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あの後どっちが勝者かっていう話になって、譲り合いのような感じで終わりが見えなかったのでじゃんけんをした。私はじゃんけんに勝ち、試合も私の勝ちということになった。そして今は結婚式の真っ最中。
二人とも幸せそうに微笑んでいて、見ているだけでこちらも幸せな気持ちになる。
「それでは、ウェディング魔法石の登場です」
部屋の明かりがふっと消えて、部屋の扉が開く。そこから入ってくるのは、造るのに時間がかかったウェディング魔法石。
七色に輝き部屋の中を照らしていく。
「わあ、綺麗」
「そうですね」
私は二人の嬉しそうな声を聞いてから立ち上がる。ウェディング魔法石の仕掛けを動かすために。
「アトラ」
「もうやるのか」
「うん、お願い」
「はいよ」
アトラがウェディング魔法石で一番大きな蕾の部分へと登っていく。そして蕾に私が造った小さな鍵を差し込んだ。
ガチャンと鍵が外れる音が聞こえると、ゆっくりと蕾が開いていく。
「わあ……っ」
蕾から出てきたのは、幸せそうに笑い寄り添う新郎新婦の二人。
これには特別な魔法石を使った。この特別な魔法石は、その場の雰囲気にあった音楽を奏でる。そして今の雰囲気は幸せいっぱい。
流れる音楽は優しく私たちを包んでくれる。
「リラ!」
「わっ……!」
ナナミが私の名前を呼んで席から立った。そしてドレスなのに私のところまで駆け寄って勢いよく抱き締められる。
「ありがとう! すごく嬉しい!」
「こんなに喜んでもらえて、造った甲斐があったよ」
「どうしよう。嬉しすぎて涙が止まんない!」
「大変だ」
言葉ではそう言っているのに、私もナナミも笑っている。
ナナミ。私も嬉しいよ。ナナミのためにウェディング魔法石を造れて。魔法石もね、嬉しいからとても楽しそうに音楽を奏でてるの。
……タイミングを逃し続けて言えなかったことを、今言おう。
「ナナミ」
「なに?」
「結婚おめでとう」
「っ……あ、あー! ずるい、今言うのはずるいわ!」
また涙をぽろぽろと零すナナミ。
「でも、ありがとう」
「幸せになってね」
「ええ」
「さ、新郎さんがわたわたしてるから戻ったら?」
「いいのよ。ちょっとくらい放っておいても」
「でも」
「あの人はさっきリラを独り占めしたんだから。私もリラと話したかったのに」
「照れちゃうな」
「ふふ、これからも友達でいてね」
「うん」
手を握り、ウェディング魔法石をちょっと遠いところでナナミと二人で眺めた。
あれ、なんだか私が新郎さんっぽい。ま、いっか。ナナミの幸せそうな顔も見れたことだし。
***
無事に結婚式が終わり、そろそろお開きになりそうな雰囲気が漂っている。
「リラ、結婚するときは必ず私のところにブーケを投げなさいよ」
「あー、そんなのずるいわよ! リラ、私のところに投げてっ!」
なぜか私のところに結婚式に出席した女性たちが次々と集まってくる。
「ちょっとリラがブーケを投げる人は私だって決まってるのよっ!」
「なに言ってるのよ! 私に決まってるでしょ!」
うわわわ、なんか喧嘩っぽいことが始まってしまった。なぜ彼女たちが私の元に来るかと言うと、ナナミの投げたブーケを私がナイスキャッチしてしまったからだ。
「おい、お前ら。リラが困ってるだろ」
おお、アトラ。ありがとう。助かったよ。
「あらら、ごめんね。ブーケを私に投げてくれると信じてるから」
「ブーケも楽しみにしてるけど、結婚式に呼んでよ」
「仕事頑張ってね」
私の頬にキスをして去っていく友人たち。
よし、私の結婚式にはブーケをたくさん用意しよう。もしくは男性に投げればいい。うん、それがいい。そうしよう。
「リラ、よしよーし」
突然アトラに頭を撫でられた。しかもよしよーしって私は子供か。
「いきなりどうしたの?」
「いや、なんか撫でたくなっただけ」
「そう?」
「おう」
なんか変なアトラ。さっきまでいた友人たちに、なにか言われたのかな。
そういえば、ナナミはどこに行った。二次会から見てない気がする。渡したいものがあるのにな。このままだと渡せずに終わってしまうかもしれない。それは困る。とても困る。当日に渡してこそのサプライズプレゼントなのに。
「アトラ。ナナミ知らない?」
「ナナミならシュルトと話してたけど」
「シュルトと?」
「ああ」
「それじゃあ、ナナミのところにちょっと行ってくるね」
「おー。んじゃあ、お前が戻ってくる前に片付け終わったら連絡入れてやるよ」
「うん! お願いします」
戻ってくるまで片付けが終わってないといいな。アトラとか関係者のみんなに任せっきりだったから。片付けはしたいなと思う。とりあえずダッシュでナナミに会いに行くぞ。




