タイターン4
「ケーゴ! タイターン4を使え!」
突然、扉の向うから叫び声が響いた。
「 お前の命令を聞くようにも作ってある。」
この声は・・・ 親方?
ゴーレムづくりの時に俺が師事していた親方の声だ。
「そこにタイターン4があるはずだ!」
その声にあたりを見渡すと、俺のことを見下ろすようにタイターン4が立っていた。
電源が入っている。
もしかして、さっきのルナの魔法はタイターン4の魔力を込めるために撃ったのか。
「なんだ? 扉の中から何かするつもりか?」
冒険者たちが突然の声に扉の方に注意を向けた。
「あ、あのデブを叩き潰せ・・・タイターン4!」
絞り出すように叫ぶ。
叫びにならない程の小さな声だった。
それでも、タイターン4は動き出す。
「ヘイトっ!逆だ!後ろだ!」
タイターン4の起動に気がついた栗毛が魔法使いに向けて叫んだ。
ルナの上にまたがったまま、扉の方を警戒していた魔法使いは仲間の声にゆっくりと背後を振り返った。
その瞬間。
タイターン4の張り手がルナの上の魔法使いを巨大な手で壁に叩きつけた。
ジャイアントの力さえ上回る力のゴーレムのパンチが魔法使いを襲う。
無防備だった魔法使いは壁に叩きつけられ、血まみれになって地面にぐにゃりと崩れ落ちた。
「ヘイトっ!」
「こいつ、なんで急に動き出した!?」
栗毛と大男が慌ててタイターン4に向けて武器を構えた。
「・・・タイターン4、ルナを守れ!」
俺はタイターン4に再び命令する。
体の感覚はだいぶ戻ってきたものの、縛られているので動けない。
タイターン4だけが頼りだ。
タイターン4が左右に腕を振るって冒険者達を薙ぎ払らおうとする。
タイターン4の大雑把な攻撃では冒険者たちには当たらない。
だが、敵もルナにも近寄れない。
「扉が開いたぞ! 続けっ!!」
途端に扉が開いてエルフとドワーフがなだれ込んできた。
「しまった!」
「ちくしょう。」
冒険者たちが悪態をつく。
ドワーフたちがリコとルナを確保する。
俺のもとにもドワーフたちが走ってきて縄をほどき始めた。
ヤミンにも何人か向かっている。
さらにドワーフたちが俺たちと敵の間にバリケードを築くかのように並んだ。
その後ろに、フーディニアスと何人ものエルフが現れ、腕を突き出して魔法を唱え始めた。
「【エネルギーアロー】」
「【ファイアーボール】」
「【サンダーボルト】」
エルフたちから様々な魔法が放たれ、冒険者たちに飛んでいく。
だが、魔法はどれも冒険者達に届く前にかき消えた。
「危ねえ! 間に合った。」
栗毛の冒険者が何かを握りしめている。
魔法無効化の護符か!
タイターン4も動きを止めてしまった。
「やってくれたな!」栗毛の冒険者が怒声をあげた。「AIごときが人間に盾突きやがって!!」
栗毛が持っていた剣の先をドワーフたちに向けた。
「ゴーレムも止まった。こっちの魔法使いも死んだ。お互いに魔術は無しだ。」
大男も大槌を構えた。
「騎士隊長様はもう動けねえ。魔法も使えねえ。人数が多いからって雑魚が俺たちに勝てると思うなよ?」
栗毛は俺たちを睨みつけてニヤリと笑った。
「さあ、最後の戦いと行こうぜ?」




