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ケルダモの勇者

 ドヴァーズが職務放棄の疑いでエルスレイブで拘束されてから4日後、レンブラントは馬を駆って自分の部隊と別れ一人ケルダモにやってきていた。


 他の兵士たちは南部のレイドボス戦の決着がまだついていないので南にとんぼ返りすることとなった。まったくの無駄足だった。

 おそらく、南部に彼らがつく頃には南部のレイドボス戦も終わっているだろうとレンブラントは予測している。

 そういったわけで、彼は南部のことは部下に任せて、エデルガルナが僅かな兵でレイドボスを倒したというのが本当かを確認するためケルダモまで赴いて来たのであった。

 やけに饒舌だったドヴァーズも信用ならなかったが、それ以上にエデルガルナがたった20余名でレイドボスを倒したという事実のほうがよほど彼には信じられなかった。


「信じられん。」


 街の中央広場に立てられた櫓上には、レイドボスからしか取れない巨大な魔石が飾られていた。 

 街の広場はその魔石を取り囲んで祭りのような大騒ぎだった。


 広場に飾られたレイドボスから回収されたと思われるトリプルS級の魔石を見たレンブラントはエデルガルナからの連絡が本当であったと納得をせざるをえなかった。


 レンブラントはまず市庁舎へと向かおうとしたが、この街の市長や貴族たちがこぞって街を捨てエルスレイブに逃亡している事を思い出して止めた。

 仕方なく彼は、街人から情報を集めることにする。

 通行も気にせず広場のあちこちに置かれたテーブルのひとつに盛り上がっている一団に話を聞こうと近寄って、レンブラントは驚いた。


 そこでは何故かハルピエが街の人達と飲み交わしていた。


「失礼。今、この街についたばかりなのだが、少し話をうかがいたい。」レンブラントはテーブルで盛り上がっていたひとりの街人に声をかけた。

「なんでしょうか、騎士様。」

「この街にレイドボスが向かっていると聞いていたのだが、どうなったのだ?」

「そこのハルピエの旦那がやっつけてくれたんでさ。」

 村人が同卓のハルピエを紹介する。

 ハルピエの戦士はムスッとしたままの顔でレンブラントを睨みつけた。

「なるほどハルピエか。」

 報告にはハルピエの軍隊が数に入っていなかったに違いない、と、レンブラントは納得した。

「あなた達の軍隊がエデルガルナたちに協力してくれたのか。礼を言う。」レンブラントはハルピエに頭を下げた。「後に王国からも正式に御礼と何かしらの褒美を進呈させていただく。」

「困った時はお互い様だ。だが、この街の騎士団は我々の村にあの怪物を押し付けようと画策した。その件について正当な裁きも要求したい。」

「承知した。とりあえずは、この国を代表して謝罪する。大変申し訳なかった。」そう言ってレンブラントは頭を下げた。「彼らにはきつく仕置きすることを約束しよう。」

「飲むか?」ハルピエの戦士がレンブラントにグラスを差し出した。

「いただこう。」


 さっきまでハルピエの戦士ピネスにからんでいた街人たちは、突然の上流階級の人間の乱入に怯えるように席を譲った。

 レンブラントは酒を注文すると、譲ってもらった席に礼も言わずに座る。


「私はレンブラントだ。」

「私はピネス。ハルピエ族の代表だ。」

「この短期間にレイドボスを仕留めた事は驚嘆に値する。ケルダモのためにわざわざ軍隊を投入してくれたのか?」

「恥ずかしながら、加勢できたのはたったの16名だ。戦いに出られるものがそれしかいなかった。」

「なんだって!? 16人で倒したというのか!?」

「いや、他にも人間が5人がいた。」


 それでは、エデルガルナと20余名でレイドボスを倒したというのはホントだったのかと、レンブラントは驚く。

 新種のレイドボスは弱かったのだろうかと彼は一瞬訝しんだ。

 だが、敵は北方国境守護隊の数百名をもいとも簡単に蹴散らした化け物であり、ダメージすら与えられなかったとドヴァーズが報告している。

 弱い敵だったはずがない。


「驚きだ。20名でレイドボスを討伐とは。お前たちはきっと皆強いのだな。」

「いや、我々はオーバーモースに一切太刀打ちができなかった。」ピネスは謙虚に首を振った。

「オーバーモース?」聞き慣れない言葉にレンブラントが小首をかしげる。「お前たちの戦ったレイドボスのことか?」

「そうらしい。我々だけで挑んだ時は60名以上居たのに半分が死んだ。ダメージもまともに与えられなかった。」

「そうなのか? だが、結局は倒すことができたのだろう?」

「人間たちが作戦を立て、そのとおりに仕留めた。オーバーモースを倒したのもその人間だ。我々はただサポートしただけにすぎない。」

「なんと! まさか、エデルガルナはそれほどまでに強いというのか!?」

 レンブラントは驚きのあまり立ち上がった。

 エデルガルナに追いつこうと努力してきたはずが、まさか、差を開かれていたのかと彼は愕然とした。

 彼をして自分より強いと明確に言えるのは、エデルガルナと、王国には属さない正体不明の自由騎士アルソンフくらいだ。

 今やエデルガルナは名実共に最強の騎士となるかもしれない。


「エデルガルナ? 良くわからないが、あの化け物を倒したのはケーゴと言う少年だ。」

「ケーゴ?」

 突然の耳慣れない名前にレンブラントは戸惑う。

「何者だ、そいつは。」

「冒険者だと名乗っていた。」

「冒険者か! そいつは今どこにいる。是非とも話がしたい。」

 エデルガルナよりも強いという冒険者の出現にレンブラントの心が躍る。

「残念ながら彼はこの街には居ない。」

 ピネスは彼自身もとても残念だとでも言うように答えた。


「彼らは今朝がた、街を飛び出していってしまった。なんでもクリムマギカとかいう街で何かがあったらしい。」


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