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出港

 王都から三時間くらい街道を南下すると海に着く。

 街道が海に突き当たる地点にネイブスの港町はあった。


 俺たちは馬車、騎士団はそれぞれ騎馬に乗ってネイブスの町にたどり着いた。

 騎士団のみんなはすごくピリピリしている。

 っていうか、白馬多いな。

 そんなんだから、みんなから揶揄されんじゃないの?


 騎士たちが馬を預けている間、俺はルスリーと波止場にやってきていた。

 海が初めてだったリコとヤミンは海に触りに浜辺まで駆けていった。

 俺も初めてっちゃ初めてなんだけど、海は前世と変わらんかったのでそこまでテンションが上がらない。

 俺はルスリーと打ち合わせをしながら波止場から自分たちの乗ることになる船を眺めていた。

 俺たちはこの船でコルドーバ島へと行き、現地で一ヶ月ほど探索を行う。

 

 王国所有の大きな船を見上げながら最終確認をしていると、突然ルスリーに横柄な声がかけられた。


「ははん。ついにコルドーバに逃げるのか。」


 振り返ると俺と同じくらいの年齢の貴族っぽい青年が立っていた。

 派手な金ピカ鎧を来て、後ろに何人かの騎士を従えている。

 

 偉い人っぽいな。

 誰だろ?


「コルドーバ島に行ってずっと開墾でもしているといいさ。頑張り給えよ。」青年は偉そうに言った。

「残念じゃが、わしはコルドーバには行かんぞ。任されている仕事が沢山あるからのう。」ルスリーが答える。

「じゃあ、ついに騎士団を廃棄するってことか。お前がワガママ言って作ってもらった騎士団だってのに放り出すのか。無能だな。」

「別にコルドーバの探索にわしがついていっても仕方ないしの。」

「お前の騎士団がエデルもなしにコルドーバで生き延びれるものか。可哀想に。」

「さあ、どうかの。そっちこそ、行方不明者の調査はついに諦めたのか? 民草の危機を救う仕事を受け持ったというに、よもや、嫌味を言うためだけに時間を割いたわけではないじゃろうな?」

「おやおや、大事な妹の門出を見送りに来たというのに冷たいことを言う。」

「別にわしが行くわけでは無いとずっと言っとろうに。どうせ、そっちの調査が行き詰まって暇じゃからきたんじゃろ。」

「ま、まさか。手がかりだらけで手一杯さ。部下たちが次どうするか決めてるとこだよ。」

「じゃあ、なおさらこんなところで遊んでたらいかんじゃろ。」

「はっ! 僕の分の仕事はもうとっくに終わったのさ!」青年は前髪をかきあげて得意げに言う。

「ウルフェインに言いつけるぞ。」

「ウェ、ウェルフェインはかんけいないだろっ!」

「王都の重大事件を部下に押し付けて、遥々こんな所をほっつき歩いとるわけじゃからの。」

「ちょ、ひきょうだぞ!」

「じゃあ、とっとと自分の仕事に戻らんかい。」

「もう! 憶えてろよっ!!」

 青年は見事な捨て台詞を残してがに股で帰っていく。御付きの騎士たちが慌てて青年を追いかけていく。


「いちいち嫌がらせにこんと気が済まんのか、あやつは・・・。」


「あの人誰です?」

「わしの兄じゃ。」

「へー、お兄さんいたんですね。」と言ってから気づく。「え!? じゃあ、あの人、王子!? アルファンにそんなキャラいましたっけ?」


 たしか、王女しかいない設定だったよ?


「わしがルスリーになったってことは、元のルスリーはいなくなってしまう訳じゃろ?」

「はあ。」

「可哀想なので新キャラにしてやった。ついでに生やしてくれてやった。」

 うわあ、いきなりすっげえ下ネタ。

「まあ、完全に出来損ないの兄じゃな! 幼い頃はさんざん虐められてやったもんよ。」

 さっきから何言ってるのかさっぱり判らない。

 なぜか、ルスリーはめっちゃごきげんだ。

「何で、そんな嬉しそうなんです?」

「なに、様式美よ、様式美!」

 まったく分からん。


「ときにケーゴよ。お前はアルファンのサービス終了まで居たんじゃよな。」

「はあ、そうですが。」

「ルスリーはどんなじゃった。初期はクソみたいなガキだったが。」

「そうですね。でもお転婆で我儘で周りを振り回してはいましたけど、みんなからは結構好かれてましたよ。」

 ルスリーは俺の言葉を聞いて、喜んでるのか苛ついてるのか片方の眉を上げた。

 これから自分がどうしていくべきかを考えてるのかな?

「ウェルフェインとは・・・いや、なんでもない。ゲームの話なんぞどうでも良いわ。」

「??」


 よく分からない王子の来訪の後、騎士たちの準備が調ったので、俺たちは船に乗り込んだ。

 欄干からルスリーとヘイワーズさん、そして護衛としてついてきていたエイイチが手をふる。


「皆、精進して帰ってこいよ。」

「はっ!」

 ルスリーの檄に騎士たちが敬礼をして答えた。

「ヤミン、リコ、ケーゴ、二特を頼んだぞ。」

「「「はい。」」」

「それと、ケーゴよ。」

 じわじわと離れゆく桟橋のルスリーが最後に俺に声をかけてきた。

「なんでしょう?」

「そいつら、免疫無いからたぶらかすなよ。」

「はい??」


 訳の分からないことを言うルスリーを残して、船はコルドーバへ向けて出発した。



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