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2レベル脱きゃ・・・

 クリムマギカを後にした俺たちはようやく王都に戻ってきた。


 俺たちだけヘイワーズさんと一緒に王都まで帰宅。

 騎士団とはクリムマギカから別行動になった。

 両手両足を怪我したルナは騎士団と一緒に搬送されたので、ルナともクリムマギカでお別れだった。

 ルナは「時々、遊びに行くの。」なんて、動けないなりに元気に言っていた。心配こそしてないが、ちょっとさみしい。


 昨日王都に到着した俺たちは前回泊まった王都の宿屋で旅の疲れを癒やした。

 前回来た時は宿代はルスリー持ちだったが、今回はもう違う。宿代を見たリコとヤミンが目を皿のようにしていた。

 手持ちのない俺はリコとヤミンに折半で建て替えてもらってる。

 報酬を受け取ったら今までの分も含めて倍返ししよう。


 というわけで、今は一晩明けて朝。

 ようやく冒険者ギルドに行くことができる。


 リコとヤミンは王都の商店街を散策したかったようだが、今回の報酬の額も分からないし受け取ってすらいないのに、高額の宿に泊まり続けるのはちょっとリスキーだから仕事のあたりをつけておこうと説得した。

 二人は口を尖らせていたが、王都じゃ2レベルで受けれる仕事があるか分からない。早めに状況を確認しておきたい。

 

 王都の路面電車をドキドキしながら乗りついで、以前馬車の窓から見た庁舎のような冒険者ギルドにやってきた。


「広い!」

「うえええ、カリストレムの聖堂よりも広い。」

 中に入るや否や、リコとヤミンがギルドの中を見渡しながら感想を述べた。

「人もいっぱいいるねぇ。」リコが感心したように声を漏らした。

 俺的には思ったより人が居ないという感想だったがとりあえず黙っとく。


「あれが依頼書かな? 依頼書もたくさんあるみたい。良かった。」


 リコがホールの側壁一面に掲示板が設置してあるのに気がついて安堵のため息をもらした。

 掲示板には一面に依頼の紙が貼ってある。


 依頼自体は結構ありそうだが・・・


「どれどれ。」

 ヤミンが掲示板に跳ねるように寄っていき、手近な一枚を取って眺めた。

「うえぇ、30レベル推奨か〜。」

「こっちは40レベルだって。」リコも別の依頼書を手に取って残念そうにつぶやく。

「こっちなんか120って書いてあるよ。」

 あ、それ、アルファン終了までクリアされなかったやつだ。

「高レベルの依頼ばっかりだね。」

「さすが王都・・・。」

 リコとヤミンが依頼書を覗き込みながらため息をついた。


 さすがに推奨10レベル以下のクエストはないか・・・。

 今の俺達なら30レベルくらいの実力はあると思うけど、現在ギルドに認めてもらっているレベルが2なので、あんまり高いレベルのクエストは受けさせて貰えないだろう。


「どうしよう、ケーゴ。」リコが困ったように俺を見上げてきた。

「とりあえず、一番低いのを探してみようよ。」


 みんなで掲示板を確認して、一番レベルの低いクエストを探し出す。


 ゴブリン討伐だ。

 報酬も悪くないし、王都からも遠くない。


「15レベルか・・・。」

 ヤミンが不安そうに呟いた。

「ヤミン、弓の基本スキル全部25レベル超えてるんでしょ? だったら問題ないよ。」

「でも、カリストレムでは10レベル以上のクエストって受けたことなかったからちょっと心配。」

「今の実力的には問題ないよ。」

 

