私が、あなたを
ただ飛べないという理由で、落ちこぼれと呼ばれていたあなた。
けれど私はあなたを落ちこぼれだなんて思ったことはないわ。
私はあなたを有名にしたいと思ったの。
そしてあなたを笑った人たちを見返したいと思ったの。
だってあなたは素晴らしい職人だから。
だから私は決めたのよ。
私の全てを差し出してでも――私があなたを有名にすると。
魔石を採りに行って帰ってきてから数日が経った。そして今日ようやく全ての魔石を魔法石へと造り終えた私は久々にお店を開けることができる。
ぐっと体を伸ばして立ち上がり、台所で朝ごはんを作ってくれているユンさんの元へ急ぐ。
「おはようございます! ユンさん! 魔法石が造り終わったので今日からお店を開けることができます! 数日家事ばかりさせてしまってごめんなさい!」
「大丈夫ですよ。魔法石造りお疲れ様です」
「ありがとうございます!」
「もう少しで朝ごはんができあがるので待っていてくださいね」
「はい。あ、私コーヒー淹れますね!」
「ありがとうございます」
ふわふわと優しい空気が広がって癒される。ユンさんがパートナーになってくれて本当によかったと心から思います。
朝から幸せいっぱい笑顔でコーヒーを淹れ終わった頃、朝ごはんができあがって二人で食べる。
今日も美味しいご飯で頬っぺたが落ちてしまいそう。ユンさんが作ってくれるご飯が毎日美味しくて私の胃袋はもうがっちり掴まれてます。
そう思いながら最後まで美味しく朝ごはんを食べ終わり、お店を開けるために外へと出る。
「んー、久々だー」
お店から外に出て看板をCloseからOpenのほうへと変えた私は、久しぶりの日光に目を細める。室内にこもりっきりだった私の体は太陽を求めていたらしい。ぽかぽかの日光にもう少し光を浴びていたい気持ちになる。
「おー、リラじゃん。おはよ」
「おはよう」
「今日は店開けんの?」
「うん。開けるよ」
ジャンと会うのは久しぶりだ……いや、ユンさん以外の人に会うのは久しぶりと言うべきか。ここ数日、本当に外に出てないからなあ。
「それにしても心配したんだぜ。休まないがモットーのお前が店を開けないから」
「あー、心配かけてごめんね。魔法石がなくなっちゃってさ、採りに行って造ってたんだ」
「ああ、なるほど。ま、事件に巻き込まれてなくてよかったよ」
「心配しなくても、そう簡単に巻き込まれたりしないよ」
「そう言ってると巻き込まれたりするんだぞ」
「あー、確かに」
「一応気をつけろよ」
「うん。気をつけるよ」
笑顔で返事をすると、ジャンが何かを思い出したように口を開いた。その表情はどことなく硬いような気がする。
「お前に聞きたいことがあるんだけど時間、大丈夫か?」
「大丈夫だよ」
「この間この商店街でレオナを見かけたんだ。そんときに昔お前に見せてもらった禁忌石で造られた指輪をしてるように見えたんだけど、灰色の禁忌石って持ち主のなにを代償にする?」
禁忌石――その言葉に心臓がどくりと嫌な音をたてる。なぜか耳がじんじんとする。まるで禁忌石という言葉を拒否するかのように。
よりによって友人であるレオナが禁忌石で造られた指輪をしている。なぜ禁忌石で造られた指輪なんてしているの。レオナは魔法石に詳しいから、禁忌石の危なさは知っているはず。それなのに、なぜ。
レオナ、あなたは禁忌石に願ってでも叶えたいなにかがあるの……。




