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ファラさんの中に入った私は、驚きで固まってしまった。
――ここもクリスタルで埋め尽くされている。
きらきらと輝くクリスタルは……どこか悲しそうな雰囲気だ。ファラさんが泣いてるのかもしれない。
「早く見つけなきゃ」
自然と歩くペースが早くなる。
早く早くと気持ちだけが焦る。すぐに見つかりそうなのに。
「ファラさん」
色んなところを見るけど、見つからない。だけど……前に進めば進むほど、霧がかかってきている。
視界が、悪くなってきた。
「これじゃあファラさんを見つけられない」
あ……もしかしてこの先にファラさんがいるのかも。きっとそうだ。そうに違いない。
「ファラさーん! リラです! 返事してくださーい!」
とりあえず声を出しながら進む。
ファラさんの耳に私の声が届けばいいと思いながら。
「ファラさーん!」
彼女がいると信じて進み続ける。
あれ、なんだか霧が薄れてきた気がする。
「っ! ファラさん」
ファラさんは湖の側に佇んでいた。振り返ったファラさんは、申し訳なさそうに目を伏せる。
「リラさん、ごめんなさい……」
「私はファラさんを責めに来たんじゃないんです。ただ、ファラさんと話がしたくて」
なるべく笑顔でファラさんに話しかける。でもファラさんは悲しそうに微笑んで私を拒絶した。
「今すぐ、ここから出ていってください……」
拒絶されても、私は帰るわけにはいかない。
少しずつファラさんに近づいていく。
「来ないでっ!」
「ファラさん……」
「あなたに私の気持ちはわからないでしょう……!」
「確かに私はファラさんの気持ちがわかりません」
「それなら帰って! 同情なんていらないのっ!」
「同情なんてしてません。だって私は同情できるほど、ファラさんを知らない」
私は歩みを止めずに話続ける。
「でも私はファラさんの友達になりたい。だからファラさんの怒りや悲しみ、楽しいと感じたことを聞きたいんです」
「っ……」
「とても身勝手な事を言っていると思います。でも、このまま帰ったらきっと後悔する」
ファラさんから四歩くらい離れたところから、まっすぐに見つめて話す。
「だから、私とお話しませんか?」
私たちの間を風が通りすぎた。涼やかな優しい風が。
ファラさんがそっと目を伏せて、それから 意を決したように私を静かに見つめた。
「……私、考えたんです」
「なにをですか?」
「リラさんと友達になる方法を……でも考えれば考えるほど、それは悪い方向に進んで」
「……」
「それで思ってしまったんです。私にリラさんの友達になる資格はないって……」
ファラさんは両手で顔を覆って、涙声で話した。
「ファラさん。私は友達になるのに、資格はいらないと思います」
「リラさん……」
「それに資格が必要だったら、私はファラさんと友達になれないじゃないですか」
私は頬を膨らまし、拗ねるような顔をした。
「えっと、どうしてですか?」
「ふふ。ファラさんはどうしてですか?」
ファラさんは聞き返されたことに驚いて、目を見開いたまま少し固まっていた。けれどちゃんと理由を答えてくれる。
「だって私は……リラさんの見る景色を一緒に見られない」
「それは私が写真に撮ってきたり、絵に描いたりして持ってきたら悩み解決ですね」
「それにリラさんとお花見も出来ないし」
「それは夜にやりましょう! 個人的な意見ですけど、桜は夜のほうが綺麗だと思います」
「それでも……」
「大丈夫ですよ。悩んだら、一緒に考えればいいんです」
「リラさん……」
「だから一人で抱え込まないでください」
泣きそうになっていたファラさんは、涙を拭って私を真っ直ぐ見つめた。
「リラさん。私とお友達になってくれませんか!」
恥ずかしそうに頬を赤くして伝えられた言葉は、今までの中で一番嬉しいものだった。
「はい、喜んで!」
もちろん私はとびっきりの笑顔で返事をする。そして私たちは、どちらともなく抱き締めあった。




