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洞窟の中は前が見えないくらい真っ暗で、私は今にも転けそうだ。
うん。派手に転ける自信がある。だって暗いもの。あまりの暗さに足元まったく見えないからね。それでもここで光などでこの空間を照らすのは駄目だ。
クリスタルは自身が放つ光とは別の光が当たると、中の焔が濁って魔石になることができなくなってしまうから。
「それは困る」
「どーかしたか?」
「ううん、なんでもな……っぎあああああ!」
今一瞬、心臓が口から飛び出るかと思った。その心臓は今ばくばくと激しく動いている。きゅっと両手を握り締め気持ちを落ち着かせる。
「おーい。大丈夫か?」
「大丈夫、だと思う」
「つか、目開けても大丈夫だぞ」
「遠慮する。今開けたら確実に意識を失う自信があるから」
だって転けるよりも恐ろしいことが今起こったんだもの。
そう。知らないとこに落ちるっていう恐ろしいことが
――。
まあ、間一髪カグラに助けてもらえたけど。あのまま落ちていたらと思うと全身から血の気が引いてしまう。
「お前って毎回なんかあるよな」
「そうだね……」
「ま、俺がついてりゃ死ぬことはねぇけどな」
「うん。信頼してる。いつもありがとう」
いやー、本当にカグラに案内をしてもらえて助かる。だってカグラは冬狼一族だから、寒さも強いし暗闇にも強い。それになにより力持ちなのだ。私を軽々と持ててしかもそのまま何事もないように動けてしまうくらいの力持ちさんだ。
「力持ちがどーした?」
「え?」
「声出てたぞ」
「うっそーん!」
「本当。で、力持ちがどーした?」
「あ、いや、別になんで……のうわあっ! はい! 喜んで言わせていただきます!」
今、一瞬だけ体が宙に浮いた。つまりまた知らないところに落ちそうになったってことだよ。いや、違うな。今のは落とされそうになったってことだ。
「ほら、私を片腕で担いでくれるから助かるなって」
「……」
「あと帰りとかさ、魔石を持って私も担いでくれるから力持ちっていいなって思ったの」
「へぇ」
「え、なんか冷たい反応」
「さっさとクリスタルのとこまで行くぞ」
「え、うん」
さっきよりも歩く……いや、走るスピードが上がったのに私を支える腕は安定している。
「……」
居心地は最高だ。ちょっとお腹が圧迫されてるのが難点だけど。
あ、いや、それよりなんか話を変えられたよね。
もしかして、照れちゃったのかな。




