10
物音がして顔を上げると……ルミアちゃんの姿がなくて、そのかわりに見知った部屋が視界に映った。
私はキョロキョロと部屋の中を見回し、そしてさっきまでセセラ・アースが座っていた場所まで歩いていく。
「……」
恐る恐る机や棚に触れて、消えないか確認する。
「消えない……」
そのことに安心したのと同時に、少し寂しくなった。
「……ルミアちゃん」
ここは現実。私は本の外へ……私がいるべき場所へと戻ってきた。
でもさ、突然本の外に戻されても困ってしまうよ。いや戻れないのも困るけど……お別れとか伝えたいことがまだあったのに。
「……うーん、駄目だなあ。なんか最近すぐにしんみりしてしまう」
はあ、なんでだろ。なんだか自分がわからなくなってきた。
ポロンッ――。
「ん?」
ポロンッ――。
不思議な音に誘われるまま、私は机の棚を開けた。
「っ……!」
一瞬息が止まった。
幻かもしれないと思って目も擦った。
「ある。ちゃんと、ある……」
もう一度それを見ても消えていなくて、ああ現実だって安心して。
それに触れて持ち上げ、そっと抱きしめる。そして開いて綴られた言葉を見て……また安心して。
なぜだか涙が溢れて、零れそうになって慌てて服で拭う。
「……よかった」
本当によかった。最後のページを読んでとても安心した。
シュルさんと本の中の私は無事に結ばれていたから。そして二人の共通の友人であるルミアちゃんと一緒に幸せになったと綴られていた。
読み終わり本を閉じようとしたとき、大好きな友人の声が聞こえた。
『物語は、ハッピーエンド』
そう言ったお茶目な彼女に、私は思わず笑みを浮かべる。
「そうだね! やっぱり物語はハッピーエンド!」
嬉しくて本に向かって叫ぶように言ってみる。
ありがとう。ありがとう。たくさんのありがとうを詰め込んで……。
「ありがとう!」
シュルさん。ルミアちゃん。本当にありがとう。




