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それはモンスターとさして変わらない存在

「なんなんだよ、この街は!!」

 エルフの食堂から入り口ホールのあたりまで戻ってきてもジェイクの文句は止まらない。


「やけに甘かったな。一口に対して水が2リットルくらい必要だ。」

「どうやったら砂糖より甘いもんが作れるんだよ・・・。」

「水があったのがせめてもの救いだったな。」

「ほ、他に食堂は、無いって。ど、どうしよう。」ヘイトが青くなってジェイクとタイチを交互に見つめた。

「食堂はなくても、食料品自体は売ってるだろうから、そこで何かしら買って食うしか無いな。」タイチは答えた。

「えー。あ、温かいの食べたい」

「黙れブタ!」ジェイクは大声でヘイトへと苛立ちをぶつけた。

「それが嫌なら、あのハムを我慢して食うしかないぞ。」

「誰かに商店の場所を訊こう。」

 

 ちょうどタイチがそう提案したところに、一人のドワーフが通りかかった。


「ちょっと、そこのドワーフさん。すみません。ここらへんに人間の食べれるような食べ物を売っているような商店をご存知ないですかね?」

 ジェイクは営業スマイルで近づいていく。しかし、その笑顔はもはや完全に張り付いていた。眉に至ってはまったく笑っていない。

「それなら食堂があっちとこっちに・・・

「いや、食堂じゃなくて、食べ物を扱っている商店を探しているんです。」ジェイクはドワーフの返事を遮って質問を重ねた。

「商店? 店などこの街には無いぞ。」

「えっ?」予想外の返事にジェイクから素直に驚きの声が漏れた。

「食料や衣料品は、皆さんどうしてるんですか?」

「ん? 服は服飾の技術者からもらっとるし、食事は食堂で取れるしの。甘いのが好きならエルフの・・・

「そこはいいんです。携帯食料とかはどうしてるんですか。」

「携帯食が欲しいのか?」ドワーフは尋ねた。

「はい、ぜひ携帯食料を手に入れたいのですが。」ようやく話が通じた様子なので、ジェイクはほっと胸をなでおろす。

「おお、それで良ければワシの作った携帯食を試してみるか?」

「あのハムを食べるくらいなら。とりあえず見せてもらいたいですね。どこに行けば良いですか?」

「持っとる。」

 ドワーフはそう言ってポケットから、何かの入った小袋を取り出した。


「トリネン謹製のスーパーミーツじゃ。」


 ドワーフがポケットから無造作に食べ物を取り出したものだからジェイクの表情がヒクリと歪む。

「いや、ちょっとそれは・・・大丈夫なんですか、それ? っておい、ヘイトいきなり口に入れてんじゃねえ!」

 ヘイトはドワーフの手から袋を貰って開けると、中に入っていた黒い丸い塊を一つ口に入れた。


「おい! 大丈夫かよ?」

 ドワーフの取り出した怪しげな食べ物を口に入れて固まってしまったヘイトの反応をジェイクとタイチが息を飲んで待つ。


「なにこれ! 超美味い!!」


 ヘイトはそういうと再び袋の中に手を突っ込んだ。


「そうじゃろう、そうじゃろう、旨さを追求した。しかも腹持ち最高にしてある。これひとつで3日は飯が要らない。最強の携帯食じゃ! 徹夜の研究のお供に最適!」


「ひとつで3日分の食料だって? ヘイトひとつよこせ。」ジェイクがヘイトの手から袋を奪い取る。

「俺にもひとつくれ。」

 ジェイクとタイチが袋から取り出した黒い丸い塊を心配そうに眺める。

「た、食べないんなら返してよ。」

 ヘイトはそう言ってジェイクから怪しげな食べ物の入った袋を取り返し中身をもう一つ取り出して美味しそうに食べ始めた。

 ご機嫌で謎の塊を頬張っているヘイトを見て、ジェイクとタイチも思い切って黒い塊を口に放り込む。

「うめええ!」

