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「灰色の禁忌石の代償は、記憶」
「記憶……」
「そう。禁忌石の大きさやレオナの願いによって変わるけど、最低でも二日分くらいの記憶は代償として奪われる」
「最低でも二日分くらいって……下手すりゃごっそり記憶なくなるじゃねえか」
言ってぐっと眉間に皺を寄せているジャン。私もたぶん似たような表情をしている。
「ねえ、ジャン。レオナに声ってかけた?」
「それが……声かける前にレオナの護衛たちが来てそのまま早足にどっか行っちまって」
「そっか」
早足に……その先にレオナが禁忌石を使ってでも叶えたい願いがあるのかもしれない。
「商店街のどっちの方向に行ったの?」
「こっち側に向かってたような……」
「こっち側?」
「おう。俺たちの店がある、ほう、こ、う」
ジャンは言いながらなにか引っかかったのか、言葉が途切れ途切れに音になっている。その様子に首を傾げながら問いかける。
「どうしたの?」
「もしかすると、狙いはお前かもしれない」
「え?」
「話が少し聞こえたのを思い出した。なんか魔法石がって言ってたんだよ」
「魔法石……」
「この商店街で魔法石を扱ってるのはお前だけだ。それであの日レオナたちが向かった先がこっち側なら……狙いはお前だ」
「ちょっと待ってよ。狙いが私って、レオナは友達だよ。友達を狙うってどういう状況だと思う……?」
「わかんねえ。だけど警戒したほうがいい。もしなんかあったら大変だ」
「そうだね」
「パートナーにも言っておけよ。これは考えたくない最悪の状況だけど、もしお前になにかあってもすぐ動ける」
ジャンの言葉に頷く。
確かに考えたくはないけど、もしもってことがある。そのときのことを考えるとジャンの言う通りにユンさんにも話しておくべきだろう。
禁忌石の話が出てきてからずっと複雑な心境だ。ざわざわと心がざわついて落ち着く様子はない。
「リラ、大丈夫か?」
「……え、あ、大丈夫だよ」
「ならいいけど……なんか悪いな。俺があのときレオナに声をかけられなかったからお前を不安にさせた」
「ううん。教えてくれてありがとう。なにもないのが一番だけど、もしものことを考えられるからありがたいよ」
「……リラ」
「ほら、そろそろ戻らないとクレアに怒られるよ」
「あ、そうだな……」
「はいはい、辛気くさい顔しないの」
「……」
「大丈夫だから! ね?」
ちゃんと笑えていたとは思うけど、もし変な笑いかたでも愛嬌ということで流してほしい。
「ジャン! 無理そうだったら助けを求めるから。テレパシーで」
「わかっ……テレパシーかよっ!」
「ナイスツッコミ!」
「はあ……万が一の時はテレパシーでも伝書鳩でもなんでもいいから、絶対に助けを求めろ」
「うん。そのときはよろしくね」
「自転車必死に漕いで行くからよ」
「たどり着いた頃には疲れきってるね」
「かもな。じゃ体力つけるために仕事してくるわ」
「うん。頑張ってね」
「おう」
ジャンが自分のお店へ帰ったのを見送ってから、私もお店の中へ戻る。
「よし、私も頑張るぞ」
とりあえず今日は午前だけお店を開いて、午後は閉める。それでユンさんにも話をしなきゃ。もしものときのために。




