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 ジャンにテレパシーで助けを呼んでからずっとどうにか縄が切れないか試している私。


「……」


 うーん、やっぱり駄目だ。まったく縄が切れない。まあ、口を塞いでいた布がいい感じに取れたのはよかったけど。縄が切れないと逃げられないし。


 あー、早くしないとレオナが帰って来ちゃうよ。


「っ……!」


 カツン、カツンと廊下を歩く音が聞こえた。私はじっと動かず、耳を部屋の外に集中させる。


 ――カツン。


 気のせいではなく、廊下を歩く音は確実にこの部屋に向かってきている。


 え、ちょ、早い。帰って来るの早いよ。ちょっと待って。あと三時間くらいは待って。


 いいや、願うよりも先にこの縄を切らなきゃ。でもなにで切ればいいんだ。


「……」


 あ、閃いた。地面に縄を擦り付けて切ればいいんだ。


 よし、早速椅子ごとたお……。


「なにしてるんですか、リラさん」


「えっと……えへ」


「……」


 なにがあったかと言うと、椅子ごと地面に向かおうと体を横に傾けた瞬間に部屋の扉が開いてしまった。そして扉を開けた強面のおじ様が驚き目で私を見ている。


 とりあえず笑って誤魔化してみたが、たぶん意味はない。冷たい汗が背中を伝う。さて、どうしよう。この状況。とりあえず体は元の位置に戻したほうがいいよね。


「リラさん」


「ち、違うんです! 逃げようなんて、そんなこと私がすると思いますか!? いいえ、私はそんなことしません! だから……」


「ぷっ、あはははは!」


 突然、吹き出して笑い始めた強面のおじ様。


 え、なにごと。私は驚いて目をパチパチさせる。


「あはは、いや、申し訳ない。あまりに必死だったものだから」


「……」


「ああ、この縄は外しますね」


「あ、お願いします」


 強面のおじ様はナイフを取り出して笑顔で縄を切ってくれる。


 縄が取れて腕が解放された。うん、やっぱり痛い。


「赤くなってますね。あとでよく効く薬を持ってきます」


 眉を下げて私の腕を見る強面のおじ様に、さっきまでの怖さはない。それに私の腕の心配もしてくれてるし……いや、縛ったのはこの人なんだけど。でも普通の悪役は捕まえた人間のことを心配しないだろう。


 んー……と言うことは、あれ、もしかして意外にいい人なのかな。


「あの、どうして縄を切ってくれたんですか?」


「あなたに、頼みたいことがあるんだ」


「頼みたいこと、ですか?」


「ああ」


 短く返事をした強面のおじ様は少し後ろに下がって、私をじっと見つめたと思ったら静かに頭を下げた。

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