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録音データ

 証拠品 VY90

 音声データより抜粋。


「やはり、現行のシステムでは問題があるのですよ。」

「しかし、クライアントがなんと言うか。世界観の大幅変更など認めてもらえるでしょうか?」

「最悪無視すれば良いでしょう?」

「我々はクライアントに対して不義理を行うわけにはいきません。NLCプロジェクトはお客様の人生を扱うのです。信用が第一ですよ。」

「しかしですな。CDーR3はPDーT1を処刑しました。案件としては人殺しに相当します。」

「なんと!」

「R3はPD−K5を利用してPDーJ9、PD−H8も同様に殺害しています。」

「なんだってCDーR3はそんなことを?」

「自分の立場を守るためでしょうな。なんてったってアアルはじきに彼女の国になるのですから。だから、彼女じきじきに都合の悪い転生者を始末したのでしょう。」

「しかし、もともとそのような事情は起こりうることは想定したうえでのNLCプロジェクトだったはずです。『それ』は殺人に当たらないと言う判断だったかと。そもそも、向うの世界でいくら人を殺傷したといえ、取り締まる法律がない。」

「そうですね。それについて我々が声高に叫べば、倫理的にPDは人として扱わなくてはならなくなるのでしょうね。」

「そうするとNLCプロジェクト事態が立ち行かなくなると思いますよ。」

「ですから、この件については我々の内々でことを済まさないといけません。そのためにサーバーのダウンが必要なのです。」

「そんな、乱暴なこと・・・・バレたら大変ですよ?」

「あなたに危ない橋を渡って貰おうとは言いませんよ。サーバダウンについては私の独断で行います。」

「しかし、坂村さん。あなたはハード面へのアクセス権はお持ちでないでしょう?」

「アアル世界内部で意図的に過負荷を起こして、サーバを止めます。」

「は? そんなことができるのですか?」

「先日のR−002試行に際して、一部のサーバ区画での過負停止があったでしょう。」

「確かダメージを累乗する効果のアイテムの同時使用が原因と聞きましたが。」

「あれを意図的に引き起こそうと思います。」

「なんと! しかし、どうやって?」

「内部に協力者がいるのですよ。」

「それこそバレたらただじゃいられませんよ!?」

「しかしですね、中川さん。あなたもデータ管理に携わる身として現状のバカバカしい仕様には頭に来てるでしょう?」

「・・・・。」

「データ総量管理のために適度な脅威をわざわざ送り込まなきゃいけない。そして、失敗すれば責任を問われる。成功したところで評価が上がるわけでもない。」

「坂村さんはそれをどう変えようと?」

「データ総量の管理はクライアントやPD、いわゆる転生者たちに任せるのです。」

「というと?」

「学習型プログラム、いわゆるAPCとクライアントの間に徹底的な対立構造を作るのです。転生者はAPCの敵。それで良いじゃないですか。後はクライアントたちがAPCを狩ってくれるはずです。」

「なるほど。たしかに、それなら我々の管理の仕事も大幅に楽になりそうだ。」

「そもそも、APCとPDに優劣をつけない理由が判らない。誰も傷つけることなく様々な人間のエゴを満たせるというのに。もったいないとしか思えません。」

「それは私も常々思っておりました。それこそがNext Life Creationの真意足るべきですよ。『創造』を冠していながら、なぜ、現世の倫理に引っ張られるのか。現状では単なるゲーム世界の模倣に過ぎない。」

「開発が怠慢なのですよ。こんなのすぐに思いつくべきことなんだ。」

「そのとおり、我々はもっと新しい人生を創造できてしかるべきですとも。」


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