破滅へのカウントダウン
俺はルスリーに引っ張られるように馬車に乗せられると、カードの書き換えもできないままに、リコとヤミンを残したままどこかに拉致られていく。
今は馬車の中でルスリーと一対一だ。
お付きの騎士の人は御者台のヘイワーズさんの隣に追いやられた。
「俺に特別な話でもあるんですか?」
「うむ。ちょっとばかり付き合ってもらい所があっての。」
なんだろう?リコとヤミンを連れてこなかったってことはやっぱ転生者の俺に内密な話があるんだろうか?
「その・・・俺の教育力ってどういうことですか?」
割と自信ないぞ。
「いわゆるパワーレベリングをして欲しくての。」
「パワーレベリング?」
パワーレベリングってのはレベルの高い人が、レベルの低い人を連れて経験値の多いモンスターを狩ってレベル上げを手伝うことだ。
「わしの配下の第二特殊大隊を育成してほしいのだ。」
そう言ってルスリーは状況の説明を始めた。
ルスリーによると、ルスリー旗下の第二特殊大隊は隊長のルナと副隊長のエリーという騎士以外はあまり強くないらしい。それを早急に強くして欲しいということらしい。
ちなみに、今、御者台に座っているのが副隊長のエリーさんだそうな。
レベリングの場所もすでに確保してあって、コルドーバ島と言う王都から普通の馬で3、4時間ほど南に行ったところにある港町から、さらに船で2日ほど行ったところにある広めの無人島だ。
アルファンでも30ー40レベルくらいの人たちにとってのレベル上げの穴場だったので、俺たちにちょうど良い場所だ。
たしかに、レベリングしやすいモンスターの多いところだ。
「ルナじゃダメなんですか? ルナならもっと強いところも行けたでしょう。」
「ルナはまだ怪我が治っておらん。」
うーん。まだ、動けないのか。
「それにエリーがのう・・・。」
ルスリーの口調から察するに何やら他にも理由がある様子。
「なんだって急にレベル上げなんてしようと思ったんですか?」
「近々のうちに、わしの騎士隊を使えるようにしておきたいのじゃ。少数精鋭と言うやつじゃの。最近、街がなにかと慌ただしくてな。」
「王都で何かあったんですか?」
「おぬし、126って数字を知っておるか?」唐突にルスリーが尋ねてきた。
「さあ。心当たりがないです。」
2の乗数だと128だし。
「王都の民にとってはあたりまえの数字でな。もうすぐ通りかかるからその時に話そう。」
「はあ。」
なんだろ?
「そういえば、これってリコとヤミンには内緒にしないと駄目な話なんですか?」
なんでリコとヤミンを連れてこない?
「うむ。そんなことはないぞ。」ルスリーは答えた。
「じゃあ、なぜ俺だけ?」
「ケーキがひとつ余っとってな。」
「ケーキ?」
「エデルガルナがまだ動けん故、お前を連れてこうと思ったのじゃ。」
「どこにですか?」
「ん? 日本人連合じゃ。お主もメンバーじゃろ?」
え?
あ、エイイチがカリストレムで勧誘してきたあれか!
そう言えばケーキ作ってる日本人がいるとか言ってたような。
「お、ケーゴよ。ちょっと外を見てくれ。」
ルスリーが唐突に窓の外を顎で示した。
窓の外を覗くと三角形のとんがった王城が見えた。
相変わらず、尖端についてる大きな輪っかが落ちてきそうで怖い。
「城の中腹にある数字が見えるか?」
「ああ、世界崩壊時計でしたっけ?」
例の世界観にそぐわないデジタル時計が王城の中腹にデカデカと取りついていた。
相変わらず、俺には小数点以下がはみ出して見える。
「あれが0になると世界が滅ぶとか聞きましたけど。」俺は答える。
「そうじゃ。先月までは126じゃった。」
世界崩壊時計の表記を確認する。
125.0441632*
下一桁がめっちゃカチカチ動いてるんですけど。
「お前の出かけている間に百余年ぶりにあの数字が減ったのじゃ。まだ125ある故、世界が滅ぶには一万年以上の猶予があろうと言うにも、民の心には大きな影響があったようなのじゃ。世界の終わりが近づいてるのが目に見えてしまうのはやはり心に来るものがあるらしい。」
現在進行系でものすごい精神にきてるんですけど。
下一桁、めっちゃ減ってってますよ?
明らかに前回見たときより加速してる。
「あれが125に減ってから犯罪だの、よく分からぬ宗教だのが一気に増えおった。黒羊のこともあるし、わしが頭ごなしに使える手駒を手元に揃えておきたいのじゃ。」
言わないといけないと思って、意を決して口を開く。
「あ、あの、ルスリー殿下?」
「なんじゃ、急に改まって。」
「すごく言いにくいのですが、多分ですけど、あの数字、近日中にもう一つ減りますよ?」




