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えー、前回ルミアちゃんをどこかで見たことがあるとかないとか心の中で思った私なんですが……。
『と言うわけで、お前は本の中にとり込まれた』
本の外から私に事情を話してくれた館長によるとですね、どうやら私は本の中に住まう誰かに呼ばれたせいでここにいるらしい。なので……はい、とりあえずルミアちゃんとはこの世界での昨日が初対面でした。
それにしても、なるほどここは本の中か。意外と普通なところなんだな。あ、もちろん人物以外だ。だってやたらと甘い雰囲気を醸し出すシュルト似のシュルさんに出会ったり、すごく気持ちの悪い母に出会ったりしたんだもの。人物以外とか思いたくもなる。でも私が本の中にいるのなら、彼らのことも納得がいく。
私に教えてくれてありがとう、館長。ここがどこなのかがわかったよ。
『おーい。お前の心の声駄々漏れだぞ』
「え、うそ?!」
『本当だ。ああ、それと本の中から出るには物語を完結させないといけないらしい』
「え! うそでしょ!」
『本当だ。ま、頑張れ』
「頑張れって無責任な! ちょっと他に方法はないの!? いやもう他に方法がないにしてもどうやって完結させればいいのさ! 私わかんないよ!」
『ない。あともう一つ言い忘れてたが、この物語は恋愛ものだ』
「館長、言い忘れ多くない? あと物語の内容ってとっても大切なことだと思う! 完結させるのに重要な要素だよね! 言い忘れちゃ駄目なとこだと思うんだけど!」
『お前ならどうにかできる。俺はそう信じてるよ』
「待って信じる前にどう完結させたらいいのか相談にのっ……!」
『あー、なんか通信状況が悪くナッテきたからコレデツウシンオワリマス』
「ちょ、なんでいきなり片言な……」
あー、はいはいはい。私が話してる途中にブツッと音がしました。つまり面倒になった館長が通信を切りましたね。なので私は館長と話すことができません。
このあとの対処は全て私自身でどうにかしなければならないということ。
物語を完結させなければ帰ることができない状況。さて、私が完結させることはできるでしょうか。
「帰るためには頑張らないとだ」
帰ったら覚えていろよ、館長。
そう思いながら私は朝ごはんを食べるために部屋から出たのだった。
***
綺麗な空に澄んだ空気。涼しくて優しい風……。
「ここが本の中なんて信じられない」
でも本の中に生きる人たちには、ここが現実。その中で私だけが異物か……。
「……」
それは仕方のないことだけど、なんだが寂しい。
「リラ姫……いえ、リラさん」
突然背後から声をかけられた私は面白いくらいに跳ねた。
「あ、ごめんなさい。驚かせてしまいましたよね」
振り向けばワタワタと慌てるルミアちゃんの姿があった。
「大丈夫大丈夫! 気にしないで! 私こそごめんね。驚きすぎだよね」
「いえ、そんなことはありません」
「そう?」
「はい」
「えと、それでどうしたの? 私のこと呼んだよね?」
「はい。大切なお話があって」
「大切な話?」
「たぶんご存知だとは思いますが、ここは本の中です。そして私があなたをこの世界に呼びました」
「ルミアちゃんが……?」
「はい。まさか来てくれるとは思っていませんでしたが」
ルミアちゃんの話に驚いてはいるが、聞かなくてはならないことがある。なので私は平静を保って聞いてみた。
「どうして私を呼んだの?」
「リラさんに……」
「……」
ソロリと少し泣きそうな瞳で私を見るルミアちゃん。私は黙って続きを待つ。俯いたルミアちゃんは息を吐き、顔を上げた。
「リラさんにこの物語を、完結してもらいたいんです……!」
そう言ったルミアちゃんの声は震えていて、目には涙の粒があった。




