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「あのっ! ミランダ先生はそんなことしません! 出ていったのには理由があるはずです!」
「それじゃあその理由とやらを教えろ! 小娘! 貴様もそこにいる女と変わらないんじゃないか!? 突然国王様の時間がほしいだなんて、なにを考えているんだろうなあ! この薄汚れた魔女めっ!」
「そうよ! 魔力でものを言うしか脳のない低種族! さっさと消えなさいよ!」
「それにその女は無表情でなにを考えているのかわからないしなあ! 氷のような冷たい心の持ち主なんだろう?」
「違いねえ!」
「さっさとこの国から去れよ!」
げらげらと嫌な笑い声が聞こえる。嫌な空気が広がって、見えないなにかが重く大きく成長していく。
この空気はよくない。息苦しいし、心が……冷えて冷たくなっていく。このままでは凍えてしまう。
そっと視線を国王様へ向けるけど、ただ静かに人々を見つめていた。
きっと国王様はなにも言わない。
そうだ。ここで国王様がなにを言ったってこの人たちは聞いてくれない。きっと魔法で国王様を操っているとか言われかねない。でもどうしたらこの人たちとわかりあえるだろう……。
「……」
言葉は、人を傷つける。
言葉は、人を殺せる。
それは魔法も一緒。
魔法は、人を傷つける。
魔法は、人を殺せる。
だけどね。
言葉は、人を癒すことができる。
言葉は、想いを伝えることができる。
魔法は、人を救うことができる。
魔法は、楽しませることができる。
言葉も、魔法も……心を豊かにすることができる。
言葉を唱えるのが呪文です。
だから使うときは、うんと考えなさい。
それを本当に言っていいのか。
本当に使っても大丈夫なのか。
私はみなさんに、優しい魔法使いになってもらいたい。
特別講師として学校に来てくれたときに、ミランダ先生が学生に言った言葉だ。
「……」
今のこの人たちは、平気で人を傷つける。
悔しい。別に私のことはいい。でも先生のことを悪く言われるのは、嫌だ。だって私はミランダ先生の素敵なところをたくさん知っているから。
私は国王様の腕を掴み、地面に降りる。そしてつかつかと、町の人たちのところへまっすぐ歩く。




