最大の武器は【剣】でも【ガード】でもないのである。


 エルマルシェは実は魔法が使える。

 ってか【魔法の才能】が1.8以上あるねん。

 むしろ、今すぐ騎士をやめて魔法使いになれって言いたくて言いたくてしょうがない。


 さっき彼女が使った【シャープネス】なんて勝手に憶えたとかぬかしやがった。

 他人にはかけられないものの、他にもいくつかの戦闘バフ系の呪文をうっかり憶えてしまっているそうだ。

 【魔法の素質】があると、戦いの訓練してるだけで呪文憶えれるの?

 意味分かんない。

 妬ましい。


 彼女はその才能を生かして、もっと魔法を使うべきなのだ。

 魔法を軸に戦いを組み立てることで強敵と戦えるようになり、戦いの中で使った騎士のスキルも上がりやすくなるはずだ。


「ケーゴ! 【命中】のレベルが上がった。見てくれ!」

 ヘルドラゴンフライを倒したエルマルシェがはしゃぎながら俺に報告してくる。

「良かったです。」

 俺も嬉しい。


 順風満帆だ。

 これは想定よりだいぶ良い結果を報告できそうだ。

 やっぱ、レベルアップっていいよね。

 心がほっこりする。


 唯一、気になる点があるとすれば、リコの機嫌が最近ちょっと悪いことくらいだ。

 いろいろサポートばっかりお願いしているせいだろうか。


 騎士団のみんなと和気あいあいと話をしていても極力会話に加わってこようとしない。

 リコにとってはここらへんのモンスターはそこまで強いわけでもないから、レベルがみんなほど上がってないんだろうな。

 これからはリコのレベルアップの手伝いもしてあげないとだな。


「お疲れ様。エルマルシェのおかげでみんな上手くいってるよ。」


 やっぱ明日からはエルマルシェに完全に任せてしまおう。

 レベル上げが滞ってるのは俺にしたって同じだし。


「明日は二特だけでやってみようか。無理なレベリングはしなくていいからさ。」


「そのなんだ。一つ、お願いをしてもいいだろうか?」エルマルシェが珍しく神妙な顔で言ってきた。

「まだ二特だけじゃ心配?」

「いや、そうではなくてだな・・・。」

「??」

「私のことはエリーと呼んで欲しいのだ。」

 エルマルシェは顔を真っ赤にしてうつむいた。


 おお、なんか愛称を許された。

 これはちょっと認めてもらえたと思っていいのだろうか?

 

「分かったよ。エリー。明日は君に任せたよ。頼むね。」

 エリーは愛称で呼ばれるのがまだ恥ずかしいのだろうか、うつむいたままコクリと頷いた。



4月中完結無理かもしれません分かりませんがんばりますごめんなさい。

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