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マーガレットと船の上

「海マジでかい!」

 ヤミンは船に乗ってからずっと飽きもせず甲板から一面の海を眺めている。

「水がうねうねしてるね。」

 リコもヤミンの隣で舞い上がる髪を押さえながら海の風を楽しんでいる。


 俺は甲板で気持ち悪さに耐えながら魔法の訓練。


 実はあとちょっとで【エネルギーボルト】が1レベルになる。

 こつこつスキマ時間で練習してきた成果だ。

 ぶっちゃけ、【魔法ダメージ】やら【魔力】他のスキルはからっきし上がらなかったので、大した威力が出るわけではないのだが、それでも魔法は使ってみたいのだ。


 今まで、危険や困難な状態ではレベルの上がりは早かった。

 だから、この酔いやすい船の上で魔法集中棒に集中する苦行もきっと魔法レベルの上がりが速いはず。


 ってやってて、完全に酔った。

 気持ち悪い・・・。


 そんなわけでいつ吐いてもいいように俺も甲板に出てきている。

 この気持ち悪さに耐えて訓練したなら【エネルギーボルト】の上がりはもっと速くなるに違いない。

 気持ち悪すぎてステータスの文字見れないから本当に効果出てるのかは実は分かってないんだけど。


 さて、訓練にかまけてはいるが、本来ならこの船ではやるべきことがあった。

 コルドーバについてからの効率的なレベル上げのため、みんなのステータスを確認しておきたかったのだ。

 ルスリーから他人のステータスを見ることのできる魔法のアイテムを預かってきているのだが、この魔導装置は相手がステータスを出してくれないと見ることができない。


 そして、騎士団の一人にステータスを見せてくれってお願いしたところ、


「女性にステータスを見せろなどと、貴殿には礼節というものがないのか!」

 

 って、セクハラ扱いされた。

 知らなかった。

 セクハラに当たるのか、これ。


 どうしよう。


 その後も怖くて訊けなくて、いまんところ誰一人としてステータスが分からん。

 誰か一人でも良いサンプルになってくれば、俺のこと信用してもらえるようになると思うんだよなぁ。


 というわけで、泣く泣く魔法の訓練中。

 しかし、ステータス見れないのは困る。【ゼロコンマ】があっても役に立たない。

 なんかいい方法がないものか、なんて考えて集中できてない時点で魔法の訓練なんてうまくいってないんだろうな。


 暗くなってきたので、部屋に戻る。

 食事までリラックスして船酔いの気持ち悪さを緩和したい。


 客室の並ぶ廊下を進んでいくと、すこし先の角から声が聞こえてきた。

 エルマルシェと背の低い女の子が廊下で話している。


「お前は今回の遠征で戦闘には加わるな。いいな。コルドーバの敵はお前には荷が重い。」

「は・・・はい・・・。」

「島ではしっかり訓練と炊事を頑張るように。」

「わかりました・・・。」


 エルマルシェは俺が廊下の先に居ることに気がついてキッと睨んでくるが、そのまま何も言うことはなく廊下の奥へと消えていった。


 俺は廊下に残されてうつむいている女の子に声をかける。


「どうしたの? 大丈夫?」


 確かマーガレットって子だ。

 挨拶の時、一番最初に挨拶してた子だ。

 エルマルシェの班のサポートだったはず。


「ひゃっ、あの、ええと、なんでもないんです。」

 マーガレットは俺を上目遣いに見上げながら、ビクビクしている。


「えーと、エルマルシェさんになんか言われてたみたいだけど、君にもしっかり参加してもらうからね?」

「で、でもでも、私弱いですから、戦闘で死んだらたしかに危ないですし、前線には出ないできちんとみんなのサポートに徹したほうがいいんです。」

 と、言いながらも元気を無くしていくマーガレット。

「うーん。戦いに参加するの、イヤ?」

「そんなことないです・・・私だってみんなのお役に立ちたいです。」

「なら、頑張ろうよ。エルマルシェさんには俺から言っておくから。前に出ないと強くなれないよ。」

「でも、でもでも、それこそいっぱい訓練しないと強くなれませんよ?」マーガレットは本気で不思議そうに言った。


 最良のスキル上げは訓練だと思ってるんだろうな。


「その、ええと、君のステータス見せてもらえないかな? ルスリー殿下からそういうの見れる魔導装置を預かってるんだけど。あ、別にセクハラとかじゃなくて、君の育成方向の・・・

