5
ランの家に着いた私は魔法で門を飛び越え中に入った。
「ラン。不法侵入ごめんっ……!」
誰の耳にも届かないけど謝りつつ、ファラさんの部屋まで全力で走る。
……走っていると、悲しそうなファラさんの声が聞こえた。内容は耳に届く音が小さすぎてわからなかったけど、確かに声が聞こえた。
泣いていている気がする。早くファラさんに会いたい。そして話がしたい。
ファラさんの部屋に辿り着いた私は、扉を開けて勢いよく中に入った。
「な、に……」
中に入った私は……固まるしかなかった。
部屋全てを覆い尽くすクリスタルが視界を埋める。数日前に来たときとは全く違うその部屋の中心に、ファラさんはいた。
「ファラさん!」
ファラさん以外誰もいない部屋で、私は彼女の名を叫んだ。そしてファラさんに駆け寄る。
「……」
綺麗な顔で眠るファラさんは、まるで宝石のよう。
そうじゃない……彼女は宝石になり始めているんだ。
「リラ」
名前を呼ばれて振り向くと、そこには魔法医師のぺナットがいた。
「その子の友達なんだってね」
「うん……」
「馬鹿だね、あんたは」
言い返そうと思ったけど、眉を下げている彼女を見たら言えなかった。
「関わらなかったら、そんな思いをしなくてすんだのに」
「……」
「あの時だってそうだ。私は止めたのにお前は聞かなかった」
「だって、見せてあげたかったの」
「そうだね。そういう思いを抱くことはいいことだと思う」
「……」
「だが、ラタ族の奴らは頑張ったお前を裏切った」
「それは違うよ! 私は裏切られてない……!」
「違わない。お前の前で消えるということは、裏切りだ」
「それは……!」
確かに悲しかったし、苦しかった。だけどそれは裏切りじゃないよ。
あれはルアの優しさだったと思うんだ。
だから、私は裏切られたなんて思ってないよ。
それにファラさんはまだ消えてないし、宝石にもなってない。あの時とは違う。まだファラさんと話せる時間がある。
それなら会いに行こうじゃないか。
「私、ファラさんと話をしてくる」
「本気か?」
「本気だよ。だって私はファラさんの友達だから」
笑って、まっすぐぺナットを見つめる。
私はまだファラさんを知らない。それなら、ファラさんが気持ちをぶつけてくれるくらい話をしよう。
「あの時と似たような別れがくるかもしれない……それでも行くのか」
「うん。どんな結末が待っていても、行って話してくる」
私はぺナットの目をまっすぐ見つめ続け、はっきり自分の気持ちを伝えた。すると彼女は眉を下げて、悲しそうな声色で言葉を放つ。
「決めたんだな……」
「うん! だってこのまま別れるほうが悲しいから」
「必ず帰ってこいよ」
「もちろん! 帰ってくるよ」
「絶対だからな」
念を押すように言われる。
きっと私が帰ってこなかったら、自分を責めてしまうんだろうな。ぺナットは不器用だけど優しい。だから私を心配してくれる。
そんな彼女に言われたら、帰らないわけないじゃないか。
「うん、約束」
笑って、指切りをした。
大丈夫だよ。どんなことになっても必ず帰ってくるから。
「……よしっ! ファラさん、今行きますからね」
ファラさんの額に触れて、意識を集中する。すると映像が見えてきて、私はそこに潜った。
どうか、ファラさんが夢を諦めていませんように。




