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カムサラ神

 空のような空間。

 あたりにはなんの人工物もない。

 自分が浮かんでいる違和感を払拭するためだけに用意されたと思われる雲のような地面。

 目の前には天使の羽を持った中年の日本男性。


 わざわざそんな羽までつけて神々しさを示そうとするあたり趣味が悪い、と、神の正体がただの日本人だと感づいているユージはつくづく思う。


 翼を持ってユージの目の前に浮かんでいる彼はカムサラ。


 ユージを転生させた『神』を自称する存在だ。

 その実、彼はこの世界を構築したクリエーターであることをユージは確信していたが、カムサラは頑なにそれを認めなかった。


「今、仲間がエルダーチョイスの魔術具を取りに行っている。廃墟から魔術具を全部集めてくれば、本当にこの世界で人間がきちんと尊厳を得られるようになるんだな?」ユージは何度も確認してきた問いをもう一度問いかけた。


「そのことに関連してちょっと状況の訂正が必要になった。」


「なんだとっ?」

 思いもよらない返答が返ってきたのでユージは神に向けて怒鳴った。威嚇と言ってもいい。

 なぜなら彼は目の前のカムサラと言う存在を神だと思っていない。それがたとえ彼を簡単に消去できる存在だとしてもだ。


「クリムマギカは滅んでいない。」カムサラは平然と答えた。

「はぁ!? クリムマギカのイベントは秋までには終わってるって言ってたじゃねえか。」

「いや、それは間違っていない。イベントは終了した。ただ・・・。」

「ただ?」ユージは言いよどんだカムサラを怪訝そうに見た。

「イベントをクリアされた。」

「まじかよ!!」

 ユージは興奮して叫んだ。

「まじウケる! カリストレムに次いで二度目だろ。誰だ? 人間か? やっぱプレーヤーがクリアーしたんだよな?」

「まだ分からん。だが多分そうだろう。」

「久しぶりにワクワクするぜ。何か分かったら詳細を教えろよ。」

「許される限りでな。」

「しかし、ジェイクたちを回収に向かわせちまった。」

「まあ、クリムマギカが滅んでいなくとも、武具自体はあるだろう。」

「うまくやってくれれば良いが。」

「クリムマギカの連中は自分たちの作ったものを褒められると喜ぶ設定になっている。たいした苦労はしまい。」


 ユージは何一つ予言を的中させてこなかったこの神の言葉に嫌な予感を感じて顔をしかめた。


 カリストレムは無くならなかった。

 レイドボスこそ彼の言う通り二体現れたが、北部で暴れまわるはずだったレイドボスはあっさり倒された。

 これなら慌てて護符を回収に行かせることもなかった。


「もう一度聞く、本当にお前の言うとおりに、エルダーチョイスシリーズを集めれば世界は変えられるんだろうな?」


 エルダーチョイスシリーズ。

 剣、槍、そして魔力増加の宝珠。

 これらはいずれも強力な装備であり、併せて使えばこの世界に大きな負荷を与えることができる。


 すくなくとも、ユージはそう説明されていた。


「心配するな。過負荷で世界を一度停止させてしまえば、ルールを改変することは可能だ。この世界の連続性が途切れるし、そうなれば過去との連続性を保つ意味もなくなってしまうからだ。」

「頼むぜ。人とプログラムが等価なんて世界ありえないだろ? ましてやプログラムのくせに人間様に上目線で説教までしてくる奴までいるのが腹が立つ。」

「そうだな。本来お前の意見こそ当然のニーズだ。」カムサラは言った。「私の他の愚かな神々が至らなかったせいだ。」


 お前も至ってねえよ、とユージは心のなかで呟いた。


「俺が世界をバグらせたとして、お前は他の神に邪魔されずに世界を変えれるんだろうな?」

「まあ、だいたいはな。」

「おいおいおい、断言してくれよ? あんたもいろいろ苦労してるのかも知らねえが、こっちだってそれなりにリスクを払ってんだ。」

「この世界には一人だけクライアントがいてな。そいつが邪魔だ。現行の世界がここまで愚直にアアルファンタジーをなぞっているのもそいつの意向が強い。」

「おいおい、クライアントってなんだよ? もしかして、こっちに来た転生者に神に意見できるほどの権限のある奴がいるってのか?」

「言ってしまえば『客』だ。つまり、我々にとっての『神』だな。この世界の構築には彼女の資金も多分に活用されてなされている。」

「そいつが反対するかもしれないと?」

「わからん。ただ、我々は彼女の意見も尊重せねばならない。」カムサラは口を濁した。

「面白くねえな。不安しかねえ。」ユージは爪を噛んだ。

「どのみちこのままではこの世界は消滅するのだ。お前が勇者となって世界を変えてくれ。この世界にはAIがはびこりすぎている。」

「まあ、いいぜ。人間然としているプログラム共がうざいと思うのは俺もいっしょだ。」


 ユージはニヤリと笑った。

 ユージにとって世界の改変なんてそこまで望んでいることではなかった。

 彼はただ、人がプログラムの顔色をうかがいながら生きなくちゃならないこの世界にムカついているだけだった。


「俺がこの世界を作り変えて、道具は道具らしくってのを思い知らせてやるよ。」


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