最強の2レベル
「おう。悪いが、そのクエストはそっちのベテランどもにくれてやってくれ。」
「ルスリー!?」
声の出どころを振り向くとそこには赤毛の女騎士を後ろに従えたルスリーがこともなげに立っていた。
「久しぶりじゃな。邪魔するぞ。」
ルスリーは受付のお姉さんに声をかけた。
「る、る、ルスリー殿下!!」
受付さんが驚愕の表情で膝をついた。
「な、なんだって?」
俺たちと揉めていた冒険者たちも驚いて膝をつく。
「殿下はどうしてこちらへ?」受付さんがオドオドしながらルスリーに問いかける。
「ここ最近の国からの功労点について連絡にな。」
「王女殿下自らですか!?」
「ウルフェイン公爵の代理じゃ。今回、レイド戦が2つあった上に、冒険者の絡む大きめの事件が立て続けに発生したものじゃから、ウルフェインも手が回っとらんのじゃ。」
「何だって王女様がここにきたんだ?」
「レイド戦の報告らしいぞ?」
ホールにいた冒険者たちはざわめきながら、遠巻きにルスリーを見ている。
「これはこれはルスリー殿下!」
カウンターの奥から一人の男が揉み手をしながら出てきた。
「使いの者をよこしていただければこちらから伺いましたのに。」
「おう、久しいのギルマス。」
このおっさんがギルドマスターか。
「今回は色々と込みいっておってな、詳しい人間が説明に来たほうが良いと判断しての。他にも用事があったので直接やってきた。」
そう言うと、ルスリーは後ろに控えていた騎士から書類の束を受け取った。
「まずは、クリムマギカ村で発生したモンスターの大量発生についての報告じゃ。冒険者の協力を得て鎮圧しておる。これがその件についての報告書だ。」そう言ってルスリーは揉み手でヘコヘコしているギルマスに1つ目の書類の束を渡した。
周りで聞き耳を立てている冒険者たちからささやき声が漏れ聞こえてくる。
「マスジェネ・・・?。」
「またか。いつの間に。」
「クリムマギカってどこだ?」
「対処は成功したと・・・軍は出ていないのですか?」ギルマスは書類に目を通してからルスリーに尋ねた。
「第二特務大隊が協力はしたが、メインは冒険者ギルドの構成員じゃ。」
「はあ、組合員が3人。功労点がこんなにですか!?」
「まあ、ほとんどそちらの組合員の手柄じゃったからな。」
「ヤミン、リコ、ケーゴ・・・ケーゴってあのカリストレムのケーゴですか?」
「そうじゃぞ?」
カリストレムのケーゴ?
なんか、俺、二つ名っぽいのついているの?
「次は、北部レイド戦についてじゃ。」そう言って、ルスリーが次の書類をギルマスに渡す。
「北部レイド戦? 北部?」ギルマスが次の書類を確認しながら驚きの声を上げた。
「実は南部のレイド戦とは別に北部にもレイドボスが発生しての。」
「なんですって!?」
周囲がざわつく。
「慌てるな、もう倒されておる。」
「功労者が少ないですね。」薄い書類を見ながらギルドマスターが呟いた。
「突発すぎてダメージ観測無しなのでな。」
「ヤミン、リコ、ケーゴって、同じメンツじゃないですか!」
「そじゃぞ。」
「功労点もこんなに!?」
「コイツラだけで倒したからの。」
「は!? はぁっ!? レイドボスですよ? たった3人で!?」
「無論、騎士が一名、現地協力者も十数名おった。たが、冒険者はそれだけだな。」
「数十人でレイドボスを倒したというのですか!?」
「うそだろ?」
「マスジェネとレイドボス戦を連戦? 何者だ!?」
「カリストレムのケーゴ。やはり出てきたか・・・。」
周りで聞き耳を立てていた冒険者たちのざわめきが大きくなる。
ギルマスは次々と渡される書類をめくりながら目を丸くする。
「クリムマギカ村強襲事件、ケゾーフル村惨殺事件の犯人逮捕・・・これも、カリストレムのケーゴたち!? 」
ざ、惨殺事件!?
なにそれ?
「おい、なんか、すごいことになってるぞ?」
「謎の新人、カリストレムのケーゴがついに来たか。」
「今は北部を基点にしてるんだな。」
冒険者たちがなんか盛り上がっている。
「まあ、当然だよね。」
そう言われて、後ろから肩を叩かれたので振り返ると、ドヤ顔のヤミンがフンスと鼻息を吐きながら満面の笑みを浮かべていた。
自重せいや。恥ずかしくないのか?
リコは真っ赤になってうつむいとるぞ?
「って、クリムマギカとレゾーフルの事件の犯人、ジェイクたちなんですか!? 先日銀等級冒険者になったメンバーですよ?」
ギルマスの驚きの声に周囲の冒険者達がますます騒ぎ立てる。
「A級冒険者のジェイク! そろそろ月間入り間違いないって話じゃなかったか?」
「まじかよ。彼奴等が惨殺犯!?」
「それよりも、ルーキーがA級冒険者パーティーを倒したっていうのか?」
「ライバルもいなくなったし、今後はカリストレムのケーゴたちが十傑入できるかが注目だな。」
「あ、あの・・・カリストレムのケーゴってなんなんですか?」
さっき揉めていた冒険者に恐る恐る尋ねる。
「はん、田舎者の初心者じゃ知らんのも無理ないか。」
「最近、カリストレムってところでマスジェネがあってな、それを生き残った冒険者達が何人か王都にやってきていいて、割といい仕事をしているんだ。」
おお、カリストレムのみんなも王都に来ているのか。
みんな意外と王都で通用するくらいに強かったんだな。
「そいつらの師匠がケーゴっていう冒険者だ。」
え゛?
「あ、あの・・・俺がそのケーゴなんですけど・・・。」
「はぁ?」
冒険者達が呆れた目で俺を見つめた。
「そして、私がヤミン!」
冒険者たちは一瞬ヤミンに目をやってから無視した。
「ウソつけ。お前2レベルじゃねえか。お前がカリストレムのケーゴのハズがない。」
さっきまで揉めてた冒険者が文句をつけてくる。
「そいつがカリストレムのケーゴであっとるぞ。」
ルスリーが口を挟んできた。
「は!? マジ? ほ、本当ですか閣下?」
王女が太鼓判を押したものだから、冒険者たちが畏怖の目で俺を見始めた。
「分かったでしょ? じゃあ、さっきの依頼は私達のってことでいいわよね!」ヤミンがここぞとばかりに言う。
「ちょっ、えっ、いや・・・」
冒険者達が戸惑いながら互いを見合う。
「ちょい待て。獣娘。そのクエストはこいつらに譲ってやれ。わしからお前たちにクエストを依頼したいのじゃ。」
「は?」受付さんとギルマスが驚く。
「俺たちに依頼ですか?」
「そうじゃ。クリムマギカで頼みたいことがあると言ったじゃろ。ちょっと、カリストレムのケーゴの教育力を借りたくてな?」
「きょ、教育力??」
「そうじゃ。リコとヤミンと言ったな。ちょっとの間、ケーゴを借りるぞ。」
ルスリーはそう言って残った書類の束をギルドマスターに渡し、俺の手を引っ張ってギルドの外に引っ張り出した。




