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「遅かったですね! ですが聞きましたね! あなたが方向音痴だとね! そして気づきましたね! 僕も場所を伝え忘れていたことにね! そこは申し訳なかったですね!」
びしっとポーズを決め言い切る新郎さん。
や、やめて。そんなに大きな声で方向音痴なんて言わないで。切なくなるから。それから場所のことは私も聞けずに終わっていたので気にしないでくださいな。
……あ、それから新郎さんの名前知らないや。試合が終わったら聞こう。なんだか今は聞ける雰囲気ではないし。
「ではでは始めましょうね! 僕の召喚獣はテテイね!」
名前を呼ばれ出てきた召喚獣はパンダだった。
「わあ、可愛い!」
もふもふしたい。そして抱きつきたい。テテイ可愛い。そしてテテイがこちらに走ってくる。
走って……あ、あれ、なんかサイズが大きくなってないか。
「うわわわっ! おっきい!」
なんかすごく大きい。首が痛くなるよ、この大きさは。
「僕の召喚獣パンダのテテイね! 可愛いだけじゃないね! 強さと賢さと気品を持ち合わせた最高の召喚獣ですね!」
お、おお、なんかテテイがすごいことだけは伝わった。でも私のアロも負けない。
「それじゃあ私も召喚獣を呼びますね。アロ、おいで」
「キュ、キュウ」
ととととっ、と走ってくるアロ。召喚獣は異空間の扉の中から走ってくるので、身体の小さなアロは少し時間がかかる。そして私の隣に来たアロを見た新郎さんが、勝ったとばかりに笑ったのが見えた。
体の大きさと力は関係ない。小さい召喚獣には、小さい召喚獣なりの戦い方がある。だからアロは負けない。私はそう信じてる。
「リラさん、その召喚獣でいいんですかね!」
「はい!」
「では、試合を始めるぞ」
ほうほう、シュルトは審判として呼ばれていたのか。なんだか妙に納得だ。似合うよ、審判。
「テテイ、好きにやっていいね!」
「はーいにゃり」
わお、テテイは人の言葉が話せるんだ。可愛い声だから女の子なのかな。
「アロも好きにしていいよ」
「キュキュ、キュウ」
やる気満々のアロ。その証拠に耳が上にぴんっと立っている。
「アロ、行っておいで」
「キュウ!」
テテイに向かって走っていくアロ。テテイはアロを捕まえようと手を伸ばす。その動きの俊敏さは敵ながら天晴れである。でもアロも動きの俊敏さでは負けない。ちゃんと避けて間合いを測っている。だが大きさのせいなのかアロが捕まってしまった。
「アロ……っ!」
「テテイ、よくやったね!」
「逃がさないにゃり」
「ギューウ!」
「リラさん、召喚獣をしまったほうがいいんじゃないですかね?」
「キュ、キュキュウ!」
まだやれる、しまわないでってアロが言ってる。アロが諦めてない。なら私はアロを信じる。
「アロ、頑張って!」
「キュウ!」
アロが気合いを入れ直すと、瞳の色が紫になっていく。そして――。
「キュウ!」
地面から水が溢れ出す。テテイを包むように。
「テテイね!」
「く、苦しいにゃり」
手の力が抜けて、アロが放される。
「うあ、あわわね」
慌てふためく新郎さん。このままだとテテイが危ない。
「アロ、もういいよ」
「キュウ」
ふっと力を抜くアロ。すると瞳の色は元に戻り、水も姿を消した。
「ぷはあ、苦しかったにゃり」
私はテテイに近づき、話しかける。
「テテイ、大丈夫?」
「わたしは大丈夫にゃりよ。アロしゃんは大丈夫にゃりか?」
「キュウ!」
元気よく返事をするアロ。
「よかったにゃり。試合、楽しかったにゃりよ」
「キュ、キュキュウ」
「ありがとうにゃり。また機会があったら試合しようにゃり」
「キュウ!」
召喚獣同士は打ち解けたみたいだ。よかったよかった。
「リラさんね」
「はい」
「試合、楽しかったね。ありがとうね」
「私も楽しかったです。ありがとうございました!」
「その、僕と友達になってくださいね」
差し出された手をそっと握る。
「はい! よろしくお願いします!」
私も新郎さんと打ち解けることができた。




