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戻ったクルファマの土地を少し遠くから眺め、うんと一回大きく頷く。そして思ったより早くクルファマの土地を戻すことが出来たので、シュルトに連絡すべく使い魔を召喚した。
「鳩さん、鳩さん、鳩ポッポー! ポッポ飛んで行くー!」
自作の歌を元気よく口ずさみながら、九官鳥のぽぽちゃんにシュルト宛の手紙を託す。
『そいつ鳩じゃないよな。九官鳥だろ』
「え? そんな小さなことは気にしない!」
ぽぽちゃんは手紙の重さでふらふらしてるけど、たぶん大丈夫。頑張ってシュルトのところまで飛んでね。
小さな頭を優しく撫でる。
「シュルトによろしくね」
「ガンバルガンバル」
飛んでいったポポちゃんに手を振って見送る。
「よし!」
シュルトが来るまで、この町の回りとか探検してようっと。町に入って誰かと関わるのは危ないから回りだけ。
そう思いながら、るんるん気分で歩き出した。
***
『なあ』
「違うよ!」
『ですが、リーさま』
「違うよ! 違うからね!!」
必死に否定するけれど、二人は聞く耳持たずといった感じだ。ちょっと切ない。
そう思っていたら、二人が声をあわせて私に攻撃してきた。
『『これは完全に迷ったと言う』』
「違うってば! ちょっと道がわからなくなっただけ……!」
『それを迷ったって言うんだろ』
「迷ってないよ!」
『それじゃあ、どうしてオレたちは森の中にいるんだ?』
「そ、それは……」
何か言おうと口を開きかけたけど、何も言葉が出てこなくてやめる。
『つまり迷ったってことだろ』
「……うん。ごめん、迷った」
方向音痴なのにるんるん気分で歩き回った私が悪かった。だからそんな呆れた顔で私を見ないで。約束するよ。もう二度と知らない土地を勝手に歩き回らないと。だから許してください。
でも、一言だけ言わせてほしい。
「ここどこ?」
『森の中』
「……」
目を閉じて、大きく息を吸う。そして目をかっと開き、声と共に吐き出す。
「とりあえず誰でもいいから助けてー!」
出来る限りの大声で叫ぶ。それはもう全力で。
その光景を木の上で見ていた人物に、私は気付いていなかった。
***
「お前はなにをしてるんだ」
「っ……!」
なんの前触れもなく現れたシュルトに驚いて心臓が口から出るかと思った。
ばくばくとうるさい心臓を心の手で落ち着かせながら、シュルトに返事をする。
「迷子してた」
私の答えを聞いたシュルトは大きくため息を吐くと、呆れた顔で私を見る。
なんだその顔は……その顔で私を見るんじゃない。余計に辛くなるだろ。さっき迷子のレッテルを押されたばかりなのだ。これ以上、私の心にダメージを与えないでくれ。心がぱりーんと割れてしまう。
「リラ、迷子はしようと思って出来るものじゃない。お前は昔から勝手にうろちょろして、最終的には必ず迷う。そして助けを求めるんだ。少しは学習しろ」
……だって気づいたら知らないところにいるんだもの。これはもう目的地が私から去っていっているのかもしれない。とりあえず謝ろう。
「ごめんなさい。これからは気を付けます」
「その台詞も聞きあきた。とりあえず勝手にうろちょろするのを止めろ」
「う……」
「まったく、何かあってからでは遅いんだぞ。あまり心配をかけるな」
「シュルト……本当にごめんなさい。それといつも見捨てずに見つけてくれてありがとう」
頭を下げて謝ると、シュルトの手が私の頭に置かれた。
「まあ、今回は良しとする」
髪が崩れない優しさで撫でられる。シュルトの優しさに胸がじんわりとあったかくなった。




