ドーピング
早くも5日後の朝、トンネルが完成した。
入り口ホールの奥の方の壁から下の方に向けて結構な下り坂で下の方に続いている。
トンネルの両脇に備えられた松明の灯りで、トンネルがはるか先までまっすぐ続いている事が分かる。
「山脈の向こう側まで続いておる。出口はケルダモ側の平地の端じゃ。街道にはすぐに出れるだろう。」ディグドが得意そうにトンネルについて説明した。
ディグドの目の下のくまがすごい。どうやら俺たちのために徹夜で工事を進めていてくれたようだ。
嬉しいけど、生前のブラックな職場思い出す。
俺たち四人は出来上がったトンネルの先を見下ろした。
トンネルは両サイドに例の魔法の松明が取り付けられ、明るく、はるかずっと先までまっすぐ伸びているのが見て取れた。
「坂きつくないですか?」
「馬車で降りられるかな?」
トンネルの角度がエグい。
馬車の客車だけを落としても、そのままものすごいスピードで加速していきそうな急坂だ。
馬がそのスピードで走れるとは思えない。
馬車で行きたいって仕様出したはずなんだけどな。
「そこについては問題ない!」
突然、知らないドワーフがドヤ顔で割り込んできた。
こいつら自分の専門が絡むといつもこんなだな。
「トリネン殿!」エデルガルナ状態のルナがドワーフを見て声を上げた。知ってるドワーフのようだ。
「あのドワーフ、誰? 俺知らないんだけど。」隣りにいたリコにこっそりと耳打ちする。
「ルナちゃんにお酒飲んでも大丈夫になるお薬作ってくれた人。」
「ああ、なるほど。」
「見るが良い。お前たちの馬を元気にしておいた!」
お前かっ!!
そう言うとトリネンと呼ばれたドワーフは馬小屋から馬の手綱を引いてこっちに・・・って、馬でかくなってねえか?
何? このムキムキ。
「ふっふっふ、滋養に良く筋肉の発達を爆発的に促す注射を打っておいた。この程度の坂なら楽勝じゃい!」トリネンとかいうドワーフはドヤ顔で胸を張る。
こいつ、馬の方を坂に合わせやがったのか!?
いつの間にやりやがった。
「ちょっと、俺たちの馬になんて事してくれるんですか!」
「一刻も早くと言ったのはお前らだろう。馬側にも改良を加えたおかげでトンネル作成の難易度が4割減っとる。馬体も上がっているので安定性も増してしているし、怪我もしにくくなっておるはずだ、スピードも・・・」
俺の文句にも何一つ悪気を感じる気配もなく、トリネンは自分の薬の効果をとうとうと語りだした。
こいつら、トンネル掘るだけなのに、走る側の生体改造しやがった。
ある意味破壊的なイノベーション。
「おお! カルトスとバルトスがこんなにも立派に!」
すっかり影の薄い御者のヘイワーズさんが嬉しそうに薬物改良された馬を撫でている。
まぁ、ヘイワーズさんが良いなら別にいいんだけど、本当にいいの?
何はともあれ、馬の改造は防げなかったけれども、クリムマギカから出る手段は得られた。
しかも、ケルダモ側までショートカットしやすい場所に出口を繋げてくれたと聞いている。
準備は整った。
これで俺たちもレイド戦に参加することができる!




