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「お嬢! 止めてくださいっ!」
「モンブは黙っていて! これは私とリラの問題よ!」
「……」
私を見るモンブさんの目がレオナを助けてと言っていた。私は頷き、レオナに向き直る。
「レオナ。お願いだから落ち着いて」
「私は落ち着いてるわ! リラは私のなにが嫌なの!?私はあなたを有名にしたくて、職人科から魔法学へ転科して勉強したのに……!」
「……」
「それなのに、なんでなのよ……どうして……」
禁忌石の指輪を指から外し強く握りしめるレオナ。そしてそのまま膝から崩れ落ち、床に座り込んでしまった。
「レオナ」
「いやっ! 聞きたくない!」
レオナは耳を塞いで首を横に振る。私はそんな彼女に近づき、微かに震える手に触れた。
「レオナ。お願いだから聞いて」
「……」
「嬉しかったよ。専属の職人にならないかって言われたとき。でも、私は行けないんだ」
「……」
「私、有名になれなくてもいいの」
「リラ、あなたは有名にならなくては駄目。貴女を馬鹿にした人たちを見返さなきゃ……」
はらはらと涙が頬を伝って、床に落ちていく。
「レオナ、私のことを思ってくれて……」
ありがとう、そう言いたかったのに突然の爆音にかき消された。
いったいなんなんだ。そう思い振り向けば煙が立ち込めていてなにも見えない。
「……」
駄目だ。目を凝らしてもなにも見えない。ん……なんだなんだ。なんか体が宙に浮いているような、そんな気がするのだが。
「え、え、ええ、どうなってるの……?」
状況についていけてない私は、なんとも情けない声を出してしまった。
「リラ! なにかあったの!?」
「リラさん! 大丈夫か!」
そしてそんな私の声が聞こえたのか、レオナとモンブさんの慌てた声が私の耳に届いた。
「やはり犯人はお前か、レオナ」
この場にいる誰よりも低い声で彼女の名前を呼んだ、その人物のことを私は知っている。
あ……これはかなり怒っているな。
そう思っていると煙が消え、爆音の犯人を目視することができた。
……ああ、やっぱりシュルトか。うん、怒ってるね。
なんて宙に浮きながら思っていたらシュルトと目があった。
「やっほー、シュルトー」
笑顔で手を振ると、シュルトも振り返してくれる。
「元気そうでよかった。今、降ろしてやるからな」
「うん、お願い」
シュルトの隣に降ろされたのと同時くらいに、レオナの震えた声が聞こえた。
「な、な、なんでっ……! なんでお前がここにいるのよ!」
「リラを返してもらいに来ただけだが?」
「なに言ってるのよ! リラはお前のじゃないでしょ! 勝手なことしないで!」
「勝手なこと? はあ。相変わらずお前は駄々をこねる子供のようだな」
「なっ! 失礼なこと言わないで!? 私はリラのことを思って……」
「それが勝手なことなんだ。リラの意思を無視した行動は、ただのお前の我が儘だ」
「……確かに無理に連れてきたことは悪いと思うわ! でも、お前も思うでしょ! リラは有名にならなくてはならないと!」
「確かにワタシもそう思う。けれどリラはそんなことを望んではいない」
「……」
私は横にいるシュルトを見てから、目に涙を浮かべるレオナを見た。私を思って行動してくれたレオナ。
その彼女に私が出来ることはなにか。それを考える前に私の体は勝手に動いていた。
「レオナ、ありがとう。私を思ってくれて」
「リラ……」
「さっきも言ったんだけど、私は有名になれなくていいんだよ」
「どうして?」
「だって私のことを認めてくれる人がいるから。ね?」
「リラはそれで幸せ?」
「うん。幸せ」
「そう……それならいいわ」
安心したように笑ったレオナ。そして私は禁忌石をレオナから……って、あれなんか光ってないか。
禁忌石に目をやると、淡くゆらゆらと光っている。
なんとなく、感覚でわかる。禁忌石が禁忌石じゃなくなるって。
「どうしたの?」
「え?」
「禁忌石を見て固まっていたから」
「禁忌石が光ってるからさ、眩しくて」
「え、光ってる?」
「え?」
あれ、もしかして気づいているのって私だけなのか。




