12
……怖くなったのだ。本当に二人がいるのか。これが現実なのか。
そういう気持ちにさせたのは、突然と頭を過ったあの日々のせいだ。
「リラ殿、安心してくれ」
「俺たちは本当に大丈夫だ。リラ殿にも怪我がなくて本当によかった」
先程までの声色と違って、優しくて落ち着いていた。まるで父親が子供に話すみたいだ。
「うん」
「リラ。感動の再会中にごめん。これ渡しとくね」
イズルがそう言って私に差し出したのは、五色星魔法石。あれ、そういえば私持ってきた記憶がないぞ。あの時の私は逃げることで頭がいっぱいだった。
この子のために乗り込んだというか、今回私がこうしてこの件に関わったのはこの子のためで。それを忘れるってどういうことだ私よ。駄目でしょ。忘れちゃ。なにをやっているんだ、まったく。
「イズル、ごめん! ありがとう!」
「んー? いやいや、リラが準備する暇をあげずに俺が連れ出したのが悪い。ごめんな。他にも必要なものとかあったろ」
「それは大丈夫。その子が無事なら。あとは全部あそこにいた人たちが準備してくれたものだから」
「そ?」
「うん。だからその子を持ってきてくれてありがとう」
「どーいたしまして」
「よかったな! リラ殿!」
「うん!」
五色星魔法石を受け取って優しく抱き締める。よかった。あなたも無事で。それから忘れててごめん。
「リラ殿。綺麗な魔法石だな」
「これは確かに欲しくなる」
ソロとコソが五色星魔法石を見て、頷きながら言う。
「だが、これは盗んではいけないものだな。なあ、コソ」
「そうだな。これはリラ殿の大切な子だ。よかった。君も無事で」
「理由があったにしても、君を盗もうとしてすまなかった」
ソロとコソが五色星魔法石にそう話しかける。
二人は理解してくれている。造ったものが、職人にとっては子供や愛する者と同等だと。そして彼らは五色星魔法石が無事だったことを喜んでくれて、盗もうとしたことを謝ってくれた。本当に彼らは優しい人なのだと思う。
--ぽろん。
「……」
--ぽろん。
五色星魔法石が優しく音を鳴らす。
うん、私もそれがいいと思う。行っておいで。それから元気でね。
--ぽろん。
--ぽろん。
「ソロ、コソ。はい、この子をどうぞ」
私は二人に向けて手を出す。もちろん私の手の上には、五色星魔法石がある。
二人は目をぱちくりとしながら、私と五色星魔法石を行き来していた。
そして意味を理解したのか、二人が慌て始めた。
「リリリリリラ殿っ!」
「それは受け取れないぞ! 俺たちのところに来てはその子が可哀想だ!」
「そうだ! 可哀想だ!」
「大丈夫だよ。この子が二人のところに行きたいって言ってるの」
「「うっ……! だがもったいない! 俺たちよりいい持ち手がいるはずだ!」」
「リラ殿もそう思うだろう!」
「造り手の君もそう思うだろう!」
「そう思ってたら最初っから言わないよ。私も二人がいいって思ってたから言ったの」
「「……」」
「いいのか、本当に」
「うん」
「売るかもしれないぞ」
「いいよ。でも、売らないでしょ」
「「……」」
二人は顔を見合わせ、少しの間のあとゆっくり頷いた。
「リラ殿、五色星魔法石。俺たちを選んでくれてありがとう」
「本当に嬉しい。ありがとう」
「それじゃあ、はい。どうぞ」
私がそう言うと、ソロが五色星魔法石を持ちコソの手の上に置く。
「「ありがとう。とても嬉しい」」
「こちらこそありがとう。それからその子をお願いします」
「ああ! 大切にするぞ!」
「俺たちの家宝だ!」
「「これからよろしくな!」」
--ぽろん。
「よかったな、リラ」
ソロとコソが魔法石に自己紹介や今までのことを話している様子を見ていると、イズルが右横でそう言った。
「うん。イズルも助けてくれてありがとう」
「どーいたしまして。無事でよかったよ」
「でもこのまま終わるってことはないよね、たぶん」
「ないね。いい職人を捕まえたと思ったら、逃げられてるんだから」
イズルの返事に肩が落ちる。やだなあ。追われるの。いや、いい職人って言ってもらえるのはすごく嬉しいんだけども。捕まえられるのはなあ、遠慮したい。




