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昨日までとは違い、朝食を食べ終えた私とシュルさんは仲良く散歩をしていた。
――そう、数分前までは。
「さて、ここはどこかな」
本の外ではなさそうだし、かと言って本の中でもない。それじゃあ一体ここはどこなんだと問われると困る。そんな状況に私はいる。
うーん、と悩みながらうろちょろと歩き回る私。
「……あ」
なんか、突然扉が私の前に現れたんだけど。これは開けるべきか、それとも見なかったことにして通り過ぎるべきか。
「うーん、悩みどころだ」
でも、今までの経験からしてこの扉は開けるのがいい気がする。
「……よし、開けよう。開けたらなにかわかるだろう、たぶん」
そう思って扉のノブに触れる。そしてガチャと音をたてて開いた扉の先には、淡く照らされた机に向かって座る男性の姿があった。
「……」
後ろ姿だから、確かな年齢はわからないけどまだ若そうな雰囲気はする。
私は音をたてないようにその人に近づく。近づけば近づくほど、カリカリとテンポのいい音が聞こえてくる。
「あの、すみません」
男性のすぐ横で声をかけてみたが、彼はなんの反応も見せなかった。そしてついでに言うなら男性に触れようとすると、彼の体が透けてしまうので触れることが出来なかった。
つまりこれは誰かの意識の中だと思われる。
誰かって言ってるけど……なんとなくその人物の予想はできてる。
まだなんとなくで曖昧なその予想は後回しにして、私は男性の書いているものに目を向けた。
「……」
綴られていく言葉たちは優しく強く鮮やかに、一文字一文字色づけられていく。その言葉たちは綺麗で優しく、どこか懐かしさを感じさせて……そして無性に泣きたくなるほど、悲しくて辛くて悔しくなった。
私は、ただ茫然と男性の綴る言葉たちを見ていた。