「何だこれは。グルタミン酸とイノシン酸にあふれているのに塩っぱくない。どこか懐かしいようなほんのりとした香りと甘みが・・・

「食レポすんじゃねぇ! ヘイト! もう一つくれ。」


 ジェイクはヘイトから袋をひったくると中身を一つ取り出して口に入れた。

 タイチもあとに続く。


「あはは、無くなっちゃった。」

 空になった袋をヘイトがひらひらと振った。

「ふははははは! 良いぞ良いぞ! また作ってやろう。味のリクエストも聞くぞ!」ドワーフが満足そうに笑った。


 だが、ここに来てタイチが異変に気がついた。


「おい、何かフラフラする。」


 タイチの言葉にジェイクも平衡感覚が少し怪しくなっていて、頭もぼっとしてきていることに気がついた。


「てめえ! 毒を盛りやがったな!」

「さては、今まではみんなで俺たちのことを泳がせていたかっ!」タイチが背中の大槌を抜いて身構えた。


「泳ぐ? 酒に酔っただけじゃろ。」ドワーフが呆れたように答えた。


「は!? 酒だぁ?」

「酒の成分が入っているのか?」


「そりゃそうじゃろ。酒のない食事などに意味あるかい。結構ちゃんと酔っぱらえるぞ。」

 

「まじかよ・・・」ジェイクが頭を抱えた。

「くそう。割と回ってきた。」タイチは背中から抜いた大槌を杖にして寄りかかった。

「うひ、えへへへへ!」

 ヘイトが奇声を上げて笑う。

「こいつ、結構食ってたからな・・・。」

「完全に酔っ払ってやがる。」

「あれまあ。」ドワーフが呆れたように言った。

「酒が入ってるんなら先に言えよ!」ジェイクは苛立ちに任せて、ドワーフを怒鳴りつけた。

「そんな大した酒の量じゃないぞ。ひとつあたり、せいぜい3升くらいだ。」

「充分だろ!」

「なんじゃ、3人とも酒に弱いんじゃな。」


 ドワーフがそう言って肩をすくめた瞬間、ヘイトが拳で思いっきり彼の後頭部をぶっ飛ばした。

 

「ふひひのひ、早く武器をの場所を教えろ! でないと女の子エロいことできない。ひひひひひ!」


 油断しているところを突然殴られたドワーフは地面に倒れ伏してピクリとも動かない。


「あーあ。やりやがった。」

「完全に酔ってやがる。」

 ジェイクとタイチが呆れて声を上げる。

「ごめん、ごめん。殴れば話すかなと思ったんだけど。ひひ。ちょっと強すぎちゃった!あはは!」


 ヘイトは地面のドワーフを足で蹴ってゴロンと転がした。

 白目を向いたドワーフが天を向く。


「だめだ。動かないや。ひひ。」

「お前、酔ってる方がハキハキ喋れんじゃねえか。」

「死んだか?」タイチはドワーフを覗き込んだ。

「さぁ? そうじゃね?」

 ジェイクは興味なさそうに言うとだるい頭をストレッチするかのように首を回してから、二人を見て言った。


「もう、めんどくさくなってきた。一人ノシちまったし、これからは物理的にいくか。」


「そうだな。」タイチはようやくジェイクが腹を括ったことに満足して頷いた。「こいつらこの世界のオリジナルNPCっぽいしな。ここがアルファンなら、居なくたって別に差し障りの無い連中だ。」

「女の子っ! 女の子っ! エルフの女の子!」ヘイトが嬉しそうに跳ね回る。

「ケゾーフルと違って、強いやつがいるかもしれん。洞窟だからよく分からんが規模も大きそうだから村人も多いかもしれない。気をつけておいたほうが良さそうだな。」タイチが慎重を促した。

「そうだな。情報を吐きそうなやつが出てくるまで、一人ずつシメていくことにしよう。」

「ごーもん! ごーもん! エルフの女の子をごーもん!」

「ちょうどダンジョンみたいだし、モンスター狩りみたいなもんだ。」

「楽しくなりそうだ。」ジェイクはニヤリと笑って言った。「ひと狩行こうか!」


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