不思議な魔法の本
わたしは未完成。
わたしは完成しない。
わたしはゴミ箱に捨てられた物語。
あなたが一生懸命書いていた物語。
大切なあなたの物語……。
わたしは未完成。
わたしは、完成したい。
そしてあなたに笑ってほしいの。
「ここは……どこ?」
どこを見渡しても、あるのは一面の草原だけ。
私はこの景色に見覚えはない。と言うことで、もう一度だけ言わせてほしい。
「ここはどこなんだ?」
ええ……ちょっと待って。私がなにをしたって言うんだ。誰か全力で教えてくれ。
そう思いながらも、茫然とそこに立ち続けていた。
「リラ姫。その様なところでどうしたのですか?」
耳を通りすぎた甘い声にゾワワッと体に鳥肌が立つ。
失礼な話だけど、鳥肌が立ったのはどこかシュルトの声に似ている気がするからかもしれない。シュルトが私に対して甘い声か……うーん。なんでだろう。きらきらおめめのシュルトが出てきてしまう。ごめん。シュルト。
頭の中が少し慌ただしいけど声の主を確認しようと振り返ってみれば、素敵な身なりのシュルトが立っていた。
うん……シュルトだ。容姿だけ見るとシュルトで間違いない。でもシュルトじゃないはず。あ、いやでもなんとなく違うかなーのレベルだから本人かもしれない。これはあれかな。きっとドッキリかなんかだと思う。
「リラ姫、体調が優れませんか?」
「……」
「リラ姫……あなたの頬に触れることをお許しください」
そう言って私の頬に触れたシュルト……だと思われる人。
彼はまるで壊れ物を扱うように優しく私の頬に触れた。それに驚いた私は思わず身を引いてしまう。するとシュルト似の彼は目を見開き固まってしまった。
「……」
「……」
気まずい沈黙が私たちの間に鎮座している。私はどうすればいいのかわからず、ただシュルト似の彼を見ていた。だけどただ見ているだけなので、私たちの間に鎮座している沈黙は一向にどこうとしてくれない。
ああ痛い。とっても痛いよ。この沈黙。痛いし辛いしでなんなんだ、お前は。俺様は沈黙だ。いやいや誰だよ、お前。なんで私の脳内に住み着こうとしてるんだ、沈黙。どこかに沈め、沈黙。
「……リラ姫、お気を悪くさせてしまい申し訳ありません」
脳内プチパニックしていた私の耳に届いた寂しそうな声。その声で私は我にかえった。
はっとしてシュルト似の彼をまっすぐ見つめる。
「リラ姫、どうかワタシを嫌いにならないでください」
「……」
「あなたが一生触れるなと仰るならばワタシはそれに従います。ですが、嫌いになるのだけは……!」
なんだなんだこの甘い感じの雰囲気は。これはまずいぞ。非常にまずい。めちゃくちゃむず痒いと言いますか、すっごく照れてしまうと言いますか……とにかく目の前のシュルト似の彼と本物のシュルトの雰囲気が違いすぎて気持ちが置いてけぼりにされてる。そのくせじわじわとなにかが襲ってくるから厄介だ。どうしよう。この雰囲気。
「……」
「……」
「あ、やっと見つけた」
今度は可愛らしい声が耳に届きシュルト似の彼から視線を声がしたほうへと移す。
わあ、今度は美少女さんだ。そして誰なんだ。このツインテールのとっても似合う美少女さんは。
ジーっと見ていたら、綺麗な澄んだ青い瞳が私に向いた。
「アナタは……!」
「……?」
「ごめんなさい。リラ姫様が一緒だと思わなくて」
私を見て固まった美少女さんは、我にかえったように話し出した。
「……」
そういえばさっきからリラ姫って呼ばれるけどなんて返事をすればいいのか誰か教えて。そしてできればここがどこなのかも教えてほしい。
さっきから私は沈黙という技しか使えていない。いい加減に他の技も使いたいです。ぐすん。




