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「な、なんだよ……! やるのか! この薄汚れた魔女が!」
そう叫びながら少し後ずさりする人々。私はそれを見ながら、一番がたいのいい男性の前に向かって歩いて行く。そこがちょうど真ん中くらいだったから。そしていい距離まで来たら、立ち止まり両手を突き出した。
「あなた方に酷いことも、怖いこともしません。魔法は、素敵な友人です」
私はそう言って突き出したその手を、ぱんっと強く叩く。
――ポウンッ。
私の手のひらの中で音が響く。その音が落ち着き始めたところで手を開くと色彩豊かな蝶たちがてふてふと飛び立つ。その蝶たちはきらきらと光を連れて、町の人々の回りを優雅に飛び回る。
「わ……っ」
「……きれい」
「う、わあ……すごい」
私の耳に届く小さな声。その声を聞きながら、手のひらに集中する。
人々を見ていると、女の子が笑顔で蝶に手を伸ばし触れた。その瞬間、蝶は袋に入った飴玉へと姿を変え女の子の手の上にのる。
「わあっ! すごいっ! ママすごいよ!」
「本当ね」
「きらきら!」
女の子は嬉しそうに笑って、お母さんに飴玉を見せていた。女の子のお母さんも微笑んで、女の子の頭を撫でた。
「ぼくも!」
「わたしも!」
その女の子を見た他の子たちも次々に手を伸ばし、蝶に触れて飴玉に変えていく。
私はその光景を静かに見つめながら、手のひらから蝶を出し続ける。
「おいっ! お前ら騙されるな! こいつは魔女だぞ! その飴玉にどんな魔法がかけられているのかわかったものじゃない! 捨てろっ!」
「そ、そうだ! 騙されるなっ!」
優しい空気が消え、冷たい緊張が居座る。
大人の声に子供たちは顔を強張らせ、俯いたり泣き出してしまったりしている。
私はその光景が……悲しい。
私はいつもそう。感情で動いてしまう。頭で考えてから動いて話せばいいのに。だけど。
私は息を吸い、静かに吐く。そして話し出す。
「全ての魔法使いがいい魔法使いというわけじゃありません。それは、魔法が使えない人たちも同じことです」
私の言葉を聞いて顔を歪める人もいれば、頷いてくれる人もいる。
「私は、この国で笑って過ごすことはできません。だってここはとても冷たい」
「貴様っ! なにを言うか!」
騎士の一人が声をあげる。
「ここにいた魔法使いはずっとそういう冷たい目で見られて、こんな風に言われて、どうして笑って過ごすことができますか? 氷の心を持った女? ふざけるな。どれだけみなさんを愛していても、どれだけここが好きでも……ここは心を殺していく。ここにいるみんながそうする」
自分でも言いたいことがぐちゃぐちゃだ。でも、言わないと悔しくて。私は、話を続ける。




