マーガレット覚醒
3日目の探索が始まった。
マーガレットはケーゴによってステルシアたちの班にコンバートされた。
マーガレットが懸念していたように、騎士のみんなはこの突然の班替えに対しての不満でいっぱいのようだった。
「何ですの、あいつ! マーガレットを無理やり危険な目に合わせるようなまねをして!」
「本当です! エデル様がせっかく考えてくれた班でしたのに!」
マーガレットはケーゴからこの手の言葉には絶対に反論するなと言われているので、じっと我慢して口を閉じている。
自分のために親身になってくれている人の悪口を黙って聞いてなくてはならなくて、マーガレットはちょっと悔しい。
「マーガレット、大丈夫ですの? 無理そうだったら今日は引き上げて帰ってもいいのですよ。」そんなしかめっ面のマーガレットを見てミリアが言った。
「無理はするなよ。幸いフレイアも多少ならアタッカーをすることができる。いつでも交代できるから、ちょっとだけ戦ったら下がると良い。」リーダーのステルシアもマーガレットを気遣う。
「大丈夫だからね。頑張りましょ。」フレイアもマーガレットを元気づける。「成果とかは気にしなくていいからね。今日は探索はちょっとだけにしましょう。」
「あ、ありがとうございます。」
マーガレットは仲間の気遣いに嬉しそうに頭を下げた。
「居た! スケイルフロッグです。」
フレイアが前方の木陰に大きな土色のカエルが休んでいるのを発見して指さした。
「あれなら、強くても15レベルくらいですから、マーガレットさんでも注意すれば大丈夫ですわ。」
「私がガードする。試しに戦いに参加してみると良い。」
「はい!」
「【デクリーズウェイト】!」
マーガレットが憶えたばかりの呪文を唱えてから、ステルシアと並んで走り出す。
二人に気づいたスケイルフロッグが二人を視界に捉える。
「舌を伸ばして攻撃してくるぞ。」
「はい!」
二人が接敵する前にスケールフロッグは舌を伸ばしてきた。
「マーガレットっ!」
ステルシアが悲鳴のように声を上げたが、マーガレットはするりと身を回転させてスケールフロッグの攻撃をかわし、流れるような動きで舌を切り裂く。
そして、いっきに間合いを詰めると返す刀でスケールフロッグの本体を切りつけた。
「えいっ!」
スケールフロッグの腹にマーガレットの剣が見事に命中した。
「ええっ!?」
マーガレットの華麗な動きに、ステルシアは驚いて動くのを完全に放棄する。
ミリアとフレイアもマーガレットの華麗な動きに唖然としている。
「みなさん、私一人だとちょっときついです。援護をお願いします。」
といいつつも、マーガレットは一方的にスケールフロッグに攻撃を当て続けている。
「お、おう・・・。」
ステルシアは戸惑いを隠せないまま参戦したが、マーガレットをフォローするどころか、敵に一切のダメージを与えることもなかった。
結局、スケールフロッグはフレイアからの魔法の援護を受けたマーガレットが一人で倒してしまった。
「マーガレット! なにがあった? なんでそんな急に強くなった!?」
マーガレットがスケールフロッグに止めを刺すなり、ステルシアはマーガレットに詰め寄った。
「えーと、【デクリーズウェイト】で鎧を軽くしなさいってケーゴさんに言われて、そうしたらなんかとっても戦いやすくなって・・・。」
「【デクリーズウェイト】?」
「物を軽くする魔法です。」
「戦闘用の魔法ではないではないか。」
「そうなんですけど、ケーゴさんにアドバイスされてリコさんに教えてもらいました。」
「そ、そんなことでこんなに強くなったのか?」
ケイティの代わりを務めて余りある活躍をしたマーガレットにステルシアは舌を巻いた。
「これなら、今日は昨日よりも強い敵とも戦えるかもしれん。」
「あ、でもでも、私、ダメージが全然弱いみたいなので、魔法の援護をかけて欲しいです。あと、場合によってはミリアさんがメインアタッカーで私がディフェンダーの役割を受け持ったほうがダメージ効率がいいってケーゴさんが言ってました。」
「ダメージ効率?」
「敵を早く倒せるってことみたいです。」
「早く倒して何の意味があるのだ?」ステルシアが困ったように眉を潜めた。
「さあ?」マーガレットもよく理解していなかったので首をかしげる。
「でも、これなら今日は昨日以上に討伐が進められますわね。」
「はい! 私もどんだけやれるか試してみたいです。」マーガレットが拳を握った。
「じゃあ、今日は行けるところまで頑張ってみようか?」
その日彼女たちはマーガレットが【デクリーズウェイト】を唱えられなくなるまで、モンスターたちを狩った。
* * *
「おかえり。」
「ただいま帰りましたっ!」
マーガレットたちのチームがようやく帰ってきた。
マーガレットの顔が晴れ晴れしている。
きっと良い経験が積めたのだろう。
俺が編成をいじったからマーガレットたちに何かあったに違いない、と、さっきまで詰め寄ってきていたエルマルシェが俺から目をそらす。
彼女たちは彼女たちで、サポートのマーガレットが居なかったせいか道に迷い、ついさっき戻ってきたばっかりだった。
「その感じだとうまくいったみたいだね。」
「はいっ! いっぱい褒めてもらえました。」マーガレットが俺を見上げて嬉しそうに笑った。良かった、良かった。
「良かったね。」
「はい!」
「その・・・すまない・・・。ケーゴ殿。」
マーガレットの後ろからおずおずとマーガレットの班の3人の騎士が進み出てきた。
確かステルシアとミリアとフレイアだ。
「我々にもご指導いただけないだろうか。」
よし来た!
「よろこんで。」
「礼節を欠いた我々に、優しいお言葉痛み入ります。」ステルシアが深々と頭を下げた。
「いえ、お気になさらず。一緒に頑張りましょう。」
とりあえずのきっかけはできた。
上手く彼女たちを育てることができれば、他のみんなもついてきてくれるようになるはずだ。




