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宗教勧誘

「で、全額負けてきたと?」


 帰りの馬車の中でルスリーからもらった報酬を全額負けて来たことを白状した俺はリコにめっちゃ怒られている。


 リコは今まで見たことないくらいにカンカンだ。

 向かいの席から腕組みしたまま俺を睨みつけている。

 ヤミンは爆笑している。

 エイイチは俺の隣でドン引きしている。


「ごめんなさい。」


 大人しく謝る。

 全面的に俺が悪い。

 俺っていうか、俺の運が悪い。


「ケーゴがそんなダメな人間だとは思わなかった。」

「すみません、勝てる自信はあったんですが。」


 自分たちも今まで散々ジャイキリかましてきたわけだし、弱いほうが勝っちゃうゃうこともたまにはあるよね。


「ギャンブルなんて、絶対に負けるに決まってるのっ!」

「いえ、今回はたまたま運が悪い方に転がっただけで・・・こんなはずではなかったんです。」

「みんな、そう言うんです!」

「次やれば、間違いなく勝ちます。」

「絶対ダメ!」


 何回もやれば勝つ方に収束していくはずだったんだって。

 本当に今回は確率が偏っただけで・・・。


「【ゼロコンマ】が・・・」

「だまらっしゃい!」


 恐いよう。


「いっぱい心配してたのに・・・。」リコが両手で顔を覆った。

「ええと、何でしたっけ?」

「イップスの話だよ。」エイイチがこっそりと俺に耳打ちする。

「ああ。」

 そういえば。

「まあ、そんだけ忘れてたんなら気晴らしにはなったんじゃないの?」ヤミンがようやく爆笑から帰ってきて言った。

「そもそも俺、そこまで悩んでないし。たいしたことないよ。」

「いや、体に出てる時点で相当なのだよ? さすがにそこまで鈍いのはちょっと引くわ。」さっきまで笑ってたはずのヤミンはほんとに呆れているご様子。

「え〜と、全員で真顔になられると深刻感が増して辛いんですが。」

「だって、家一軒分くらい全部なくすのって考えてみたら笑えないし。」と、ヤミン。

「すみません。」


 みんなの視線が痛いし、リコが恐い。


 こうして、再びリコのヒモに戻った俺。

 宿に戻ってきてなおお怒り状態のリコと顔を遭わすのが嫌なので、フラフラと外を散策。

 夕日が目に染みる。


 外には出てきたもののお金が無いので何もできない。

 さすがに王都の人通りの多い道で何かの訓練するのも恥ずかしいし、王都の外まで出るにしても徒歩じゃ時間がかかって夕飯までに戻ってこれない。

 ・・・夕飯に戻るのやだなぁ。


 そんな感じでフラフラとあてもなく王都を散策して時間を潰していると、突然声をかけられた。


「ちょっとそこのあなた。」


 うわ、まさに怪しい占い師。


 路上においた机の向こうに真っ黒な衣装を着た人が座っている。

 女の人っぽいけど頭から黒い布を被っていて顔がよく見えない。


「あなた、悩んでいますね?」

「あ、はい。いえ、悩んでません。」


 そりゃ、今の俺見りゃそう見えるだろうさ。

 関わらないのが一番。

 とっとと行こう。


「良かったらその悩み、私にお聞かせ願えませんか。」


 うわ。

 立ち上がってついてきた。


「ご安心ください。私はベルゼモン神官ではございません。」

 この怪しい人にさえ、さり気なくディスられるベルゼモン。

「私はこの世界の真なる支配者の使いにございます。神官などという恐れ多い者でもありません。」

 占い師っぽい人はつきまとってくる。


「我々は真の世界を知るものです。あなたが悩まなくてはいけないのも、世界のあり方のほうが間違っているからなのです。きっと本来の世界のあり方を知ればあなたの悩みなど消え去ることでしょう。バルザック司祭様にあなたの悩みをぶつけては見ませんか? 」

「・・・?」


 なんか聞いたことあるような名前のような?

 誰だっけ?


「もしかして怪しんらっしゃいますね?」

「ええと、勘弁してください。」

 振り切ろうと歩みを速める。


「それでは予告します。近く世界崩壊時計がまた一つ時を刻むでしょう。」


 えっ?

 どうしてそれを知ってるんだ?

 こいつにも小数点以下が見えてるのか?


「どうして分かるのかですって?」俺の驚いた様子に気づいて、占い師の声色に嬉しそうな響きが乗った。「それは真の神が我々にそうなることを教えてくれたからです!」


 人通りの多い通りに近づいたせいか占い師はようやく足を止めて、俺につきまとってくるのを諦めた。

 それでも占い師は背後から狂気に満ちた大声で語りかけてくる。


「もっと予言します。世界崩壊の時計の進みはどんどんと速くなるでしょう! それはこの世界のあり方が間違っているからなのです! その時になって、真の主の下僕たる我々の側に居なかったことをあなたは後悔なさるのです!」



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