5
競技が始まってだいぶ時間が経った。ジャンとレオナ、モンブさんが順調に走り終わって次はシュルトの番。
「……」
そしてシュルトが走り終わったら、いよいよ私の番だ。
障害物競走は商店街も使用しているのでかなり広い。なので今が何位でどういう状況なのかさっぱりだ。ただ私が待つ場所の担当の人に並んでと言われたので、大人しく並んで待っているところ。
ドキドキバクバクと鳴る心臓。私はぎゅっと両手を握る。心なしか手汗がひどい気がするのは気のせいではないだろう。
なんて言ったって、緊張で心臓が口から出てきそうなんだから。これだけ緊張していれば手汗がひどくなるのもしかたない。
「……」
「君、大丈夫?」
「え? はい! 大丈夫です。ただの緊張ですから」
と言ったはいいけど、余計に緊張してきた。
ふーと息を細くゆっくりと吐き出す。
「緊張するなら手のひらに棒人間を描くといいよ」
「ぼう、人間ですか……?」
「そう、棒人間! 上手く描こうとすればするほど緊張しなくなる! 騙されたと思って試してみて」
私は男の人に言われるまま手のひらに棒人間を描いてみる。
ん。あれ、意外に上手く描けない。もう一回描いてみよう。
「……ラ」
真剣に棒人間を描いていると、遠くからシュルトの声が聞こえたような気がした。後ろを向くと観客の人たちがシュルトの名前を呼んで応援している。
「え? シュルト……?」
「君、結構な時間真剣に棒人間を描いてたよ」
「わお、棒人間マジックですね。時間が経つの早い気がします」
「そうだね。それから今君のチーム一位みたいだよ。頑張って」
「あ、はい! ありがとうございます!」
おお、優しい男の人のおかけで緊張が去っていったぞ。今なら早く走れる気がする。
そう思っていたらシュルトが私の近くまで来ていたので走り始める。
「リラ!」
「はいよっ!」
バトンを受け取り、遅いながらも一生懸命足を動かし走り始める。
私の第一関門は跳び箱六段だ。諦めなければ跳べるはず……たぶん。




