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ここへ帰ってきてから四日目の夜。イズルからの合図はまだない。
日を追うごとに、何だかローズさんが心なしか焦っているような気がする。
本当はもっと早くに合図が来るはずだったのかもしれない。それがまったく来ないから、もしかするとイズルたちに何かあったのかもしれない。
そう考えるとローズさんの焦りも納得だ。でもイズルたちの無事を確認できる手段が私にはない。そして恐らくローズさんも。
イズルは……強い。だからその部隊も強いはず。みんな無事だ。きっと大丈夫。
「あっ……! やっちゃった」
心の揺れが魔力を揺らしてしまったせいで、色が変に混ざった魔法石ができてしまった。
じっとその魔法石を見つめて、小さく息を吐いた。
「少し休憩しよう」
集中が途切れて意識がどうしてもイズルたちに向いてしまう。こういうときはお茶を飲んで腹を満たせば落ち着く。
イズルたちは大丈夫。状況がわからないのに心配だけしたってしかたないんだから。不安にならないようにしないと。
軽く頬を叩いて、嫌な考えを捨てる。
楽しいこと楽しいこと。そういえばこの間ミランダ先生から美味しいお茶を頂いたから、あれを飲もう。それから棚にビスケットがあったはず。それに木苺のジャムとブルーベリージャムを塗って食べよう。
だんだんと気分が浮上していくのがわかる。工房を出たときより軽い足だ。
工房からまっすぐに行くと台所やお手洗い、それからお風呂に二階への階段がある。まっすぐに行かず途中で左に曲がるとお店なんだけど。ちょうどそこを通った今、お店の方から物音が聞こえた。
「ん?」
誰かお店にいるのかな。でもこんな時間に誰だろ。ユンさんたちはいつも寝てる時間だし。
まさか、泥棒……。
そうだよね。もし誰かいたとしたら、泥棒しかいない。だってジャンや他の友人なら裏口にある鈴を鳴らして、来たことを教えてくれるし。これは少し覗いたほうが良さそう。
「ふー」
慎重に。物音をたてないようしにゆっくり歩いて。
心臓がばくばくしてる。手も震えているし。
そっと中を覗くと、人影があった。月明かりが大きめの窓を通してお店の中を照らしている。
そしてお店の中にいる人物も照らす。
月明かりのおかけでその人物の姿がはっきりと見えた。
「っ……」
私の呼吸が、とまった。
頭の中はぐちゃぐちゃで大混乱だ。
「クダラ、サーラ……」
『はいよ。任せとけ』
『お任せを。リーさま』
「ありがとう。お願いね」
静かに深呼吸をする。そして意を決してお店の中へ入る。