 不安そうにしているヤミンとリコを尻目に掲示板からゴブリン退治の依頼を引っ剥がす。

 クエストの推奨レベルが15レベルってことは巣穴があってゴブリンシャーマンかゴブリンロードが居るのは覚悟しておいたほうが良いかな。

 ま、ジャイアント相手にも死ななかったし、レイドボスとも戦えたわけだし、余裕だろう。


 クエストの紙をカウンターに持っていこうとしたところで後ろから声が飛んできた。


「おい、それは俺たちが目をつけてたクエストだぞ!」


「えっ?」

 あまりに身勝手な言いがかりが飛んできたので声の方を振り返る。

「そのクエストだよ。俺たちが先に目をつけてたんだ。」

 いちゃもんをつけてきたのは4人組のちょっとベテラン感のある冒険者パーティーだ。

「いや、目をつけてたもなにも、先に依頼書を取ったのは俺たちですよ?」

「何だ、お前ら? 見ない顔だな。新参が勝手に美味しい仕事を持ってこうとしてるんじゃねえよ。」相手の一人が俺にガンをくれる。

「は? 何言ってるんすか? 基本早いもの勝ちでしょ。私たちが先に剥がしたんだから私達のものでしょ?」ヤミンも参戦。

「あ? ここじゃ被ったら、レベルが高い方が行くのが通例よ。」向こうの仲間も前に出てきた。

「あ?」

「あ?」

 相手の強さは分からないけど、ここで引くのはありえない。

 ぶっちゃけ、15レベルのクエストに必死になるような冒険者に負ける気はしない。


「ちょっと、皆さん。揉め事はなしにして下さい。」

 俺たちがにらみ合いを始めたのに気がついて、受付からお姉さんが飛んできた。

「二組とも冒険者カードはお持ちですよね。」


「おうよ。」

 相手の一人が受付さんにカードを渡す。

 受付さんがカードを受け取ってチェックする。

「20レベルですね。」

「まあな。」

 戦士がどうだ、というように勝ち誇って笑った。


 なに、笑ろてんねん。

 俺ら今、一番難易度の低い仕事を取り合ってるんだぜ?


「そちらは?」

 受付さんにうながされ俺たちもカードを提出する。


「に、2レベル!?」


 俺のカードを見た受付さんが驚いて叫んだ。

 その叫び声にみんなの視線が集まってくる。恥ずい。

 受付さんの驚きの叫びを聞いて冒険者たちが腹を抱えて笑いだした。


「これは15レベルのクエストですよ? 2レベルのいる冒険者パーティーにお任せするわけにはいきません。」受付さんが俺たちを睨みつけた。

「いや、冒険者カードを書き換えている暇がなかっただけで、実際はだいぶスキルが伸びているんです。カードの更新だけでもしたいのですが、他にレベルの低いクエストがなくて。」

「ダメです。クエスト失敗されては困ります。身の丈に合って無いクエストを受けたらみなさんだって命を落とすかもしれないんですよ?」

「ひゃっひゃっひゃ、おのぼりさんとは思ってたけど、これほどの世間知らずだったとはなぁ。

「危ねえ危ねえ、俺たちが気づかなかったら、お前ら死んでっぞ。」

 冒険者たちがわざとらしく腹を抱えて笑う。

「あんたたち、何がそんなにおかしいのよ?」ヤミンがムッとしたようすで言った。

「そりゃ、2レベルがイキってたら笑うだろ。」

「じゃあ、ここで俺たちと勝負してみません? 2レベルの強さ分からせてあげますよ?」俺も相手を挑発する。


 うまく引っ掛けて戦いに持ち込めば、俺達の強さをアピールできるかもしれない。


「はぁ? やんの? 2レベルが?」

「はっはっは。威勢のいいこった。」

 絡んできた冒険者達は余裕で笑っている。

「じゃあ、勝ったほうがこのクエストを受けるってのでどうです?」俺は挑戦的に問いかける。

「ふ。いいぜ。まあ、新人に世間を思い知らせるのも先輩の役目か。」

「手加減はしてやるからよ!」

 よし、相手が乗ってきた。


「ここで、揉めないで下さい!どうしたって2レベルにはこのクエストは出しませんよ。」

 と、受付さんから非情な宣告。


 せっかく、いいところまで巻き込めたのに。


 と、そこに外野から声が飛んできた。


「おう。悪いが、そのクエストはそっちのベテランどもにくれてやってくれ。」


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