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OLルナ再び

 コルドーバ行きの前日、俺たちは再び蹄鉄型の机のある会議室に招集された。

 騎士団の面々も集まっている。

 今日はコルドーバ島での作戦や動き方、指示系統のすり合わせだ。


 作戦を立てるのは、騎士団を率いることになっている俺達だ。


 が、


 全部ルナに丸投げした。


 ルナに作戦立案を任せる点については、実は前回訪問したときにルスリーにもルナにもすでに伝えてある。

 丸投げしといてなんだが、作戦立案に当たってルナには一つ条件をつけた。


『OLルナで考えて、部下に説明すること。』


 というわけで、このミーティングではOLスタイルのルナが作戦の説明をしている。


 ルナには部下とのコミュニケーションを円滑にしていくための第一歩だ、と説明してある。

 なのでルナもやる気満々だ。

 なんてったって今日はOLルナのメガネが三角。


「というわけで、例えば、このようにサリア、エルメ、サリオーレ、ウナでひとつの小隊のようなチームを組んで探索とモンスター討伐に当たります。現時点での班分けは今、私の示したとおりですが、現地でケーゴさんが状況を見て組み直します。指示には従うように。」

 会議室のホワイトボードに書かれたチーム分けを説明しながら、ルナはクイッとメガネを上げた。

「何か質問はありますか?」


 騎士団のみんなはぽかんと口を開けてルナのことを見ている。


 彼女たちは普段のルナとエデルガルナ状態のルナは知っていたようだが、OLルナは初めてだったっぽい。

 普段のルナのほんわかした感じでもなく、エデルガルナのように・・・ってか、エデルガルナもなんとなく抜けてるからなぁ。


 ともかく、いつもとは違うキビキビとしたルナの様子にみんな圧倒されている。


「エデル。その班分けは非常識だ。」圧倒されている騎士たちを尻目にエルマルシェが冷たい声で意見を返す。「サポート部隊と前衛部隊、可能なら前衛もアタッカーとディフェンダーといった役割ごとに部隊をわけたほうが良い。役割ごとに班分けし動かす、それが基本的な部隊の運用方法だ。それをごちゃまぜにしては小隊ごとの運用が滞る。」彼女は冷ややかな目でルナのことを睨みつけながら言った。


 ルナはメガネをクイッとした。

「アタッカーを一つにまとめてしまうと、一つのアタッカーとしてしか働けません。戦争の一局面の中ではそれで良いかも知れませんが、今回は島を探索し、危険なモンスターを狩るのが目的です。今回は軍としての運用より、冒険者に近い運用が正しいでしょう。」

「騎士が冒険者の真似事など!」エルマルシェが声を荒らげた。

「ではこう考えてください。4人で一つの軍と認識するのです。ひとチームが軍、ひとりが小隊なのです。」ルナは冷静に回答を続ける。「役割ごとに小隊として分けてしまうと特定の人間に仕事が偏り、各自が自らの役割を認識する機会が失われてしまうおそれがあります。二特は少数精鋭を求められた部隊ですので、各個がそれぞれの役割をまっとうすることが求められています。そのために騎士隊の全員が責任を全うし活躍する機会を得られることが重要です。」


 ルナは再びメガネをクイッとさせた。

 ルナのきびきびした対応に気の利いた言葉の返せないでいるエルマルシェを追い込むように、OLルナは說明を続ける。


「それぞれが本来自分がこなすべき役割を考えながら各々の班で働くことは、全体における個々の役割の重要さと考え方を理解することに繋がります。それは、誰かの命令下で動き続けていたら決して体感することのできない経験となることでしょう。」

「・・・。」エルマルシェは次の言葉を探しているようだったが、うまい反論は出てこなかったようだ。

「今回に関してはこのやり方で試していただきたいと思います。問題が起きたところで考え直すというのはいかがでしょうか?」


 ルナのテキパキとした応対にみんなが呆気にとられている。

 エルマルシェも気圧されて黙って頷いた。


「それでは、次に島の全体像と出現するというモンスターについての情報を共有します。お手元の資料を御覧ください。要点をまとめているので重要事項は必ず頭にいれておいてください。その他仔細については現地で実物をみながらケーゴさんから指示を・・・・」


 ルナはその後もテキパキと說明を続けた。

 最後まで騎士団のメンツは完全にOLルナのキビキビとした取り回しに飲まれたままで、つつがなく会議は終わった。


 さすがはOLルナ。

 作戦内容は完璧。

 ちなみに俺からはコルドーバ島の地理とモンスターについてしか教えていない。


「おつかれさま。よかったよ。」完璧に仕事をこなしきったルナにねぎらいの言葉をかける。

「ありがとうございます。先日のケーゴのレイドボスとの戦いを参考にしてみました。」

「流石。でも、もっと優しい作戦でも良かったんじゃない?」

「二特・・・・第二特殊騎士隊はそんなにヤワじゃないですよ?」

「そっか、ごめん。じゃあ、きっちりしごくことにするね。」

「その・・・」OLルナには珍しく言いよどんだ。「エリーちゃんのこと、お願いします。」

「うん?」

「きっと、前が見えなくなっていると思うので。」

「ああ、たしかに。イノシシみたいだもんね。」

「それエリーちゃんに言っちゃ絶対ダメですよ?」

 

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