5S(5万分の魔石の仕分け)
さて、職場改革の出だしは上々だ。
が、この先超えなくてはならない問題が3つある。
まず、一つ目は昇給の問題。
スージーは全体を包括しての利益しか計算していない。投資もしない。しないというか、リスクを負わない。
投資した結果どうなるかを彼女が判断できないからだ。なので、彼女は必ず帰ってくる投資しかしない。
チャレンジが無いとは思うが、それ自体は悪いとは限らない。無茶な投資をして社員に鞭打って回収をしようとしない分、俺にとっては良い職場だ。
ただ、安定を求めるならそれでよいのだが、俺は借金を返すために自分の給料をあ上げねばならない。
今回、スージーは魔石の余分な出荷分を減らせたことで『儲けが出せると分かったから』、俺の給料を上げてくれると言った。
つまり、俺は昇給のためにスージーが儲けられるシステムを見つけなくちゃいけない。
二つ目の問題はカムカだ。
カムカが俺のことを腹の中では良く思ってないことがひしひしと伝わってくる。
カムカとトラブルを起こすのは良くない。
トラブルを起こして俺が減給されるのももちろん避けたいが、それ以上に、これまでこの店で働いてきたカムカが俺より使えないとなってしまうのが良くない。
なにせ、俺はこの店を出たい。そして俺の仕事をカムカに押し付けたい。
もしかしたら、カムカにもっと嫌われて店から追放されたほうが異世界転生的には正しいのかもしれないが、スージーが簡単に俺を損切りするとは思えない。
それに俺はブラック企業で働く仲間を見捨てたりはしない。
約束を果たして、ついでに職場改革もして円満退社してやる。
三つ目の問題は俺が忙しすぎる事。
戦いの訓練ができん・・・。
なんで転生して前世よりも時間無くなっとるねん。
転生って普通楽になるもんじゃないのか?
とっとと働き方改革を終えて、転生人生を進みたい。
というわけで、夜中。
バックヤードの掃除をこなすついでにさらなる業務効率化を勝手に推進中。
やっているのは魔石の仕分けだ。
魔石は、どれも0.5~3センチくらいの宝石のような石だ。割と軽い。
だいたい、大きさに合わせて、1~30くらいの魔導力が入ってる。
ところが、たまに3センチくらいの大きさなのに1個で3000とか、やけに魔導力の高い魔石が混じっていることがある。
店のシャベルひとすくいでだいたい1000なのに、この手の魔石が入っていると一気に魔導力計の表示が動いてしまって邪魔なのだ。
この大量の魔導力を持った魔石を探して除いておく。
そうすると、受付時間中の計測が楽になる。
今日はバックヤードの掃除のついでに、新しく納品された魔石について仕分けを済ませてしまうつもりだ。
別スージーやカムカに言われたわけではなくて、自らの意志での業務改善。
社畜根性と思うかもしれないが、これが俺の忙しい人生を変えてくれるはずだ。・・・そう信じたい。
魔石の納品は樽でされ、一個あたりざっくり50000分の魔導力相当の魔力が詰まっている。
それが150タル。
合計600万魔導力分が納入されている。
魔石一個平均15として、40万個の魔石を仕分けしなくちゃいけない
わけではない。
納品された魔石の樽には内容証明の札が貼ってあって、『魔導力量5』って書いてある。
これは『魔導力5万』分の魔石が入ってるって品質保証している数字らしい。
5万から中身を少し出すとちゃんと減る魔法の表示だ。
この表示が【ゼロコンマ】のおかげで、5.00244673とか見えてたりする。
完全にシールの外まで表示が出てる。
どうなっとんねん俺の目。
で、俺はここ数日、魔石計りばっかやってて気がついた。
この数値が5.40790777とかになっている樽が時々ある。
150樽中12樽がそんな感じで5.2を超えている。
こんな感じの数字が5.0を大きく超えている樽には、やけに魔力の高い魔石が入っているのだ。
多分、メーカーは魔石を重さか容積で計っていて、その後に内容証明の札を貼ってるんだろう。
そのほうが速そうだし。
それでも12樽の魔石を調べにゃならんわけだが、一個一個調べる必要はない。
とりあえず、シャベルでひとすくいして、それが1000にならない奴を探せばOKだ。
ならないひとすくいがあったら、それを半部にして多いほう、多いほうと探していけば良い。
もっと効率的な方法があるかもしれないが、今はこんくらいでいいだろ。
ついでに1の魔石もより分けておく。
別に取り除きたいんじゃなくて、端数を合わせるのに便利なのだ。
安さの殿堂にあるあれだ。
と言うわけで、頑張って魔石をより分けるぞ!
・・・また業務が増えている件。




