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「んー! 美味しい!」


 大きなキャンディの姿に化けている巨大ハンバーグ。肉汁たっぷりなジューシーさと味付けのほどよい感じ。そしてなによりお肉本来の味が少し甘めで美味です。


 かぶりつくたびに美味しさが増していく。もうずっとお口の中が幸せだし美味しいでいっぱい。


「ほんっとうに美味しい!」


「だな! めちゃくちゃ美味い!」


「リラさん。お手拭き足りますか? 足りなかったら言ってくださいね。たくさん持ってきているので」


「はい、足りてます! ありがとうございます!」


 なんだかユンさんが面倒見のいい兄のように感じる。つまり私はお口回りをべたべたにする破天荒な妹というわけですね。


 ん、いやいや。巨大ハンバーグを食べてはいるけど、お口回りはべたべたしていない。大丈夫。ちゃんとお口回り綺麗な状態でハンバーグを食べることができている、と思う。あとで拭いてびっくりな状態だったらどうしよう。でもハンバーグにはかぶりつきたい。かぶりつくために作られていると言っても過言ではない姿で渡されているし、これはかぶりつくのが正解だから……うん。お口回りは気にせず最後まで美味しくいただきます。


「リラ。あとどのくらい行く予定なんだ?」


「ん? あと五軒くらい行きたいけど、みんなのお腹大丈夫?」


「俺はまだいける!」


「私も大丈夫!」


「ワタシはあと少し食べられたらいいくらいだな」


「僕はまだまだ食べられます」


 みんなの返事に頷いて、次のお店への順路を考える。


「あ、あの……! リラ・クリスさん、ですよね?」


「え? あ……」


 一軒目のときからずっと私たちの後を追ってきていた男性たちだ。


「そうですが、なにかご用ですか?」


「あなたにぜひ私たちが作ったお菓子を食べていただきたいのです!」


「え……?」


「あの、実は我々ハロウィーンのお菓子を作ってこの商店街の祭りに参加したのですが、お客様が全く来なくてですね……」


「そのときに噂を耳にしまして……!」


 そこで私たちを追ってきていた男性たちは同時に頷いた。そして「魔法石職人のリラ・クリスに食べてもらえれば人気が出ると!」と声を合わせて言った。


 私はその言葉に目をぱちぱちとさせ首を傾げる。すると様子を見ていたジャンたちが口を開いた。


「リラ! さっき俺らが言っただろ。お前が行った店は混むって。俺らはこの噂を知ってるし、なにより毎年その状態を見てるからお前を探してたんだ」


「なるほど……?」


 さっきはあんまり気にならなかったけど、おかしな話だよね。私が行っただけで混むなんて。でも私が行くと混む。


 混む。私が行くと……。


 あ、もしかして私の遊び心を詰め込んだハロウィーン限定魔法石がいい感じに働いてくれているのかな。でもあの魔法石にそういう効力はないんだけどなあ。あるのは、楽しい気持ちに反応して魔法石からハロウィーンにあわせたキャラクターがふわっと現れるだけ。


 私が行くと混む理由はそれだけしか思いつかない。とりあえずまだハロウィーン限定魔法石はあるからこの人たちにプレゼントしよう。うん。


「あの、もしかすると魔法石の働きかもしれません」


「え?」


「毎年私が行ったときにお店にプレゼントしてるんです。ただ私の遊び心を詰め込んだだけの魔法石なので知り合いのお店限定なんですけど。もしみなさんがそれでも大丈夫ならいりますか?」


「え、いいんですか?」


「はい。まだあるので」


 ぱっと顔を見合わせ、勢いよく頷いている。


「ください!」


「ぜひ!」


「お願いします!」


「はい。どうぞ。これです」


 ハロウィーン限定魔法石を取り出し男性の一人に渡す。するとふわっとオレンジ色に光り始める。


「楽しい気持ちに反応してハロウィーンにあわせたキャラクターが出てくるんです。だからお客様に見える位置に置くといいかもしれません」


 うんうんうんと頷き続ける男性たち。その目はきらきらと輝いている。


「お礼になるかはわかりませんが、我々が作ったお菓子をたくさんプレゼントします」


「ありがとうございます」


 このあと男性たちと一緒にお店まで行き、クオリティーの高いお菓子をいただきました。とっても美味しかったです。食べている最中に、お店にはたくさんのお客様が来て賑わっていました。


 これは余談だけど、この数日後ハロウィーンと言えばこれっというメッセージ付きで可笑しなお菓子が大きな段ボールに入って届きました。もちろん私一人では食べきれないし、ユンさんと二人でも難しそうだったので……みんなを呼んだ。ジャンとクレア。シュルトにレオナとモンブさん。みんな呼びました。そして美味しくわいわいしながら食べきりました。

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