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 クリエスタルに入って暫くしてから気づいた。


 なんだかさっきから嫌な感じがする。後ろや隣から……ううん。あらゆる方向から、嫌悪という感情がぶつけられているみたい。


 なんだろう。この雰囲気は。


「……」


 私、なにかしたかな。いや、もしかしたら私が気づかないうちになにかしてしまったのかもしれない。ほら、たとえば国中に飾られているクリスタルに服が当たって傷つけてしまったとか。


 ……なんてことをしたんだ私は。国中に飾られているということは、多くの人に見られるってことなんだぞ。それに苦労しながらも造った職人にとても申し訳ない。職人のみなさん本当にごめんなさい。


「……っ」


 うわあああああ。ミランダ先生は悪くないんです。悪いのは全て私です。私だけが悪いんです。


「ミランダ先生。すみません。自首はどこですればいいですか」


「は……?」


 左隣を歩いていたミランダ先生を見ると、突然なにを言っているんだこの子はという顔をされた。


「だって先生! さっきから町の人たちからの視線が痛いです! 私がなにかしたとしか考えられません!!」


 半ば叫ぶように言って顔を上げる。そして町の人たちに……。


「どうもすみませんでしたああああああっ!」


 と、頭を勢いよく下げながら謝ったのだった。


 沈黙が私たちを包む。


 ……うぐぐ。誰か、誰でもいい。なにか話してください。痛い。沈黙が、痛い。


 ちょっぴり泣きそうになっていると、前方からたくさんの歩く音が聞こえてくる。


「どうかしたのかい?」


 私が顔を上げるより先に、低く柔らかい声が聞こえてきた。私は顔を上げて、固まる。


「あ……」


 上品な老齢の男性が、多くの騎士たちの真ん中に立って私を見ていた。


 この人が、国王様だ。


 そう瞬間的に思う。そして私は興奮気味に斜め後ろにいるミランダ先生を見る。


「ミ、ミランダ先生!」


 ミランダ先生は目を見開いて、そしてぎゅっと眉間に皺を寄せた。


 あ、ああああああああっ。ミランダ先生の癖が出ている。それは駄目。今は駄目。


「先生! ミランダ先生! うわあああああああっ!」


 私はなにを思ったのか変な声を出しながらミランダ先生の手を掴み、そして国王様の前までダッシュした。


 私たちの前にはきょとんとする国王様。後ろにはミランダ先生。表情はわからない。たがしかし、それを気にしている余裕はない。


 だってよくよく考えると私の動きって、不審者のようだったもの。つまりこれ、いつ国王様の後ろにいる護衛に刺されてもおかしくない状況だよね。早く言うこと言って、連れ去ろう。


 いや……今の言い方だと、やっぱり悪役っぽいわ。いけない。私、二人に悪いことシマセン。


 なんか最後は片言になったけど、違うんだよ。うん。違う。本当に悪いことしません。約束します。


「お嬢さん。私になにかご用かな?」


 国王様の柔らかい声に、私ははっとした。


 いかん。自分の世界に旅立ちすぎた。


「国王様! お祭りに飾る月光華をお持ちしました! それから国王様のお時間を私にください!」


 言うことを言って頭を勢いよく下げる。


「いいですよ」


 柔らかな声で私のお願いに対して了承してくれる。そしてふわりと優しい匂いが鼻を掠めた。


 さっきまでそんなに匂いはしなかったのになあ、と思い頭を上げると国王様は私を高い高いをする様に持ち上げた。


「え……?」


 少し下にある国王様の顔を見ると、楽しそうに目を細め笑っていた。


 え、なにが起こった。

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