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私たちはファラさんのいる部屋から出て、廊下を歩いていた。
えへへ。ファラさんと遊ぶ約束をしちゃった。とってもるんるん気分だ。今なら空だって飛べそうな気がする。うふふ、楽しみだな。なにかファラさんにプレゼント持って来よう。
「リラ」
名前を呼ばれたから振り向くと、ランが頭を下げていた。
「え、突然どうしたの!?」
なにがどうなってこうなった。誰か説明してくれ。
混乱していると、ランが勢いよく頭を上げた。
「お前のおかげで……久しぶりにあいつが笑った」
「そうなの?」
「ああ」
「……」
「あいつは……私が見つけてからずっとあの部屋にいるんだ」
「……」
「……最初に来てもらった日のこと覚えてるか?」
「うん。覚えてるよ」
「あの時、お前は中を見たよな」
「あ、ああ……うん」
「あいつも見えるんだ。あの距離なら」
ああ、だから悲しそうに私を見ていたのか。外にいる世界の……ううん、空を見ることの出来る私を。
「……」
「リラ、あいつが空を見ることは出来るか……?」
必ず見ることが出来るよって言いたい。言いたいけど、言えない。ごめんね、ラン。
「絶対にとは言えない……」
「っ……!」
「だけど、私は信じてる」
真っ直ぐランを見つめて、はっきり伝える。
「だからランも信じて。きっと大丈夫だって」
「ああ……」
そう、今の私たちに出来ることは……信じるということ。
魔法石を嵌めたネックレスを、ファラさん自身を。
ファラさんの心が折れてしまったら、もうどうすることも出来ないから。
だから私は、信じる。
強く強く、真っ直ぐに。
***
あれから数週間が過ぎた夜。私は一人慌てながら、仕事を片付けていた。だがしかしこの作業もあと少しで終わる。眠気と戦いながら頑張ったからだ。
……これから仕事を溜めるのは止めようと思う。あ、あとユンさんにお店を任せっきりにするのも気をつけなきゃ。
「でも……」
今回は仕方なかった。仕方なくないけど、仕方ないで言い訳させてほしい。だってファラさんに週三回のペースで会いに行っていたから。
今のところファラさんに変わった様子はなく、平穏な毎日が続いている。
私はその事にとても安心している。
このまま何事も起きず、空を見ることが出来ればいいなと思う。
「んー、さあて寝ようかな」
椅子から立ち上がり、寝室へ向かう。
眠気で頭がぼーっとするし、身体も心なしか重い気がする。ああ、早く寝てしまおう。
自室にたどり着いた私はベッドに潜り、ゆっくり目を閉じる。
すると、あっという間に私の意識は夢の中に沈んだ。