「? 別にそれくらい構いませんけど?」

「あ、はい。」

 

 セクハラちゃうんやんけ。


「開きました。」

 マーガレットがステータスを開けたみたいなので、ルスリーから預かった眼鏡をかける。普段自分のを見ているかのようにステータスが見えた。

 マーガレットの後ろから彼女のスキルを覗き込む。

「そ、その・・・私、器用貧乏で・・・えへへ。」

 マーガレットが照れながらこっちを振り返って見上げた。


 マーガレットのスキルを確認してみると【剣】と【命中】のスキルが8レベルで一番高い。【回避】や【受け】、【打撃】とか戦いの主軸となるスキルなんかも全体的に6レベル以上ある。

 たしかに一人ではコルドーバの強い敵相手には通用しないが、誰か強い人のフォローが入ればそれなりに戦いの役には立つはずだ。

 【炊事】【洗濯】なんかのスキルは星の数ほどあるけれど、こっちはどれも1ばっかりで、器用貧乏と言うには低すぎる。

 この世界的には1レベルあればそれなりにできるって扱いだから、これでも器用貧乏扱いなのかも知れないけど、アルファンの時の感覚からするとちょっと物足りない。


「スクロールしてみてもいい?」

「へ? スクロール? えーと、構いませんけど・・・??」


 ルナからある程度の強さは聞いているので、いままでのところは予想の範囲内。

 今、俺が本当に知りたいのは彼女の才能系スキルについてだ。

 いわゆる、彼女の資質。どういうスキルが伸びやすいかの指標となるスキルだ。

 ステータスをスクロールして才能系のスキルを探し出す。


 【力の才能】  0.46041046

 【速さの才能】 0.85220725

 【魔法の才能】 0.97103975


 アルファン3大必須スキル。

 このスキルが高い分野のスキルが伸びやすい。いわゆる成長バフだ。


 力以外は悪くない。ってかほぼ1じゃん。俺からしたら才能の塊だよ。

 アルファンだったら小数点以下見えないからリセットしちゃてるんだろうな。

 魔法の才能が羨ましい限り。

 これは特に魔法関係のスキルが伸びやすいってことだ。

 上記以外の素質系スキルだと【器用さの才能】が高めだ。


 まさに軽戦士系の魔法戦士タイプ。羨ましい。


「あの・・・何を見ているんですか??」

 マーガレットが怯えたように尋ねてくる。


 そういや、小数点以下のスキルって見えてないんだった。

 俺、今、空欄を見ながら唸ってるわけね。


「いや、俺、特殊なスキル持ってて、他の人に見えない細かい才能とかが見えるんだよ。」

「そうなんですか・・・?」マーガレットが不安そうに俺を見上げた。

「もしかして、普段は鎧を来て訓練してる?」

「はい。私、背も小さくて力もないから、重い鎧に振り回されちゃて・・・。早く鎧を着こなるようにならないとダメなんです。」


 やっぱり。パワーが伸びにくいのに重い鎧を着込んで訓練してるからスキルが伸びてないのだ。

 伸びにくいパワー系のスキルに経験点取られてたんだろう。

 そもそもの素質が騎士向きじゃないのだ。


「うーんと、マーガレットはどんな騎士になりたいの?」

「お姉さまたちの横で一緒に戦って、楽させてあげたいです!」


 うむ。なんか良い娘のようだ。

 形にもこだわるタイプじゃなさそうかな。


「この遠征でそうなれるようにしてみせようか?」

「えっ? そんなことできるんですか?」

「うん。俺が指導してもいい?」

「は、はい! お願いします。エリーさんと互角に戦える人に教えてもらえるなんて光栄です。」


 嬉しいことを言ってくれるじゃない。

 きっちり、育ててあげようじゃないか。


「じゃあ、最初は魔法の特訓から始めようか。」


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