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 遥か昔、地下には『ラタ族』という一族が住んでいた。その一族の特徴は三つ。


 一つ目は、全てを包むような蒼い髪。

 二つ目は、優しい炎のような紅い瞳。

 三つ目は、日の光を浴びられないこと。故に肌が雪のように白い。


 ラタ族はその美しさから『生きる宝石』と呼ばれ、多くのコレクターたちが欲した。そしてある時コレクターたちの手によって、ラタ族は滅びたと言われている。


「……」


 私はさっきまで埃だらけだった本を閉じて膝の上に置く。そして顔を上げて目を閉じ、背中を壁に預ける。


「リーさんがその本を読むのは、あの時以来ですねえ」


「あ、うん……そうだね」


 瞬間、ばくばくと心臓がうるさく騒ぐ。これ以上は聞かれたくないな。聞かれても、困ってしまう。


「……さあて、アッシはこれを綺麗に仕上げましょうかね」


 私の心情を察してか話を変えてくれたアシュラに近づき手元を覗く。そして小さな声で「ありがとう、アシュラ」と伝える。するとアシュラは私を見てふっと笑った。


「そこはまあ、リーさんとアッシの仲ですしね」


「うん。あ、そこまで進んでるなら私もそろそろ最後の魔法石の準備してくるね」


「お待たせして申し訳ない」


「ううん。私が無理言ったからだから、私こそごめん。それから早くて丁寧な作業ありがとう」


 そう言って自分の作業台へと向かう。アクセサリーを飾る最後の魔法石はとっておきだから、失敗は許されない。しかもこのとっておきの魔法石を造るためのチャンスは一度っきり。だからすごく頑張る。これ以上ないくらい、頑張るんだ。


「アシュラさん、こっち出来上がったっスよ」


「腕を上げたねえ。しかも早く丁寧だ。助かったよ」


「ありがとうございます! 嬉しいっス!」


 魔法石を造るために必要な物を用意している私の耳に届いたアシュラとダントの会話に頬が緩む。


 いい師弟関係だよなあ。ダント君、すごく一生懸命だし明るいし。


 うんうんと頷きつつ用意し終わったので席に座り、魔法石造りを始める。



           ***



 しばらく作業に集中していると、後ろから「リーさん、ネックレスのほうは出来ましたよお」とアシュラの声が耳に届く。そしてそのタイミングで私の魔法石も完成した。


「ありがとう! 私も魔法石ができた」


 差し出されたネックレスは彼女によく似合いそうだ。あとはこのネックレスの中心に、出来上がった魔法石をつけるだけ。


「おー、綺麗っスね」


「当然でしょう。アッシとリーさんの愛の結晶ですからねえ」


 アシュラの言葉は無視して、私は出来上がったネックレスを丁寧に箱へしまう。


 ……気に入ってくれるといいな。


「二人ともお疲れさま。いつもの部屋を使ってね」


 言いながら使った工具を片付けていく。


「リーさんもお疲れさまっス。じゃ、おやすみなさいっス」


「おやすみー」


「アッシは片付けを手伝いやす」


「ありがとう」


 アシュラが手早く片付けていってくれたおかけで早く終わった。なので予定より早く部屋へと戻って寝る準備を整える。


 明日、渡しに行こう。彼女が喜んでくれる事を願って。



            ***



 翌朝ランの家に行くと、そのまま彼女がいる場所まで案内された。


 ……あれ、展開が早い。まあ、早くネックレスを渡したかった私としてはよかったけど。


 部屋の前まで来て、こんこんと軽く扉を叩く。中から返事はない。


「気にせず入っていいから」


 ランはそう言うと、扉を開けて中に入っていく。私もランに続いて中に入ると、彼女が部屋の中心にいるのが見えた。


「ファラ。おはよう」


 声をかけられた彼女は、綺麗な瞳で真っ直ぐ私たちを見る。


「……は、はじめまして! 私、リラっていいます!」


 緊張のあまり声が裏返ってしまった。恥ずかしい。


「ふふ、はじめまして。私はファラっていいます」


 ほわ、とっても落ち着く声色だ。うっとりと彼女に見惚れていると、ランに肩を軽く叩かれた。


「あっ!」


 そうだった。彼女の綺麗さに見惚れて忘れるところだったよ。


「どうかしたんですか?」


 小首を傾げる姿も可愛らしい……って違う違う。ほら、早く本題に入らなきゃ。


「あの! すごく突然なんですけど、ファラさんにプレゼントがあるんです!」


 きょとんとしているファラさんも可愛らしい……じゃなくて早くネックレスを渡さないと。


「え、私に……?」


「はい!」


「わあ、嬉しい」


 うっわあ、どうしよう。なんか胸がどきどきしてきた。ファラさん、笑顔が小さな子供みたいにきらきら光ってて可愛いい。


「リラさん?」


「は、はい!」


「私の顔になにかついてますか?」


「いえ、あの……ファラさんが可愛かったので、つい見惚れてしまって」


「え……」


 ファラさんは、顔を赤くしておろおろし始めた。私はその姿につい微笑ましくなってしまう。


 なんだろう。すごくファラさんを抱き締めたい。


「リラ」


 ランに名前を呼ばれたと思ったら頭をぐしゃぐしゃにされて、背中をトンっと押された。


「プレゼントを渡すんだろ」


「あ、そうだった」


 私はネックレスの入った箱を鞄から取り出して、ファラさんに渡す。するとファラさんは、嬉しそうに箱を抱き締めた。


「ありがとうございます。リラさん」


 その笑顔に私も嬉しくなって口角が上がる。


 ――願わくば、どうか彼女が空を見ることができますように。


 そう心の中で呟いた。

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