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強い。
目の前にいる人は、強い。
だって身体中にあたる殺気にも似たようなそれが、自分との力の差を示している。
『「妾が怖いか?」』
ここで素直に怖いですなんて返せるわけがない。
どうしよう。怖くないですって答える。いやいや、怖いものは怖いからね。
なんか頭の中で怖い、怖くないがぐるぐる回ってる。
……もう、ここは悩まずにはっきり言おう。
「怖いです」
『「ふむ、怖いか」』
「はい」
目を細め笑うその人は、私から離れベッドに座った。
『「素直な子は好きだよ。で、私の眠りを邪魔した理由はなんだ?」』
これは私に聞いてるんだよね。だって私のことを見ているし。
『リラちゃん! リラちゃん……!』
「ユキ、ちゃん……?」
なんか声がぼやけて聞こえる。
キョロキョロと回りを見るけど、ユキちゃんの姿がこの部屋にない。
あれ、ユキちゃんはどこに行ったの。
『リラちゃん、大丈夫?』
「ユキちゃん、どこにいるの?」
『恐らく結界の外よ。それより、なにもされてない?』
「え、うん。なにもされてないよ」
『そう、よかったわ。これから結界を壊すから待っててね』
『「うるさいな」』
目の前にいる人は、私たちの会話が耳障りだとばかりに指を鳴らした。
「なにをしたんですか……?」
『「この空間と外の空間を完全に遮断した」』
「……」
『「大丈夫だ。なにもしないから安心しろ」』
「はい」
頷いたけど警戒は解かず、目の前にいる人を見続ける。でも、なにかされそうになっても逃げられないだろうなあ。
目の前にいる人は宙に浮き、足を組んだ。
『「そなたは光、アイラは闇……」』
まるで物語を読むように、言葉にされる。ゆったりとした読み聞かせのような、優しい音……。
けれどその音は私の心臓をバクバクと激しく動かす。
頭を覗かれた……いや、そんなことはされてないはず。だって触られてないし、そういう力を使われた感じもしなかった。それじゃあ、どうして。
『「記憶にないか? 妾と会った日のことは」』
「会った……? あなたと?」
思い出そうとするけど思い出せないし、記憶のどこにもない。だから会ったことはない、と思う。だってこんなに強い人とあったことがあるなら覚えてるはず。
『「……ほお、記憶の一部を沈められてるな」』
「え?」
記憶の一部が沈んでる。どうして。それに誰がなんのために。
『「まあ、よいか。いずれ思い出さなければならない時が来る」』
「……」
なぜ、急に胸が苦しくなるのか。その理由はわからない。だけど……今は気にしている場合ではないのを思い出した。
そうだ。私は青年について聞かなければならないのだ。
私は目の前にいる人を真っ直ぐに見つめた。




