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私のせいで話が脱線してしまったけど、今から本題に戻します。
「ルカくんの顔の模様は“御霊の捕らえ籠”だけじゃないですよね?」
『「ふむ、なぜそう思う?」』
「はっきり言って理由はありません。ただ、そんな気がしたんです」
パンドラは組んでいた足をかえ、悩む仕草を見せた。私はそれをじっと見つめる。
沈黙が続き、だんだんと居心地が悪くなってきた。
まだそんなに時間は経ってないはずなのに。
そうして時間が過ぎ、小さく息を吐いたパンドラがゆっくりと口を開き話始めた。
『「そなたは“滅びの鍵”を知っているか?」』
雰囲気が一気に変わって、ピンッと張りつめる。
「名前だけは知ってます……」
『「そうか。では“マクネス聖戦”を知っているか?」』
喉が渇く。心臓がぎゅっと握り潰されそうな感覚。
『リラ』
私はあの日の私を見ないように、答える。
「知っています」
忘れるはずのない戦いだ。あの戦いは、誰も幸せにしなかった。
重く、苦しいその感情が私を手招きしている。
私が小さく息を吐くと、パンドラもまた小さく息を吐き出した。そして。
『「ルカは“滅びの鍵”だ」』
「え……」
『「聖戦で滅びの鍵は壊され、消滅するはずだった。だが鍵の欠片は人の腹の中に入り消滅を免れた……そして生まれたのがルカだ」』
「それじゃあ、あの模様は滅……」
そこまで言って口を閉じる。
つまり、ルカくんは滅びの鍵のような存在で。この世界なんか一瞬で滅ぼせてしまう力を持ってるってことになる。
「えっと、ルカくんは自分が滅びの鍵だって知ってるんですか?」
『「いや、ルカは知らない」』
「それじゃあ、本人には秘密にしたほうがいいですね」
『「ああ」』
「あの、ルカくんが力を制御できてないのって滅びの鍵の影響ですか?」
『「まあ、似たようなものだな」』
ルカくんが力を制御してちゃんと扱えるようになったなら、力を無理に封じ込めなくても大丈夫だし。それにちゃんと扱えるようにしておけば、ある程度ルカくん自身で力の使い方を選べる。なにより自分の力を怖いものだと思ったままなのは、淋しいし悲しい。その力を恐ろしいものにしてしまうか否かは、使う人次第だ。
「ルカくんが力を自分でコントロールするにはどうしたらいいと思いますか?」
パンドラは目を閉じ悩み始めた。そしてなにか呟き始め『「ルカは誰からも理解されなかった……唯一の肉親でさえも」』という一部分だけが聞き取れた。私は静かに待ち続け、パンドラが目を開き私を見た。
『「愛を知れば、コントロールできるかもしれない」』
「愛……」
『「難しいか?」』
「難しいですよ! 愛の形ってそれぞれですし! でもルカくんに生まれてきてよかったって思ってもらいたいので頑張ります!」
『「どうやってそう思わせる?」』
「とりあえず一緒に生活します!」
『「言い忘れていたが、ルカの能力は一つだけじゃない。もう一つ危険な能力がある」』
「どんな風に危険なんですか?」
『「対象物に触れると動かなくなる。つまり命を奪い取ってしまう能力だ」』
「……え」
え、ちょ、それって危険すぎじゃないですか。
そう言いそうになったが、ギリギリ声には出さなかった。
「大丈夫です! どうにかなりますよ!」
私だって魔法使いだ。たぶん大丈夫。それに今までも危ない目にはあってきたしね。だから大丈夫、だと思いたい。




