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 当たった。


 なにが。


 占いが。


 青いなにかを拾うって言われた、あの占いが当たったのだ。それで、そのなにかは“綺麗な青年”だった。しかも見つけたときに意識がなくて、とりあえず寝られるようにとホテルまで頑張って運んだ。


 汚れを拭こうと思って顔を見ると、ところどころ傷があって痛そう。あと帽子は寝るのに邪魔だろうと脱がせた。


「わ……」


 帽子から出てきた青い髪は、空を思わせるほど澄んでいて綺麗。


 私はどきどきしながら、手当てをしていく。


 よし、とりあえず手当ては終わった。


 あとは……あとは、え、なにしよう。


「あ、そうだ」


 彼が起きたときのためになにか温かい飲み物を用意しとこ。ココアがいいかな。コーヒーがいいかな。あ、コーンポタージュもいいよね。


「あれ、コーンポタージュって飲み物だっけ? ま、いいや」


「……と」


「ん?」


「……や、めて……と」


 小さな声が聞こえて、青年の近くまで行って顔を覗く。


「と……さん、やめ……」


 眉間に皺がよっていて、とても苦しそう。


 揺すってみたけど反応ないし、どうしよう。


「怖い夢よ、どこかに飛んでゆけ」


 悩んだ末に上から下へゆっくりと頭を撫で、魔法を使う。


 これで少しよくなるといいな。


「だれ、か……た、すけ……」


 突然、青年の顔に模様が浮かび上がってきた。


「あれ……?」


 この模様、どこかで。


「いか……で」


 模様について思い出そうと、頭をフル回転させる。


 あれじゃないし、あれでもない。あーと、どれだっけ。


「あ、ああ! 私の記憶が正しければ、“御霊(みれい)の捕らえ籠”だ!!」


 うっひゃあ、困った。これは私だけじゃ対処しきれないぞ。ユキちゃんに連絡しよう。


 ユキちゃんは昔私が通っていた魔法学校の先生で、私の大切な人の友人。心強くて綺麗な人だ。



          ***



 数時間後、部屋をノックする音が聞こえ慌てて玄関に向かう。


「久しぶりね、リラちゃん」


「お久しぶりです」


 懐かしい顔に少し安心する。いやいや、まだ安心できる状態じゃないんだけどね。


「それで、その子はどこにいるの?」


「奥の部屋にいます」


 私の返事を聞いたユキちゃんは、青年がいる部屋に入っていった。


 そして。


「リラちゃん。あたりよ」


「それじゃあ、やっぱり……」


「この類いの魔法はいろいろと厄介なのよね」


「……と……さん」


 未だ魘されてる青年を見るのは辛い。


「リラちゃん、そんな顔しないの」


 コツンッと額を小突かれる。


「私がいるから大丈夫よ」


「……はい」


 ユキちゃんは少し息を吐いて、詠唱を始めた。


「暗きは光。明るきは闇。

 笑うは天使。嘆くは悪魔。

 祈るは神。叶えるは人。

 迷いゆく光は、道を指し示し。

 構える闇は、道を迷わせ」


 召喚魔法に似てるけど、違うなにか。これは……。


「汝の道行くに、立ち塞がるは我」


 最後の言葉を言い終わると、青年がゆっくりと目を覚ました。


『「……誰だ、妾の眠りを覚ますのは」』


 声が重なって聞こえるから、たぶん青年じゃない。それじゃあ、目の前にいる人は誰。


「起こしたのは私よ」


『「はあ。軟弱な魔法使いに眠りを邪魔されるのはとても不愉快だ」』


 ため息を吐きながら青年の姿を借りたなにかは、ユキちゃんを見つめる。


「不愉快でも起きててもらうわよ」


『「魔法は軟弱なくせに態度だけは偉そうだな」』


「アナタも偉そうよね」


 ユキちゃんたちの会話を聞きながら、私はオロオロしていた。


 だってなにをすればいいのかわからなくて。どうする。会話に入る。入れる。いや入れるかじゃない。入るしかない。よし。


『「ほう、これは珍しい」』


 ユキちゃんを見つめていた瞳は意を決して会話に入ろうとした私を捉え、ゆっくりと愉しそうに細められた。瞬間、ゾクリとしたなにかが背中を這ったような気がした。


「……っ」


『「そなた、名はなんという?」』


「っ……リラ・クリスです」


 声が震えているのが自分でもわかった。それくらい、前にいるその人は……恐ろしく、強い。

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