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北部レイド戦の終わり

 馬を走らせ8日間、ドヴァーズは貴族たちとケルダモ南東部にあるエルスレイブという街へと到着した。


 とりあえずのところは一息ついたドヴァーズだが、ここだっていつまで安全かは分からない。

 ただ、今の所はケルダモの難民もオーバーモースとかいうレイドボスも追いついてくる気配はない。


「私は北方国境守護隊隊長のドヴァーズだ。」ドヴァーズはエルスレイブの門番に声をかけた。「ケルダモが落ちた。至急、この街の責任者と話がしたい。」

 彼はこの街の市長や貴族たちと合流して今後の作戦を立てるつもりだ。

 早々に各方面に根回しをしておいたほうが良いと彼は考えていた。

「はっ。」門番がドヴァーズに敬礼する。「しかしながら、現在、市長と衛士長は王都からの来客と面談中ゆえ、しばしお待ちください。」

「王都から誰か来ているのか!?」ドヴァーズが驚いて訊ねる。

「北部、レイドボスの討伐隊隊長と面談中です。」

「援軍が到着しているのか!」

「はっ。さきほど到着し、街の南側に駐屯してございます。その数1000。」

 何故、オーバーモースのいる北側ではなく南側なのだろうという疑問が一瞬頭をよぎったが、ドヴァーズはそんな些細な疑問を気にしている余裕は無かった。

「面談会場に案内しろ!」

「しかし・・・。」

「これは北方国境守護隊隊長の命だ。貴様の上官の命令よりも重いものと知れ。」

「はっ!」

 ドヴァーズの剣幕に門番は慌てて敬礼をした。


 ドヴァーズはケルダモから連れてきた貴族や騎士たちと別れ、門番に案内されて市庁舎の一室までやってきた。

 門番が扉をノックすると、中から「何用だ?」との声が聞こえてきた。


「北方国境守護隊隊長ドヴァーズ。ケルダモより現状を伝えるべく急ぎ馳せ参じました。」ドヴァーズは扉の内側に向けて大声で声をかけた。

「入れ。」

 中から声が聞こえてきたため、ドヴァーズをここまで連れてきた門番が彼のために扉を開けた。


 扉の向こうには、貴族や市長たち、そして、立派な甲冑を身にまとった金髪の騎士が居た。

 第一騎士大隊隊長のレンブラントだ。

 彼も王国から紫輝幻刀を授かっている数少ない騎士の一人だ。


「ケルダモが落ちました。」ドヴァーズは開口一番に報告する。

「え!?」会議に集まっていた面々が信じられないという顔でドヴァーズを見て固まった。


「エデルガルナ様が戦えるとのご判断をなさいまして、街の外へと討伐に討って出たものの、エデルガルナ様は戦死、われわれも大打撃を受けて兵を失い、一部の重要人物を救出するので精一杯にございました。」ドヴァーズは一気にまくし立てる。「街の人々を助け出す余裕もなく・・・」

「しかしだな、ドヴァーズよ・・・」レンブラントが矢継ぎ早の報告を遮るようにドヴァーズに声をかけた。

 しかし、ドヴァーズは彼に言葉を続けさせるのを拒むかのように説明を続けた。

「いえ、もちろん、もちろん、元はと言えばわたくしの判断がを違えたことが問題にございます。我々は突然現れた新種のボスの力量を完全に見誤りました。エデルガルナ様がいれば、なんとかなるものと信じてしまいました。」

「落ち着かれよ。ドヴァーズどの。」

「これが、落ち着いてなどいられましょうか。わたくしの努力も虚しく、ケルダモの街に多大なる被害を及ぼしてしまったのです。わたくしが立場などわきまえずに、エデルガルナ様の愚行をお諌めしなくてはならなかったのです。」ドヴァーズは悔しがっている風を装って言い切った。

「ドヴァーズ・・・。」騎士団長は困ったようにドヴァーズの肩に手をおいた。

「エデルガルナ様の蛮勇に惑わされてしまい、申し訳ございません・・・。」


 ここにきてドヴァーズは言葉を放ちつづけるのはやめた。

 あんまり自らを貶めるのもまずいという判断によるものだ。

 悲壮な表情を作ってうなだれるドヴァーズに向けてレンブラントは告げた。


「ケルダモの街は無事だし、エデルガルナも無事だ。今朝、たった20名の協力者と共にオーバーモースを討伐することに成功したそうだ。エデルガルナの使い魔から連絡があった。感知器でも討伐を確認済みだ。」


「な!? なんですって!?」ドヴァーズは突然の予想もしていなかった言葉に目玉を飛び出さんばかりにして叫んだ。


「そんな馬鹿なっ!? いや、だって、」

「私には貴殿がさっきから何を言っておられるのか理解ができない。」レンブラントはドヴァーズの肩に置いた手に力を込めた。「ケルダモが落ちたと言う件について、もっと詳しく話を聞かせていただこうか。」


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