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ああ、なんとなくわかった気がする。
私が呼ばれた――本当の理由。
「……」
私と彼には共通点があるんだ。
それは……愛する人を失ったということ。そして私と彼の違うところは、想いを告げられたか告げられなかったか。
彼は、告げられなかったんだ。愛する人に自分の想いを。
その想いはあとから後悔となって、そして想いだけが残った。
そう、今彼が綴っている物語に。
「……」
私がシュルさんと結ばれる……そうじゃない、そうじゃなかったんだ。
私は……セセラ・アースが物語に託した想いをただ受けとればよかった。そう、それだけのこと。でもそれは私にとって、とっても簡単でとっても難しいこと。
あの日からなるべく気づかないように、そして避けてきた優しくて温かい感情。
その感情に蓋をして隠して、そして拒絶して。
馬鹿みたいに知らないふりをして遠回りしてたんだ。
「私も、あなたも……」
なくしてから気づくってことは多々ある。
……なくしてからじゃなきゃ気づかないこともある。だけどなくしてからじゃ遅いんだ。
「あなた《・・・》は、それを伝えるために長い月日を独りで過ごしたんだね」
私は言いながら振り返る。そして名前を呼ぶ。
「ルミアちゃん」
すうっと現れたルミアちゃんは優しい笑みを浮かべ、そしてゆったりと優雅にお辞儀をした。
「ありがとう、リラさん。セセラの想いに気づいてくれて」
「……」
「そして私を見つけてくれて……待っていました。ずっとあなたのような人を」
「……」
「きっとこれからあなたもまた恋をして……そしてその人を愛して、その人から愛されるときがくる」
「……」
「どうかそのときは気持ちに蓋をして逃げないで。あなたの中にある、温かい気持ちを大切にしてください」
ルミアちゃんの言葉とセセラ・アースの想いに……蓋に重りを乗せ続けた私の想いが小さく音をたて、そして――重りは消え、蓋が静かに開く。
トクントクンと優しく鳴る私の想い。
苦しいけど、熱いくらい温かい私の小さな想い。
私は、その小さな想いを大切に育てたいと思った。




