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「別に言いづらかったら他のことでも大丈夫ですよ……!」
がたいのいいお兄さんは、私の慌てっぷりが可笑しかったのか大きく笑って話を続けた。
「好きな人は飲み仲間と家族、国王に姫様! それから……今目の前にいる突然叫んで好きなものを言い始めた魔法使いだな」
「……え、わ、私?」
「お前しかいないだろ」
「えーと、ありがとうございます?」
クエスチョンマークを浮かべながら、頭を下げてお礼を言う。すると、ざっざっと私に向かって歩いてくる音が聞こえてきた。そして音が近くで止まる。
「俺も悪かった」
「え……」
「知ろうともせず、悪く言った。ミランダ王妃! 許してくれとは言わない。今までの非礼を詫びさせてくれ」
がたいのいいお兄さんが頭を下げると、町の人たちも一緒に頭を下げた。そして騎士の人たちもだ。みんながみんな頭を下げていた。子供たちはきょとんとしながら、大人たちを真似て頭を下げている。
私はミランダ先生を見ようと振り返り、そして固まった。
ミランダ先生が--穏やかに笑っていた。
国王様は涙目でミランダ先生を見つめていた。ミランダ先生がそれに気づいて国王様を見て一度頷き、前へと出た。
そして--。
「頭を上げて。さあ、祭りの準備をしましょう」
それを聞いた人々は頭をゆっくりと上げた。そして目を見開きもう一度頭を下げてから、ミランダ先生になにかを言うことなく祭りの準備をし始めた。
顔を見ればわかる。ミランダ先生がみんなを許していることは。
だから誰もなにも言わない。
ミランダ先生も、なにも言わない。
「先生」
「ありがとう、リラ。ありがとう……」
みんなの姿が見えなくなると、私を思いっきり抱き締めて涙声でお礼を言われる。
「私はなにもしてないですよ。ただわがままを言っただけです。私は先生が大好きだから。だからこの国の人たちに悪くいわっ……!」
私を抱き締めていた先生は、私のおでこに自分のおでこをくっつけた。
「私はよくわかりづらいと言われる。感情を表情に出すのがどうにも難しくて……一人を選んだ。その方が楽だったからだ。だけどね、お前が弟子にしてくれと来てくれたあの日から、私は嬉しくてしかたがないんだ」
「……先生」
「リラ。お前は私の想いにいつも気づき、汲み取ってくれた。お前がいてくれたから、今の私がいる。ありがとう。どんな時もそばにいてくれて。本当に、ありがとう」
ミランダ先生の目から、ぽろぽろと零れる涙がとても綺麗で……私は先生をそっと抱き締めた。
私は思う。
ミランダ先生が大好きだ、と。
こんなにも素敵な人に出会えて私は、とっても幸せだ。




