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「なあ、リラ」


「ん、なに?」


「お前さ……誰かと結婚するつもりないのか?」


「ないね」


「即答かよ」


「うん」


 私は今工房で、ナナミにあげるネックレスを制作している。ナナミは、結婚式の主役である新婦さんのことだ。


「アトラこそ結婚する予定ないの?」


「ないな」


「アトラかっこいいのにね」


「そりゃどーも」


「婚期を逃さないようにね」


「もう逃してる気がする」


「えー、大丈夫だと思うけど」


「俺よりもお前が心配だな」


「なんで?」


「鈍いから」


「は?」


 聞き捨てならないぞ、今の言葉は。


 作業する手を止めて、ばっと振り向く。アトラは肩肘をついて顔を支えながらじっと私を見ていた。


「だって……なあ?」


「なにその意味深な感じは……!」


「ま、とりあえずお前は魅力的ってことだ」


「なっ、なに言ってんの! おだててもなにも出てこないからね!」


「そりゃ残念」


 対して残念そうでもなく、アトラはけらけらと笑っていた。


「ほら、早くしないと結婚式に間に合わなくなるぞ」


「あ、うん」


 作業台に向き直り、作りかけのネックレスに触れる。


 んー、ここは猫の装飾にしようかな。ナナミ猫好きだし。


「……だから俺も結婚できないんだけどな」


「ん、今なんか言った?」


「別になにも言ってない」


「そう?」


「ああ」


 一瞬だけ休めた手を動かし作業に戻る。


 形を綺麗に……愛情を込めて、ナナミをより輝かせられるように魔法石を造っていく。


 魔法石にも花と同様に石言葉がある。ただまあ石だけではなく色でも変わるんだけど。


 赤は愛情。

 ピンクは恋心。

 紫は寄り添い、といった感じだ。


 今回使うのは赤とピンクに紫、それと水色と青。全て彼女の幸せをサポートしてくれる石を選んだ。


 早くナナミに渡したいな。



            ***



 はい、やって参りました。待ちに待った結婚式当日……と言うわけで、ナナミのウェディングドレスを見に待合室に来ています。


「リラ。なにをやっているのかしら?」


「あ、バレた?」


「当たり前よ」


「入ってもいーい?」


「どうぞ」


「失礼しまーす!」


 扉を力一杯開いて中に入る。そしてウェディングドレス姿のナナミを見て目をかっ開く。


「っ! うわああああっ!」


「ちょっとうるさいわよ」


「だって……だって綺麗すぎる! うはあ、惚れる! これは絶対惚れちゃうわ!」


「ですよね! 綺麗ですよね! 綺麗すぎて眩しいですよね!」


 突然隣から声が聞こえて横を見ると、知らない人がいた。ナナミをべた褒めしてるってことは、この人が新郎なのかな。


「あ、いくらあなたでもナナミはあげませんからね!!」


「「……え?」」


「ナナミは僕のお嫁さんですね! 僕がナナミを一生幸せにするんですからね!」


 なんで私のことを知ってるのかと疑問に思ったけど、それよりも語尾の強さのほうが気になる。ね、に気合いが入りすぎているような気がするのは気のせいかな。


「彼、語尾に()をつけるのが癖なの」


 ナナミが小声でそっと教えてくれる。なるほど、そういうことだったのか。


 うんうんと軽く頷きながら納得する。


「あー! ナナミ、浮気ですかね!」


「リラは女の子よ。浮気なんてできるわけないでしょう」


「できますね! 愛に性別は関係ありませんからね!」


 なんか、新郎さんが敵を見るような目で私を見てくるんだけど。私はなにも悪くないはずだ。なのになぜ敵を見るような目で見られなきゃならないんだ。


「リラさんね、僕と戦ってくださいね!」


「え、嫌です」


「拒否は認めませんね!」


 なんかポーズを決めてるんだけど、これには反応したほうがいいのかな。


「試合方法は召喚対決ね! 時間は今から一時間後でね!」


 言い終わるのと同時に新郎さんは、颯爽と待合室から出ていってしまった。


 あの、一つだけいいかな。


 なぜこうなった。


「とりあえず新郎さんと試合してくるね」


「ええ。ごめんなさいね、リラ」


「ううん、大丈夫。それじゃまたあとで」


 やれやれといった感じのナナミに伝え、私も待合室から出ていく。


 戦いを挑まれた以上、全力でやるつもり。まあ、一度断ってしまったけど。あとはもちろん式場や他の人たちに迷惑がかからないようにやる。新郎さんと私の間にわだかまりがあるのはなんだかナナミに悪いし。

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