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出発

 というわけでいざ出発だ。


 ドワーフやエルフが俺たちを見送りに入り口ホールまで集まってきてくれた。

 半壊した入り口ホールでは入りきらずに、階段の欄干から見てる人たちも大勢いる。

 自分の研究以外に興味のない彼らがこんなに見送りに来てくれたのがとても嬉しいと思うとともに、テキコロース作る時にはなんで自主的に集まってくれなかったのかとちと歯がゆい。


「みんな、色々ありがとうな。」ディグドが出てきて背を差し伸べた。「お前たちが来てくれて本当に良かった。」

 彼の後ろにはテキコロースの制作に協力してくれたドワーフたちが並んでいる。

「貴君らも協力感謝する。」エデルガルナさん状態のルナがディグドの手を握った。「みな、王都に参られた時は連絡をくれ。酒でも酌み交わそう。」

「え゛? そ、そうっすね。」ディグドがキョドる。


 本当にあなた飲み会で何したん?


「君たちとの仕事は楽しかった。また何か作りに来てくれ。」

 今度はフーディニアスが出てきた。

「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします。」リコがフーディニアスと握手する。

「ああ、また仕様をくれ。」


 それな。

 ちょっとは発想の方にも頭回そうぜ。


「冒険者なんて辞めてゴーレムを作れ、ゴーレムを。」

 タイターン4の肩にちょこんと座った親方が俺に話しかけてきた。

「冒険者で食えなくなったら考えますよ。」

「そうか! 約束だからな。待ってるぞ!」

 親方は嬉しそうにニッコリと笑った。


「ワシの武器を頼むぞ。ここを守ったみたいにケルダモや他のところも頼んだぞ。」

 今度はエルダーチョイスが出てきた。

「任せてください。この武器でレイドボスをギャフンと言わせてやりますよ。」

「HOOOO! 頼むぞ! ちょー頼むぞ!」テンションの高いエルダーチョイス。

「ケーゴ、あの人に何か武器作って貰ったの?」リコが訊ねた

「うん。魔法の鞭を貰ったんだ。ロックジャイアント倒す時にも使ってたよ。」

「いいなぁ。」リコが羨ましがる。

「今度、嬢ちゃんにも作ってやろう。町を救ってくれた英雄だしな。」と、エルダーチョイス。

「私も! 私も!」ヤミンが手をあげて身を乗り出してくる。

「ヤミン、無限に矢の出てくる弓貰ってなかったっけ?」

「いいじゃん! 私も強い武器欲しいもん。」

「弓の嬢ちゃんにも何か用意しといてやるよ。」エルダーチョイスが苦笑いしながら言った。


「みんなありがとうね。凄いの撃ててちょースカッとしたよ!」最期にメルローが出てきて嬉しそうに言った。

「メルローも元気でね。色々ありがとう。」ヤミンがメルローの手を握る。

「メルローが居てくれて本当に助かった。」俺もメルローと握手する。

 メルローがテキコロースを作れなかったら本当にどうなっていたことか。

「ほんとなの。」ルナも同意する。

「そんな事言われると照れちゃうなぁ。」メルローが笑いながら頭を掻く。

「なに舞い上がってるんじゃい。助けて貰ったのはこっちじゃろが!」エルダーチョイスがメルローの頭をひっぱたく。

「痛いな! 何だよ。だったらお前も私にありがとうって言うべきだろ!」

「死んでも嫌じゃ!」

「バーカ。」

「バーカ。」


 この二人は相変わらず子供みたいだ。


「それじゃ、俺たちは行きます。」

 ずっとつきあってもいられないので、馬車に乗り込む。

「気をつけていけよ。」

 ディグドが手を降った。

 メルローとエルダーチョイスも言い合いを止めて手を振ってきた。

「じゃあ、お元気で!」

「またねー!」

 みんなで窓から手を降る。

 親方やエルダーチョイスも、協力してくれたドワーフやエルフも、そうでない人たちも、みんなが手を振ってくる。


 彼らを守れて本当によかったと思う。

 きっと、彼らは幸せな研究づけの日々をこれからも続けて行くんだろう。

 そうだったら嬉しいな。


「ヘイワーズ、行ってくれ。」エデルガルナさんが御者との通話用の小窓を開けてヘイワーズさんに声をかけた。

 馬車がゆっくりと進み出した。

 クリムマギカのみんなの姿がゆっくりと後ろに流れてい・・・


「のおおおおおっ!!」

「「きゃああああああぁ!」」


 突然の急激な落下感。

 完全な不意打ちに両足の間の袋がぱっさぱさに縮み上がる。

 まさにジェットコースターの頂上からのアレ。


「止めて〜!」

「ムリムリムリムリ!」


 リコとヤミンが絶叫しながら馬車の壁に張り付いている。

 俺は絶叫すらできずに、隣りに座っていたエデルガルナさんの腕にしがみつく。

「心配するな。クリムマギカの民とヘイワーズを信じよう。」エデルガルナさんは平然と言った。


 これほんと中身ルナなんだよな?

 【コスプレ】のスキルの効果なの?

 それともやせ我慢なの?


「お願いぃ! スピード! スピード落としてぇ〜!!」リコが絶叫する。

「すごい! 凄いぞ! カルトス! バルトス!」外からヘイワーズのさんの嬉しそうな声が聞こえてくる。「どんどん行けぇ!!」

 リコの絶叫は彼にも聞こえてるはずなんだけど。

「お願いぃ〜。」


 リコの絶叫を乗せて馬車はあっという間にトンネルを駆け抜けた。

 視界がひらけ明るくなる。


 トンネルを抜け、下り坂は終わったはずなのに馬車のスピードは落ちない。

 窓の外を景色が猛スピードで流れる。木が窓の向うを通過する度に、新幹線がすれ違ってる時のような音と振動が伝わってくる。

 てか、馬の鼻息っぽいのが馬車の中まで聞こえてくる。

 あのドワーフ、絶対やばい薬打ったろ、これ!


 馬車は蛇行を繰り返しながら木々の間を駆け抜けて行く。

 馬車が大きく跳ねるたびに、馬車の下から車輪の軋む音が聞こえてくる。

 リコとヤミンは二人抱き合って、悲鳴を上げながら小さくなっている。


 俺は御者との会話用の窓を開いてヘイワーズさんに叫ぶ。

「ヘイワーズさん! もうスピード落としましょう。もう坂は終わりましたよ。これから森を抜けるんだから危ないですって。」

「おう! ケーゴさん! しっかり捕まってな! 今日は馬が風になりたいって言ってんだ! ちっ! じゃまだそこの岩っ!」

「へ、ヘイワーズさん?」


 性格変わってるやんけ!

 自動車の性能に合わせて性格が横柄になるタイプのドライバーかよ!


「任せな! この馬車とこの俺のドラテクであっという間にケルダモまで届けてやるぜ!」


 ちくしょう、あのドワーフ、まさか、ヘイワーズさんにも変な薬打ったんじゃないよな?


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